固定資産税はいつまで滞納OK?競売を回避する3つの方法とは?

1月1日の時点で不動産を所有していると固定資産税が必ず発生します。市区町村によっても異なりますが、大体、4月~6月ごろに請求書が届き、年4回の分割払いで支払うケースが一般的です。そして、固定資産税を納付できなかったり、納付を忘れてしまったりするリスクは常にあります。固定資産税の支払を後回し、後回しにした結果、自宅を競売(公売)にかけられてしまう方がいます。

固定資産税はいつまで滞納することができ、どのような解決方法があるのかを紹介します。

固定資産税と支払金額

毎年、1月1日の時点で不動産を所有していると必ず固定資産税が発生します。また、仮に年度の途中で住宅を購入したとします。そのようなときは翌年から固定資産税が発生することになります。2016年の5月に住宅を購入した場合、固定資産税は2017年に発生するのです。

固定資産税の税率と計算方法

では、固定資産税の税率と計算方法について紹介をしていきます。固定資産税の標準税率は1.4%に定められています。市町村の財政状況によっても異なる場合がありまので注意をしてください。通常は一律で1.4%です。

固定資産税評価額×0.014=年間の固定資産税額
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たとえば、固定資産産税評価額が3000万円であれば、年間の固定資産税の支払額は、3000×0.014=42万円となります。

固定資産税評価額

年間の固定資産税の支払額に影響を及ぼす、固定資産税評価額とは、市区町村が税金の計算のために基準にしている「住宅の評価額」です。

具体的には、「土地の価値」と「建物の価値」の合計です。土地と建物の評価額を別々に計算し、それを合計した住宅の評価額を算出します。

そして、住宅の固定資産税評価額は市場での売買価格(実勢価格)とは異なります。通常、実勢価格より30%程度以上安めに設定されています。そのため、固定資産税評価額は、実際の住宅の価格よりも低めに設定されています。

仮に新築の住宅を3000万円近くで購入したのに、市役所からとどいた固定資産税の納税通知書には固定資産税評価額が1500万円となっているケースが一般的です。つまり、固定資産税評価額とは、本来の住宅の価値とは異なるものです。

では、なぜ固定資産税評価額は低めに設定されているのかといえば、固定資産税評価額は毎年計算されるものではありません。通常は3年に1度しか計算をしません。計算方法も独自の計算方法です。そのため、なんらかの理由で時価よりも高額になってしまい、税金が不当に高額になるのを未然に防ぐために、土地は公示価格の70%、建物は建築費の50%~70%を目安にして固定資産税の価値を評価します。

固定資産税の支払時期について

固定資産税は年4回の分割払いで納付します。住宅の評価額によっては、年間の固定資産税も高額になります。そのため、一般的には固定資産税は年4回にわけて分割払いで納付します。

固定資産税の納税通知書は、第1期の納期限の初旬に届きます。たとえば、東京23区内なら6月初旬、横浜市や大阪市は4月初旬です。

固定資産税は市税になります。そのため、管轄は市町村の役所です。税務署、つまり国税ではありません。しかし、東京都内の場合は東京都主税局の管轄になります。

その年の1月1日時点で、住宅を所有している人に固定資産税が発生します。そのため、年度の途中で住宅を売却した場合であっても、固定資産税の支払義務は残ります。例えば、東京23区内の自宅を6月に中古売却しても、第2期、第3期、第4期の固定資産税の納付は、売主である前の所有者が負担します。
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分譲マンションの場合、土地と建物についてはそれぞれ軽減措置を受けられる可能性があります。新築なのか、床面積の広さ、耐火構造などいろいろな制約はありますが、条件により固定資産税を大幅に軽減されることがあります。

固定資産税の支払を延滞した後の流れとは

固定資産税は滞納するべきではありません。これは大原則です。後回しにして、固定資産税を数年単位で滞納してしまい、首が回らなくなるケースもあります。

経済的には固定資産税の支払い能力がないということは、住宅を保有し続けることも不可能であるということです。固定資産税の滞納は、遅延金も高額です。厄介なことに、固定資産税は税金ですから、自己破産をしても非免責債権となり、支払が免除されません。

数か月程度の滞納であれば、そこまで慌てる必要はありません。しかし、1年以上の期間で滞納している場合、赤信号がともりつつあります。滞納税金は絶対に免除されない負債であり、早急に解消する方法を考えるべきです。

税金を滞納してから財産が売却されるまでの流れ

  1. 滞納発生
  2. 徴収職員による督促状の発送
  3. 財産調査(金融機関、保険会社、取引先への照会)
  4. 財産の差押え(給与、預金、不動産、保険など)
  5. 財産の売却などで滞納を解消

