【保存版】住宅金融支援機構から任意売却パンフレットが送らせてきたらすべきこと

突然、任意売却のパンフレットが届いたら驚きますね。あと少し、なんとかこの家に住めるようお金の工面に必死のご家庭もあるかもしれません。なんとか困窮状況を脱出しようと奔走し、そのパンフレットを放置していたら取り返しのつかないことになります。

今回は、住宅金融支援機構から「任意売却パンフレット」が送られてきた意味、必要な対応など詳しくご紹介したいと思います。

住宅金融支援機構からパンフレットが届くといういうこととは?

「住宅金融支援機構」とは、実際に住宅ローンを組んでいる方はお分かりの方は多いかと思いますが、民間の企業ではなく、独立行政法人であります。その「住宅支援機構」が民間の金融機関と連携し、展開しているサービスが「フラット35」や「フラット50」、「フラットS」といった全期間固定金利で住宅ローンを借入れすることができるものです。経済情勢に左右される変動金利とは異なり、35年などの長期間に渡り、当初定められた金利が完済するまで続くという安心の住宅ローンを組むことができる機関です。

このような「住宅支援機構」から任意売却のパンフレットが届くということは、おそらく、住宅ローンの滞納が3カ月ほどになっているのではないでしょうか。

もうすぐ支払えると思いながらあっという間に1ヵ月、2ヵ月が経過し、いよいよ住宅支援機構からの支払いの督促の開始です。

滞納期間が2カ月となると、住宅金融支援機構からハガキや電話で直接支払いの督促が始まります。そして、「返済に関する提案」が書かれた書類が届き、その後「任意売却パンフレット」という題で、「任意売却に関する申出書」が送られてきます。

この時点で、まだあと少しで支払いを再開することができると思って、パンフレットを放置してしまうと、いよいよ取り返しのつかないことになってしまうかもしれません。この時点を過ぎ、お金を工面できたから返済したいといってももう取り合ってもらえなくなります。それはどうしてなのでしょうか。

パンフレットが届いたにも関わらず、放置していたらどうなるの?

住宅金融支援機構は、住宅ローンの滞納を開始した方に、積極的に任意売却をすすめるため、「任意売却のパンフレット」を送付します。民間の金融機関では、債務者自身から願い出ないと、なかなか金融機関の方から任意売却をすすめられることはあまりありません。

というのも、住宅金融支援機構の場合は、民間の金融機関と異なり、保証会社と連携していません。民間の金融機関であれば、債務者が滞納を続け、差し押さえ、競売となっても保証会社により債務者の代位弁済という形で支払いを受けることができます。そして、その後は、保証会社が新たな債権者となり債務者は支払いを行うことになりますが、住宅金融支援機構の場合は、保証会社が存在しないため債務者が滞納を続けた場合でも、代わりに誰かに支払いを受けることができません。

住宅金融支援機構が自ら競売の申し立てを行い債権の回収を行わなければなりません。しかし、競売となるとどうしても不動産の相場の3から7割ほどの価格で落札されてしまうことになり、十分な債権の回収を行うことができない場合が多いのです。それゆえ、少しでも市場の相場に近い価格で売却できる可能性が高い任意売却による売却手続きを勧めてきます。

任意売却は買主の意思により手続きに入る必要があるので、競売のように債権者が差押えを強制的に行うことができません。そのため、滞納を続けている債務者に、競売の申し立てを行う前に、任意売却のパンフレット送付し、任意売却の手続きを促しているというわけです。

しかし、これを放置すると、もはや債務者に選択の余地はなくなります。滞納2カ月を超えると「任意売却のパンフレット」が送られてきて、それでも任意売却の手続きを開始しなければ、債務者は期限の利益を喪失し、債権者は差し押さえを行い、裁判所へ競売の申し立てを行います。

民間の金融機関であれば、この時点で任意売却の手続きを開始することができますが、住宅金融支援機構においては、競売の申し立てが開始されると任意売却の願い出を受け付けてくれることはほぼありません。

もうしばらく返済できるように頑張ろうと任意売却のパンフレットを放置していると、競売が申し立てられ取り返しのつかないことになります。民間の金融機関とは異なる点なので、誤解されている方も多いはずですから、注意が必要です。

