住宅ローンが払えないから自己破産する!自己破産の前に任意売却を

住宅ローンが払えない方には、いくつかの選択肢が用意されています。たとえば、任意整理、民事再生(個人再生)、そして自己破産です。今回は自己破産と任意売却の関係について紹介をします。

自己破産とは?

自己破産とは、法的な債務整理の方法です。破産法という法律に則っておこなわれます。

(目的)
第一条
この法律は、支払不能又は債務超過にある債務者の財産等の清算に関する手続を定めること等により、債権者その他の利害関係人の利害及び債務者と債権者との間の権利関係を適切に調整し、もって債務者の財産等の適正かつ公平な清算を図るとともに、債務者について経済生活の再生の機会の確保を図ることを目的とする。

破産法の第1条に破産法の目的が書かれています。破産法とは、債務者の財産を適正かつ公平に清算をして、「債務者について経済生活の再生の機会の確保を図る」ことを目的にしています。

つまり、財産を処分する代わりに、経済的な再生のために借金を免除が可能です。

財産の処分について

管轄の地方裁判所により判断基準は異なりますが、20万円基準という基準にて運用されています。つまり、20万円以上の財産は換価処分の対象になります。

当然ですが、住宅を持って居る状態で自己破産をしてしまえば、住宅は20万円以上の価値がありますので、処分しなければなりません。

預金、保険金、自動車など20万円以上ある場合、すべて換価処分の対象になります。

逆に20万円以下の財産は自由財産として自己破産をしても所持し続けることが可能です。また、自由財産拡張をおこなえば、20万円以上の財産も手元に残すこともできます。しかし、住宅は絶対に競売にかけられて処分されます。

concierge
自己破産をして財産を処分したとしても、すべての財産を巻き上げられて処分されるということはありません。それは法律により禁止されています。

財産処分の範囲

財産処分の範囲ですが、破産を申し立てた破産者のみの人が対象になります。家族は財産を処分する必要はありません。

ただし、自己破産をする直前に、財産の名義を破産者から家族に変更するのは財産隠しと取られてしまい、免責許可を得ることができません。

免責許可を得ることができないと、自己破産をしても借金の免除はありません。

自己破産の種類について

自己破産には、いくつかの種類があります。

つまり、

  • 同時廃止事件
  • 管財事件
  • 少額管財事件

この3つです。

同時廃止事件

同時廃止事件は、財産の換価処分の手続きを経ずに免責許可を得ることができる人のみができる自己破産の手続きです。

2ヶ月~6ヶ月程度の期間で自己破産の手続きが終了します。

管財事件

管財事件は20万円以上の財産がある人、つまり住宅を持ったまま自己破産をする人がおこなう自己破産の手続きです。管財事件が本来の自己破産の正式な手続きになります。

財産を換価処分する関係上、破産管財人と呼ばれる弁護士が裁判所により選任されます。この弁護士へ支払う報酬の関係から裁判所に収める予納金の額が50万円必要です。

予納金を納めることができなければ、自己破産の手続きを進めることができません。

また、自己破産の手続きが完了するまでに半年~1年程度の時間を費やすケースがあります。

少額管財事件

少額管財事件は、弁護士に依頼しているときにのみ利用することのできる自己破産の手続きです。ただし、日本全国の地方裁判所ですべて少額管財事件をおこなっているのかといえば、そうではなく、少額管財事件をおこなっていない裁判所もあります。

また、少額管財事件は原則として3ヶ月~6ヶ月の期間内に財産を換価処分する見込みがない人は利用することはできません。そのため、住宅を持った状態で管財事件をおこなおうとすると少額管財事件を利用できない可能性があります。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットについてですが、

  • 7年間は再度自己破産をすることができない
  • 破産者は公法・私法上の資格制限を受ける
  • 官報に名前が載る
  • 信用情報機関のブラックリストに名前が乗り、5年~10年間は借金ができない
  • 管財事件の手続き中は、生活に制約がつく

などがあります。

7年間は再度自己破産ができない

自己破産をした場合、7年間は借金を免除する手続きである、免責許可決定を受けることはできなくなります。7年間は自己破産をすることができません。

ただし、信用情報機関のブラックリストに名前が乗っていますので、クレジットカードや借金を7年間はすることが難しくなりますので、自己破産をしてしまえばそこまで大きなデメリットとはなりません。

