住宅金融支援機構の任意売却は無料でできる? 任意売却の住宅金融支援機構の費用控除一覧

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任意売却は原則無料で行うことができます。また、競売と比較をすると住宅ローンの残債務額を大きく圧縮できる可能性があるわけです。なぜ、任意売却が無料でできるのかといえば、債権者が債務者の代わりに費用を支払ってくれるのです。なぜなら、競売よりも任意売却の方が回収することのできる費用が高額になるから、債権者は任意売却の費用を支払ってでも任意売却をしてしまった方がお得になるからです。

しかし、無限に費用を控除してくれるわけではありません。今回は任意売却の費用控除の基準となっている住宅金融支援機構の費用控除基準を紹介しつつ、どのような費用がどれくらい控除されるのか見ていきましょう。

あくまでも、住宅金融支援機構の基準であり、住宅金融支援機構から融資を受けていない場合は、今回紹介する控除基準にはなりません。ただ、しっかりとした任意売却の業者をサポートにつければ控除額をアップして、引越し代金も控除してもらえるかもしれません。

はじめから「確実に引越し費用&立退料をお約束」などと甘い宣伝文句をうたう任意売却の業者は悪徳業者の可能性があります。特に競売の「配当要求終期の公告」が裁判所により公告された場合、怪しい業者からのアプローチがはじまりますので注意をしてください。

住宅金融支援機構と任意売却

住宅金融支援機構(旧:住宅金融公庫)は、任意売却を積極的に勧めています。そもそも、住宅金融支援機構の前身である、住宅金融公庫が平成3年に「住宅金融公庫ゆとりローン」を開始した結果、10年後に住宅ローンの返済額が大幅に増加し、住宅ローンの返済困難者である、住宅ローン難民を作る元凶となっています。

話がそれましたが、

住宅金融支援機構から融資を受ける場合、住宅金融支援機構を第1順位抵当権者に設定するように要求されます。第1抵当権者になれば、任意売却で住宅を売却したときに、1番に配当を受けることができます。

そのため、住宅金融支援機構が受け取った売却代金の中から売却に必要な費用等を控除します。その関係で、住宅金融支援機構はしっかりとした費用控除基準を持っています。

住宅金融支援機構以外の金融機関から融資を受けている場合、費用控除の内容が異なってきます。しかし、住宅金融支援機構の費用控除の基準を参考にしているという金融機関は多くあります。

ただ、あくまでも住宅金融支援機構の費用控除基準なので、債権者によってはまったく住宅金融支援機構の費用控除基準と違う対応をするケースもありますので、その点は留意しましょう。

売却に必要な費用等の一覧

後順位の担保権解除費用(ハンコ代)2順位:30万円または残元金の1割のいずれか低い方
3順位:20万円または残元金の1割のいずれか低い方
4順位以下:10万円または残元金の1割のいずれか低い方
仲介手数料宅建業法による手数料の全額
登記費用登録免許税と司法書士の報酬。原則1筆1万円以下
公租公課優先税は全額
それ以外は、10万円または固定資産税・都市計画税1年分のいずれか低い額
管理費滞納分決済日の前日までの全額。過去5年分に限る(遅延損害金は除く)
転居費用原則不可(破産等によりやむを得ない場合要相談)
契約書の印紙代不可

後順位抵当権者にかかわる抵当権抹消承諾費用

住宅金融支援機構は、前述しましたが必ず第1抵当権者になります。

第1順位の抵当権者であったとしても、不動産の売却代金の中から回収金額が全額に満たない場合(オーバーローン状態)、後順位の抵当権者は1円も債権が回収できなくなります。

任意売却を実行するためには、抵当権を持っている債権者全員から許可をもらわなければなりません。しかし、オーバーローン状態の場合、第1順位抵当権者(住宅金融支援機構)へ住宅の売却代金を支払ってしまえば、それで売却代金が無くなってしまい、次順位の債権者へは支払うお金がなくなってしまいます。

そうなってしまうと、後順位の抵当権者は任意売却に協力するメリットがありません。そのため、任意売却には非協力的になります。

そこで、第1抵当権者である住宅金融支援機構は「担保解除費用」一般的は「ハンコ代」と呼ばれるものを支払います。

競売になっても1円も入りませんが、任意売却に協力をすれば担保権解除費用が手に入りますので、任意売却に協力した方がメリットはあると通常の債権者は判断するでしょう。

住宅金融支援機構が支払う担保権解除費用は下記の通りです。

  1. 第2順位:30万円または残元金の1割のいずれか低い額
  2. 第3順位:20万円または残元金の1割のいずれか低い額
  3. 第4順位:10万円または残元金の1割のいずれか低い額
基本的にはこの額で運用されますが、後順位債権者が特定の債権者である場合、上乗せされることもあります。