住宅金融支援機構の住宅ローン滞納後の流れ

住宅金融支援機構の住宅ローンを滞納した場合、すぐに滞納分の返済をすることができればなにもなかったように元の状態に戻ることができますが、なにもせず滞納を約6ヵ月ほどすると、住宅金融支援機構により競売の手続きが開始されます。

    • 滞納1カ月

はがきによる督促状が送られてきます。

    • 滞納2カ月

はがきと電話での督促が開始されます。

    • 滞納3カ月

滞納が続いたことにより信用情報に滞納者として登録されます。「返済に関する提案」が書かれた書類が届き、その後「任意売却パンフレット」が送られてきます。任意売却の手続きを開始する際に必要な「任意売却に関する申出書」が含まれています。

    • 滞納5~6ヵ月

「任意売却に関する申出書」が提出されなければ、「全額繰上償還請求予告通知」が送られてきます。
任意売却の手続きを開始したいと思うならこれがラストチャンスとなります。しっかりと家族などと話し合い、決断しなければなりません。

    • 滞納6ヵ月以降

「全額繰上償還請求」が実行され、競売が開始されます。

これ以降は、任意売却の申し出を行っても受け付けてもらえる可能性がほぼなくなってしまいます。

住宅金融支援機構の任意売却とは?

住宅金融支援機構は、住宅ローンの滞納をしている方に、積極的に任意売却を勧めているということはお伝えしました。そして、任意売却の手続きを開始しなければ、競売が開始され、もはや任意売却を選択することができなくなります。任意売却の手続きを開始するには、「任意売却に関する申出書」を提出しなければなりません。

この手続きを知らないで、任意売却をしようと業者探しに時間がかかっているうちに競売が開始され、任意売却ができなくなる事態もあります。住宅金融支援機構の任意売却の手続きには、民間の金融機関の手続きと異なる点もあります。うっかりと競売が開始されてしまわないようにしっかりとこの機会に把握しておきましょう。

住宅金融支援機構の任意売却手続きの流れ

  1. 仲介業者の選定
  2. 任意売却に関する申出書の提出
  3. 仲介業者による物件調査、価格査定
  4. 不動産販売価格の確認
  5. 仲介業者と専任媒介契約の締結
  6. 不動産販売活動開始
  7. 購入希望者選定、抵当権抹消承諾の審査
  8. 不動産売買契約の締結
  9. 不動産の明け渡し
  10. 代金決済、登記手続き

「任意売却に関する申出書」の提出は、民間の金融機関では存在しない項目になります。

また、任意売却の手続きをすすめてもらう仲介業者を選定する点は、民間の金融機関と同様になります。先に、任意売却の手続きに慣れている業者を決めておくことで、「任意売却に関する申出書」を業者に書いてもらうことができます。それを住宅金融支援機構に提出すれば、今後、住宅金融機構と業者が直接進めてくれることとなり、専門性や特殊性の高い任意売却の手続きを任せることができます。

その他、民間の金融機関での任意売却の手続きが異なる点は、「販売活動が開始」されると、住宅金融支援機構

は、購入希望者が現れるまで、毎月1回「販売活動状況報告書」を提出する必要があります。仲介業者が提出するものになります。債務者自身が作成するものではありませんが、民間の金融機関では行われいものなので頭に入れて置きましょう。

住宅金融支援機構では任意売却を推進しているからと言って、任意売却を成立させるために、民間の金融機関よりも有利であるわけではありません。任意売却を成功させるためには、任意売却に精通した仲介業者に依頼する必要があり、仲介業者選びは非常に重要と考えます。大手の有名な不動産会社などであれば安心というわけではありません。大手の不動産会社であっても、任意売却が不成立となり、競売手続きにて売却される事例は実際にいくつもあります。

任意売却は法律や高度な専門的な知識や経験を必要とし、かつ不動産の仲介としても有力である必要があります。そういった取引に精通している業者を自身で見つけるのが最初の第一歩と言えます。もし、見つからない場合は、住宅金融支援機構から紹介を受けることができますが、できれば自身で信頼できる業者を見つけることをオススメします。