公法・私法上の資格制限を受ける

自己破産の、破産開始決定から免責許可を受けるまでの間は、申立てをおこなった人は破産者となります。

破産者は、

  • 公法上の資格の制限:弁護士、公認会計士、公証人、司法書士、税理士、弁理士、宅地建物取引業者
  • 私法上の資格の制限:後見人、後見監督人、保佐人、遺言執行者

このような公法上の資格、私法上の資格を行使することができなくなります。

また、警備員や保険の外交員などの仕事には就くことができなくなります。

免責許可を得て復権をすれば、これらの制限はなくなります。

官報に名前が載る

官報とは国が発行する公告文書です。毎日発行されており、自己破産をするとそこに名前や住所などが載ります。官報を独自に集めている業者も存在していますが、一般人は官報を目にする機会はまずありません。

仮に官報を目にしたとしても、毎日、自己破産者の名前が掲載されているので、その中から個人を特定することはできません。そのため、官報に名前が載ったとしても、そこまでデメリットを感じることはないでしょう。

競売のほうが直接的なデメリットがあります。

信用情報機関のブラックリストに名前が乗り、5年~10年間は借金ができない

信用情報機関は日本に3社あります。

  • CIC
  • JICC
  • KSC

CICとJICCは5年間、ブラックリストに名前が載り、KSCは10年間ブラックリストに名前が載ります。

この間、クレジットカードや新規でローンを組んだり、キャッシングをしたりすることができなくなります。

ブラックリストの期間が終わると、また住宅ローンを組んだりクレジットカードを作ったりすることができます。ただし、自己破産の際に借金を免除した銀行やクレジットカード会社を再び利用することはできません。

信用情報機関の個人信用情報とは別に、社内での取引履歴が残っていますので、社内ブラックになり半永久的に利用することができなくなります。

管財事件の手続き中は、生活に制約がつく

管財事件の手続き中に財産を隠したり、壊したりしないように監視が付くことがあります。

  • 財産の管理処分権の喪失
  • 居住の制限
  • 通信秘密の制限
  • 逃げたり、財産を隠したりする素振りがあると拘束・監視される

このようなことがあります。管財事件の場合は海外旅行なども制限される可能性があります。

同時廃止事件は財産をそもそも持って居ないことが前提になっているので、生活に制限が付くことはありません。

自己破産と任意売却のタイミング

自己破産をするタイミングですが、任意売却をしてから行うといいでしょう。

任意売却をしてもしなくても、自己破産をすると結局住宅を失うわけですが、住宅を持った状態で自己破産をすると「管財事件」になってしまい、住宅以外の財産がない場合、住宅が処分されるまで自己破産の手続きが終わりません。

管財事件になると裁判所へ支払う予納金は最低でも50万円程度かかります。仮に弁護士を雇い少額管財事件にしたとしても、最低での20万円を支払う必要があります。

借金や住所ローンを返済することができずに、自己破産まで至ってしまった場合、もうすべてが面倒くさくて、任意売却をして住宅を処分するまで気がまわらないと思います。早く借金問題から逃れたいと思うのは当然ですが、自己破産をして住宅を処分してしまわないと、さらに多くの出費をするはめになる可能性があります。

同時廃止事件の予納金は数万円

住宅などの財産を持ったまま自己破産をすると、住宅や不動産の資産価値評価のために、破産管財人という専門の弁護士が選任されます。管財事件はこの専門の弁護士に支払う報酬額があるので20万円~50万円を債務者が支払わなければなりません。

また、確実に自己破産を成功させるためには、弁護士に依頼しますので、自己破産の費用は結構な額になってしまうでしょう。

ですが、同時廃止事件の場合は1万円~1万5000円程度を支払えば、自己破産をすることができるので、管財事件より圧倒的に低額で自己破産をすることができます。

先に任意売却をすると引越し費用をもらえるケースがあります

自己破産を先に申請した後に、任意売却をおこなうことはできません。自己破産手続きの開始決定がされた段階で、債務者のすべての換価可能な財産は差押えられてしまい、それを自由に処分することができなくなります。

任意売却の場合は、あくまでの債権者の善意で、交渉次第ではありますが、10万円~20万円の引越し代を支給してもらえることがあります。住宅金融支援機構でも10万円~20万円の引越し代を支給します。

競売であれば、期日までに強制的に立ち退きをしなければなりませんので、落札者からの引越し代は原則ありません。

任意売却と免責不許可事由

自己破産について知識を持っている人だと、ちょっと待てとなります。自己破産直前に住宅を売却してしまうと、免責不許可事由の詐害行為になり、免責許可決定を得ることができないでは? と思うかもしれません。