ハンコ代については、住宅金融支援機構以外の場合、10万円~100万円というのが目安となります。債権者によりハンコ代をいくら支払うのか重要なポイントとなり、ここで間違えてしまうと債権者全員を納得させることは難しくなり、任意売却に対して非協力的になってしまいます。

仲介手数料

仲介手数料とは、任意売却の専門業者(不動産業者)に支払われる仲介手数料になります。

本体価格×3%+6万円+消費税の控除に充てられます。

この仲介手数料の控除がありますので、任意売却を依頼する債務者は任意売却の専門業者に1円も支払うことなく、任意売却をすることができます。

悪徳業者の場合、さらにコンサルタント代金など要求するケースがありますが、任意売却をする上で、コンサルタント代を支払う理由がありません。

「本体価格×3%+6万円+消費税」は宅建業法による手数料の全額ですからこれ以上支払う必要はありませんし、任意売却の専門業者が要求することもできません。

登記費用

登記費用とは、抵当権等抹消費用(登録免許税・司法書士報酬)のことを指します。普通の住宅売買の場合、司法書士報酬は買主が支払うものです。

しかし、任意売却の場合「瑕疵担保責任免責」などをはじめとした、売主側の都合で契約が破断した場合に違約金などを請求しないなどの売主に有利な条件を盛り込む必要性がありますので、任意売却の場合、司法書士報酬は売主が支払うというのが一般的です。

そのため、債権者によっては司法書士報酬や名義人の住所や氏名等の登記名義人表示変更登記を行う場合、売主側が費用として支払った場合、その控除を認めないというケースがあります。

住宅金融支援機構の場合、登録免許税・司法書士の報酬は費用控除の対象として認めています。ただし、原則として1筆1万円以下となります。

公租公課(税金など)

公租公課とは、

  • 固定資産税
  • 都市計画税
  • 住民税
  • 国民健康保険料

などの税金や保険料のことです。

原則として、税金については不動産等資産への差し押さえは督促状を発した日から起算して10日を経過した日までに完納をしない場合、差し押さえをすることが認められています。

督促状送付から10日など、期間が非常に短いので事実上、役所はいつでも不動産の差し押さえをすることが可能です。

役所が差し押さえをしてしまうと、任意売却をすることができず、まずは滞納をしている税金を支払い、差し押さえ登記を抹消してもらう必要があります。

「国税徴収法」の48条(超過差押及び無益な差押の禁止)と79条(差押の解除の要件)によれば、『税金の滞納について必要な財産以外の差し押さえを禁止するとともに、租税に優先する抵当権等が設定され、なおかつその債権金額が売却金額以上になっている場合、その不動産を売却しても税金の滞納金額への配当が明らかに見込めない場合差し押さえを禁止する』とあります。

つまり、任意売却をしても税金が回収することのできる見込みがない場合、それは「無益な差押え」になるので、差し押さえをしてはいけませんと国税徴収法で決められているわけです。

ですが、実際問題として、役所はその不動産が実際にいくらで売れるかなど特に検討することなく、不動産の資産価値よりも住宅ローンの残債務の方が大幅に多いオーバーローン状態だとしても、事務的に差し押さえをしてしまうのが現状です。

このような場合、住宅金融支援機構は「抵当権等設定登記よりも優先される税金(優先税)」については全額控除してくれます。抵当権等設定登記よりも優先される税金とは、抵当権等が設定される前に、その住宅に対して発生している税金のことです。

現実問題、抵当権等が設定される前に税金が住宅に発生するというケースは非常に稀なので、優先税が全額免除されるといっても、恩恵というのはそこまでありません。

実務として関係のある税金としては、抵当権等が設定した後に発生する税金の方が関係はあるでしょう。

住宅金融支援機構では、10万円または固定資産税・都市計画税1年分のいずれか低い額の控除しか認めていません。
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これらの金額で差押登記の解除に役所がおじてくれるかは、役所の対応によって異なりますが、基本的に事情を説明して滞納している税金を支払う姿勢を見せることで役所も比較的早く、差押登記を解除してくれます。間違っても、無益な差押えだから差し押さえを解除しなさいと高圧的な姿勢で迫ってはいけません。このような場合、感情面での問題となりますので、問題がややこしくなります。きちんと、税金を支払う姿勢を見せることが重要なのです。

管理費滞納金

マンションの管理費や修繕積立金を滞納したまま、任意売却をすることは可能です。しかし問題となるのが、マンションの管理費や修繕積立金を買主が変わりに返済をするということです。もちろん、不動産業者はマンションの管理費や修繕積立金が滞納されており、それを支払う義務があることを、買主に説明します。

そのため、買主としてはマンションの購入費用+管理費や修繕積立金の滞納分を用意しなければなりません。結果として、マンションの価格を下げなければ買い手が付かないということになります。