滞納発生

固定資産税の納期限を過ぎても支払がない場合、滞納となります。滞納になりますと滞納税が発生します。そして、市役所は督促や催告の準備をします。

滞納した固定資産税を分納により解消した場合、滞納発生のタイミングで徴収職員に相談するのがいいでしょう。滞納を解決するために自分から相談にいく納税者は多くありません。そのため、比較的徴収職員に好印象を持ってもらえます。

滞納が発生する前でもいいのですが、滞納してしまったら、早急に相談をしに行くといいでしょう。

徴収職員による督促状の発送

納期限を過ぎても支払がなく、自分から相談に行かなければ、市役所は20日以内に督促状を送付します。この手続きは、地方税法371条により定められており「督促状を発しなければならない」となっています。そのため、法律にしたがい事務的に処理されます。

そして、督促状を発送した日から10日を経過するまでに、解消できない場合は、滞納者の財産を差押えなければならない、と法律で決まっています。つまり、10日過ぎたあとは財産をいつでも差押えることが可能ということです。督促や催促のコンタクトが有った場合、無視をすることなく対応をしましょう。無視した場合、納税しようとする誠意がないと判断されてしまいます。結果、財産の差押えリスクが高まります。

また、督促処分について不服がある場合、60日以内に異議申立てをすることができます。ただ、よほど特殊なケースを除き、不服申立てをしても意味がありません。時間稼ぎにもなりませんので注意をしましょう。

さらに、すでに滞納をしている状態ですから遅延金が発生しています。遅延金は1ヶ月以内までは年2.9%、それを越えてしまうと年9.2%の延滞金が発生します。

固定資産税の滞納分にかかる延滞金について

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固定資産税の延滞金ですが、仮に6月30日が納期限の税金を滞納している場合、7月30日までなら年利2.9%です。しかし、それを越えてしまうと年利9.2%の延滞金が発生します。
年利9.2%というのは、金利としては高額に分類されます。固定資産税というのはもともと高額です。その上、年間で元本の1割近く増えるので、長期滞納をしてしまうと延滞金の納付も容易ではありません。

固定資産税の滞納が積み上がってしまった場合、まずは本税、つまり元本から優先して支払うことが鉄則となります。

税金を滞納していると本税と延滞税が合算された納付書が送られてきます。しかし、本税を先に完納しなければ、いつまでも延滞税が増え続けます。

10日以内に完納しなかった場合の滞納処分(差押え)

督促状を発した日から10日以内に固定資産税を完納しなかった場合、役所はいきなり財産の差押え執行をすることができるようになります。これが滞納処分です。

税金の滞納処分は消費者金融業者のカードローン(キャッシング)のような、民間の貸金業者がおこなう差押えの手続きとは異なり、裁判所の申立てをおこなう必要がなく、行政処分としていきりなり差押えの実行が可能なのです。

地方税法373条にて、滞納者の財産お差押えなければならない、と定められています。

「営利目的の民間業者じゃなく、お役所だから多少の滞納は見逃してくれるだろう」と甘く考える方もいますが、税金に関しては役所が見逃すということは絶対にないです。
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また、勘違いのひとつで「法律で定められた10日を過ぎたらただちに住宅が差押えになり公売になるのではなかろうか」と心配する方もいますが、それはありません。10日過ぎたら滞納処分をして、固定資産税と延滞税を回収しなければならないと決まっているだけで、10日経過ですぐに差押えをする義務があるわけではありません。

そもそもの話ですが、数十万円の固定資産税の滞納のために、数千万円の住宅がいきなり公売にかけられるケースは稀です。通常、もっと簡単な給料差押え預金口座の差押えによる取立から狙われていきます。しかし、逃げられたら困るので、それを防止するために住宅をとりあえず差押えておくことは珍しくなりのです。

つまり、差押え登記をする=実際に公売にかけて売却する、ということではありません。

財産調査(金融機関、保険会社、取引先への照会)

督促や催告の無視を続けると、徴収職員は「財産調査」「身辺調査」を始めます。

財産調査とは、滞納者の預金がいくらあるのか、解約返戻金が発生する保険はないかなどの調査をします。

財産調査は、民間の貸金業者の場合、こちら側の銀行口座や勤務先が知られていなければ、相手も簡単に給与や預金を差押えることはできません。民事で相手の財産を差押えるためには、自分で相手の財産を調査して特定しなければならないからです。

しかし、税務署や市役所の場合は異なります。税金の滞納処分の場合、国税徴収法141条により「財産調査」「身辺調査」が認められています。勤務先や預金口座の特定は比較的簡単におこなわれてしまいます。

たとえばですが、会社に勤務して給与を受け取っている方の場合、勤務先の会社から市役所に給与支払報告書が提出されます。市役所は調べようと思えば、簡単に勤務先や給与の振込口座の特定が可能です。しかも、銀行の預金口座については「預貯金調書」という文書を銀行に送るだけで紹介が可能なのです。当然、法律で認められた権利であい、滞納者本人の同意を必要することなく、個人情報保護の観点からも問題とはなりません。金融機関も照会を求められたら、照会に応じる義務があります。