仲介業者の選定について

「任意売却パンフレット」にも記載されていますが、民間の金融機関の任意売却においても、仲介業者は原則債務者自身で選定することになりますが、3つの方法があります。

債務者や債権者自ら選定する方法

債務者や所有者自身が、インターネットなどで検索して探した任意売却専門の仲介業者や、知り合いの業者へ直接仲介業者を探し、依頼する方法です。

売却価格申出方式の選定方法

「任意売却に関する情報提供依頼書」を事前に提出し、、物件の概要を参加希望の仲介業者に知らせ、原則ではありますが、最も高額な売り出し価格を申し出た業者に依頼を決定する方法となります。

住宅金融支援機構・保証協会からの個別紹介による業者の選定方法

売り出し価格申出方式が利用できない場合に、住宅金融支援機構が仲介業者を紹介する方法です。

ただし、任意売却の場合、仲介業者と債務者が『任意』で専任媒介契約を締結しますので、住宅金融支援機構が責任や義務を負うわけではありません。あくまで任意の取引となります。

※任意売却の仲介媒介契約は、専任媒介契約となりますので、複数の仲介業者に依頼することはできません。よって、信頼できる実力のある業者を選択することが重要となります。

任意売却の業者選びは、売主自身で行うことをオススメします。というのも、住宅金融支援機構の紹介の業者であると、住宅金融支援機構は債権者であるため、債務者と利益が相反する場合に債権者に有利な取引となる場合があります。売主自身で選択した業者である場合は、そのようなことにはならないため売主としてはより安心して取引を任せることができます。

任意売却を決心したら、速やかに信頼できる業者を探すことが任意売却を優位に成功させる秘訣ではないかと考えます。

任意売却に関する申出書(任意売却の手続きで最も初めにすること)の内容

任意売却に関する申出書には、署名欄と手続きの内容が記述されています。

  1. 当該債務に関わる担保物件売却の同意
  2. 売却代金を返済に充てる同意
  3. 売却後の残債務額に満たない場合の損害金の減免の申し出
  4. 仲介業者への個人情報と物件情報の提供をする
  5. 仲介業者が売却情報を債権者へ提供する
  6. 関係管理者が債権者へ残債務の確認・残債務の提供をする
  7. 残債務の全額に満たない時の弁済の申し出
  8. 担保物件に関わる火災保険を残債務に充てる
  9. 複数の質権者(※1)がいる場合、配当は、債権者の定めに従う
  10. 債権者が任意売却の成立が困難と判断した場合、不動産競売の申し立てに同意する

(※1)「質権者」とは

不動産を担保としている債権者のことをいい、債権の担保として、不動産などの物(質物)を受け取ります。

質物を債務の弁済が終わるまで留置し、弁済が無い場合、質物を売却して代金から優先して債務の返済を受けることができます。

また、「任意売却に関する申出書」を提出するときには、以下の書類も必要になります。

  • 専任媒介契約書
  • 売出価格確認申請書
  • 価格査定書
  • 実査チェックシート
  • 路線価図
  • 周辺地図
  • 住宅地図
  • 物件写真

これらの書類を提出することで、住宅金融支援機構から売り出し価格が決定されます。

「任意売却に関する申出書」を提出しなければ、任意売却を開始することができません。それゆえ、任意売却を開始したいと思ったら、住宅金融支援機構より「任意売却パンフレット」が届きしだい、なるべく早く信頼できる仲介業者を探し、数社の中から決めるか、住宅金融支援機構の紹介を受け仲介業者を決める必要があります。そして上記の資料を用意してもらい、「任意売却に関する申出書」を提出してもらわなければなりません。

「任意売却パンフレット」が届いて3カ月ほど滞納をまだ続けていて「任意売却に関する申出書」を提出しなければ、住宅金融支援機構により競売が開始されてしまいます。そうなると任意売却の手続きをとることができなくなるので手遅れとなります。住宅ローンの支払いが困難になり、滞納を開始してしまい何とか返済ができるよう奔走したとしても「任意売却パンフレット」が届いたら諦めて任意売却の手続きを開始するべきサインだと思い、家族などとしっかりと話し合い決断をしなければなりません。