このような場合、住宅金融支援機構は原則として滞納した管理費と修繕積立金の元本全額を控除費用として認めています。過去5年までさかのぼって滞納した分を費用控除します。なぜ、5年かといえば、5年経過することで管理費や修繕積立金の支払いは時効を迎えるので、支払いの義務がなくなります。

ただし、遅延損害金については、住宅金融支援機構は支払いませんので独自に支払う必要があります。ただ、管理組合との話し合いにより、遅延損害金が免除になるケースもあります。ここでも、きちんと支払う姿勢、踏み倒す気がない振る舞いを管理組合へ見せるといいでしょう。

また、下記のものは費用控除が認められない可能性が高くなります。

  • 管理費・修繕積立金以外の専用庭使用料
  • インターネット使用料
  • ルーフバルコニー使用料
  • 駐車場代
  • 駐輪場代
  • 町会費
  • CATV使用料

債権者によっては、管理費・修繕積立金以外のすべての滞納料金を費用控除として認めてくれるケースもあります。債権者により対応が異なるわけです。

転居費用

引越し費用です。住宅金融支援機構の場合、転居費用は原則として控除不可です。

しかし、引越し費用は決済日に支払われるので、後払いが基本です。任意売却が完了するまでに、住宅ローンの支払いはストップすることになり住宅ローンとして消えていた分の収入を引越し費用や滞納している税金の支払い分に回すことができます。結局、自腹で引越し代を支払い後日、その分を債権者からもらうというのが一般的です。そのため、事前に引越し費用を用意する必要があるというわけです。

自己破産などの法的処理をしたい場合、住宅金融支援機構では引越し費用の見積書などを提示することで、10万円~20万円程度の配分を認めてもらえる可能性があります。

近年では、債権者としては転居費用や立退料、そして引き渡し料などの費用を控除しない傾向が強くなっています。仮に控除を認めたとしても10万円~30万円程度が限度となっています。

そのため、高額な立退料を希望する方もいますが、現実的に難しいでしょう。不可能ではないですが、立退料などに過度な期待をするべきではありません。

繰り返しになりますが、引越し費用は後払いになりますので、引越し費用は自腹で絶対に用意をしなければならないという点は注意をしましょう。費用控除をあてにして計画を立てると引越しをすることができなくなります。

契約印紙代

印紙代については、住宅金融支援機構では控除が認められていません。しかし、住宅金融支援機構は原本確認をします。そのため、印紙が貼っていない契約書については有効性が認められない可能性があります。

そこで、契約書を作成する際に、元来2通作成のところを1通作成にして、買主が原本、売主がその写しとすることで、印紙税を実質的に支払う必要がなくなります。

その他

ハウスクリーニング代

室内のコンディションが悪く、販売に悪影響を与える場合、リフォーム代・ハウスクリーニング代の費用控除が認められる場合があります。ただし、原則として任意売却が成立しない限り、費用控除はありません。また、事前に承諾を得なければ費用控除の対象にはなりません。

測量費用

測量費用とは、基本的に捻出の対象には入っていません。原則不可です。しかし、状況としてしっかりとした理由がある場合に限り、境界画定のための測量費を認めてくれる可能性があります。

実務的には、最初から公簿売買か測量をおこなったとしても、買主側が負担をして行う場合があります。そのため、売主が測量費用を支払うというケースは非常に稀であり、そこまで気にする費用ではないでしょう。

地代等の支払い

土地権利が借地権や地上権の場合、地代の支払いが滞ると地主との関係が悪化し、借地権等の契約が解除されてしまうことがあります。

土地権利があやういものの場合、債権者にとっても物件の価値が下落することになりますので、地代滞納分については認めてもらえるケースが一般的です。仮に競売になった場合でも、地代の滞納があるケースでは、債権者は裁判所に地代代払いの許可をもらい、所有者(債務者)の代わりに、地代を支払うケースが一般的です。

まとめ

住宅金融支援機構では、任意売却の際に費用控除の基準があります。住宅金融支援機構の基準を参考にして多くの債権者が任意売却の際の費用控除を決めています。

  • 後順位抵当権者に係る抵当権抹消応諾費用
  • 仲介手数料
  • 登記費用
  • 公租公課
  • 管理費等滞納分
  • 転居費用
  • 契約書印紙代
  • その他
このようなものがあります。

この中で、転居費用と契約書印紙代の控除というのは原則として認められていません。転居費用については、決済日に後払いされるものなので事前に用意をしておかなければなりません。

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また、費用控除があるといっても住宅の売却代金から控除されるものですから、債権者、つまり、住宅金融支援機構としては、その分だけ損をすることになりますから費用の控除は無限に認められるものではありませんので注意をしましょう。

任意売却中、住宅ローンの支払いをする必要がないので、収入をきちんと積立ておき、公租公課や引越し代に優先的に回すようにしましょう。

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