免責不許可事由

免責不許可事由とは、破産法252条にて定められているもので、該当した場合、免責不許可となり、免責が下りないケースがあります。

(免責許可の決定の要件等)
第二百五十二条 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。
一 債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為をしたこと。
二 破産手続の開始を遅延させる目的で、著しく不利益な条件で債務を負担し、又は信用取引により商品を買い入れてこれを著しく不利益な条件で処分したこと。
三 特定の債権者に対する債務について、当該債権者に特別の利益を与える目的又は他の債権者を害する目的で、担保の供与又は債務の消滅に関する行為であって、債務者の義務に属せず、又はその方法若しくは時期が債務者の義務に属しないものをしたこと。
四 浪費又は賭と博その他の射幸行為をしたことによって著しく財産を減少させ、又は過大な債務を負担したこと。
五 破産手続開始の申立てがあった日の一年前の日から破産手続開始の決定があった日までの間に、破産手続開始の原因となる事実があることを知りながら、当該事実がないと信じさせるため、詐術を用いて信用取引により財産を取得したこと。
六 業務及び財産の状況に関する帳簿、書類その他の物件を隠滅し、偽造し、又は変造したこと。
七 虚偽の債権者名簿(第二百四十八条第五項の規定により債権者名簿とみなされる債権者一覧表を含む。次条第一項第六号において同じ。)を提出したこと。
八 破産手続において裁判所が行う調査において、説明を拒み、又は虚偽の説明をしたこと。
九 不正の手段により、破産管財人、保全管理人、破産管財人代理又は保全管理人代理の職務を妨害したこと。
十 次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において、それぞれイからハまでに定める日から七年以内に免責許可の申立てがあったこと。
イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日
ロ 民事再生法(平成十一年法律第二百二十五号)第二百三十九条第一項に規定する給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ハ 民事再生法第二百三十五条第一項(同法第二百四十四条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
十一 第四十条第一項第一号、第四十一条又は第二百五十条第二項に規定する義務その他この法律に定める義務に違反したこと。

引用:破産法 – 法令データ提供システム – 電子政府の総合窓口e-Gov イーガブ

詐害行為

そして、免責不許可事由の一つに詐害行為があります。

詐害行為とは、債権者を害する目的で、破産財団に属し、又は属すべき財産の隠匿、損壊、債権者に不利益な処分その他の破産財団の価値を不当に減少させる行為です。

たとえばですが、自己破産をした場合20万円以上の財産は処分されてしまいます。当然、住宅は処分されてしまいます。そのため、安い価格で知人や親族に譲渡して名義を変更したり、勝手に売却して現金に換価してしまうと詐害行為になります。

任意売却は詐害行為になるのか?

なりません。住宅ローンは住宅に抵当権がついています。抵当権は、住宅ローンの返済が返済することができなくなったとき、代わりに住宅を処分して返済に充てることができるという、債権者の権利です。

この権利を別除権といい、破産法よりも優先して適用することができます。

つまり、任意売却の場合、売却代金は債務者に入りません。住宅の所有者である債権者の合意・許可のもと債権者への返済のために住宅を売却する手続きです。

債権者は抵当権を行使していることと同意なので、破産法の詐害行為には該当しません。

まとめ

住宅ローンを返済することができなくなった人には、債務整理などのさまざまな選択肢が用意されています。住宅や財産を処分してしまってもいいから、借金をとにかくゼロ円にしたい場合は、自己破産をすることがおすすめです。

自己破産は、財産を処分する代わりに、借金をゼロ円にする、破産法にのっとった行為です。

自己破産をすると絶対に住宅を所有し続けることは不可能なので、別に任意売却をする必要性はないのでは? と思うかもしれません。

しかし、自己破産には3つの種類があります。

  • 同時廃止事件
  • 管財事件
  • 少額管財事件

同時廃止事件は、短期間で終了することができ、裁判所へ納める予納金の金額は1万円~1万5000円程度で実行することができます。

一方、管財事件と少額管財事件は20万円~50万円の予納金が必要になります。なぜかといいますと、破産管財人と呼ばれる弁護士が、管財事件や少額管財事件の場合は選任されます。そのため、彼らへの報酬が予納金に上乗せされ、20万円~50万円となるのです。

自己破産前に任意売却をしてしまえば、出費を防ぐことができます。また、自己破産前に任意売却をすれば高い確率で引越し費用が捻出されますので、必ず自己破産前に任意売却して住宅を処分しましょう。

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