住宅金融支援機構と一般的な銀行などの住宅ローンとの注意しておくべき違い

住宅金融支援機構においても、一般的な銀行などの住宅ローンに関しても任意売却は、住宅ローンの月々の支払いが困難となり、滞納を開始し、住宅を手放すことで債務の支払いをしようとする面では同じで、手続き面でもほとんど同じ手続きを要します。

しかし、大きな違いが一つあります。それが、上記にも記しましたが、住宅金融支援機構においては、競売が開始されると任意売却を開始することができなくなるということです。

一般的な銀行などの住宅ローンにおいては、債権者により差し押さえられ競売の手続きが開始されたとしても、任意売却に同意してもらうことができ、競売にて落札される前に任意売却の買い手が決まり、決済、引渡しが完了すれば、任意売却にて不動産を売却することができます。しかし、住宅金融支援機構では、「全額繰上償還請求」が行われ、競売手続きに入った後は、任意売却を受け付けてもらえなくなる可能性が高くなります。

そのため、「全額償還請求」が行われる約1カ月前に予告として「全額繰上償還請求予告通知」が送られてきます。この「全額繰上償還請求予告通知」が届いたときに決断しないと、手遅れになり、ほぼ任意売却ができなくなります。

任意売却にて売却できなければ、競売にて落札されるのを待つのみとなります。競売となると、売却価格は、市場の相場よりも大幅に安く売却されることとなり、住宅ローンの残債務が大幅に残ってしまうことになります。

さらに、競売による売却ですと、住宅を手放してもなお残ってしまう債務に関しては、一括で返済しなければなりません。任意売却の場合ですと、一般的な市場の相場に近い価格で売却できる場合が多く、さらには債務を分割で支払っていくことができます。

新生活の無理の無い範囲で、残った債務を分割で支払っていくことが許されるのは、任意売却にて売却した場合のみとなります。一括で支払うことができなければ自己破産しなければならない事態にもなりかねません。

住宅金融支援機構は、民間の金融機関ではないから少々滞納したところでいきなり競売になったりはしないだろうと、通知や督促状を見逃していたはダメです。「全額繰上償還請求予告通知」が届いたときが、任意売却を選択することができる最後のチャンスです。しっかりと見逃さず家族などと話し合い、決断をしましょう。

任意売却後の住宅金融支援機構の住宅ローンの残債務はどうなるの?

住宅金融支援機構の住宅ローンの場合、任意売却の手続きが開始されたとしても、もともと保証会社は存在しないため、債権者は住宅金融支援機構のままとなります。返済金の回収のみ回収業務の代行を債権回収会社に委託します。新生活を再建しながら、残債務を返済していくことになりますが、「生活状況申出書」にて生活状況を伝えることで、「新生活に支障が出ない、無理なく支払っていける金額」を考慮してもらうことができ、無理の無い範囲での返済を認められることが多いようです。

一方、民間の金融機関で住宅ローンを組んでいた場合は、住宅ローンの月々の支払いを3カ月程滞納することで保証会社が債権者である金融機関に代位弁済を行いますので、債権者は保証会社へ譲渡されることになります。よって、任意売却により不動産を引き渡し後、残債務の月々の返済額などは、新債権者である保証会社と交渉することになります。返済額に関しては、住宅支援機構同様、生活の状況を考慮してもらうことができる場合が多く、新生活の無理の無い範囲での支払っていくことができます。

住宅金融支援機構、民間の金融機関どちらの場合でも、任意売却にて売却済みですので、残債務に関しては無担保の債務となります。消費者金融のような厳しい取り立てや催促などもないので、債務者にとっては精神的にも楽に返済を続けて行ける魅力的な債務整理と考えることができます。

まとめ

住宅金融支援機構で住宅ローンを組んでいるからと言って、競売など厳しい処分はなされないと思って手続きを放置していたら、任意売却の手続きを開始することができなくなります。住宅ローンの支払いが困難になったら、しっかりと家族などと話し合い、ベストな決断をし、任意売却を開始したいなら「任意売却パンフレット」を熟読し、任意売却を成功することができるよう努めましょう。

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