ここまで手続きが進行してしまうということは、滞納額がよほど大きくなるのか、もしくは滞納者に納税する誠意がないと徴収職員に判断された結果です。このタイミングで、分納の相談をしても断られる可能性が高くなります。

財産の差押え(給与、預金、不動産、保険など)

差押えられる財産がある場合、財産の差押えがおこなわれます。住宅ローンがまだ残っている場合には、仮に固定資産税を滞納して住宅が差し押さえられたとしても、すぐに競売(公売)になるわけではありません。不動産の換価手続きは非常に面倒です。時間もかかります。

そのため、もっとも取立てが簡単な銀行の預金口座の差押えをしたり、勤務先の給与の差押えをしたりするのが一般的であり、財産の差押えは最後の手段となります。

ただし、預金にしても給与にしても突然差押えを受けることはありません。催告書や差押予告書が事前に届きます。催告を受けている間に誠実な対応をとることが重要になります。

財産の売却などで滞納を解消

差押えられた財産は「公売」という方法で売却されます。住宅ローンが残っている自宅を所有している場合、税金滞納の差押えが入ることで、競売の手続きが開始されます。

動産執行で住宅に踏み込まれて物品を押収されるのか?

固定資産税を長期にわたり滞納をしている場合、自営業なので給与差押えができない、特定した預金口座にほとんど財産がない、といった差押え可能な財産がない場合には、実際に自宅に踏み込んできて動産を差押えられるケースがあります。

自動車・バイクなどの動産、ブランド品のアクセサリーや時計などの貴重品、絵画や骨とう品などです。この他に高価買い取りが期待できるゲーム機の本体やドレスなどが差し押さえられる可能性もあります。

税金の滞納処分で差押えらえた物品は、公売オークションにより売却され現金化されてしまします。Yahoo!オークション(Yahoo!官公庁オークション)などとも提携して、インターネット上でも販売されています。

税金の滞納処分とはいえ、差押禁止財産と呼ばれる差押えが禁止されている財産、日用雑貨品や食料品、日用衣服、寝具などは差し押さえることができません。差押えられるものは贅沢品です。
これらの強制捜索も本人の同意なくおこなうことができます。裁判所の令状も必要なく、家の鍵を勝手に開錠することができます。さらに、金庫や容器などがある場合、それらを勝手に開けることも認められています。これが国税徴収法142条にて認められています。
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民間の貸金業者はここまですることはできませんが、税金の滞納分については、容赦なくおこなわれます。
そのため、税金の滞納を甘くみてはいけません。

差押え禁止財産について

税金の滞納処分については法律で認められていますので、容赦なくおこなわれます。しかし、すべての財産を差押えすることができるのかといえば、そのようなことはありません。「差押禁止財産」という財産までは差し押さえることはできません。

差押禁止財産は国税徴収法75条に決められています。

第七十五条 次に掲げる財産は、差し押えることができない。
一 滞納者及びその者と生計を一にする配偶者(届出をしていないが、事実上婚姻関係にある者を含む。)その他の親族(以下「生計を一にする親族」という。)の生活に欠くことができない衣服、寝具、家具、台所用具、畳及び建具
二 滞納者及びその者と生計を一にする親族の生活に必要な三月間の食料及び燃料
三 主として自己の労力により農業を営む者の農業に欠くことができない器具、肥料、労役の用に供する家畜及びその飼料並びに次の収穫まで農業を続行するために欠くことができない種子その他これに類する農産物
四 主として自己の労力により漁業を営む者の水産物の採捕又は養殖に欠くことができない漁網その他の漁具、えさ及び稚魚その他これに類する水産物
五 技術者、職人、労務者その他の主として自己の知的又は肉体的な労働により職業又は営業に従事する者(前二号に規定する者を除く。)のその業務に欠くことができない器具その他の物(商品を除く。)
六 実印その他の印で職業又は生活に欠くことができないもの
七 仏像、位牌はいその他礼拝又は祭祀しに直接供するため欠くことができない物
八 滞納者に必要な系譜、日記及びこれに類する書類
九 滞納者又はその親族が受けた勲章その他名誉の章票
十 滞納者又はその者と生計を一にする親族の学習に必要な書籍及び器具
十一 発明又は著作に係るもので、まだ公表していないもの
十二 滞納者又はその者と生計を一にする親族に必要な義手、義足その他の身体の補足に供する物
十三 建物その他の工作物について、災害の防止又は保安のため法令の規定により設備しなければならない消防用の機械又は器具、避難器具その他の備品

また、国税徴収法の76条「給与の差押禁止」にて、

  • 1.所得税の源泉徴収額
  • 2.住民税の特別徴収額
  • 3.社会保険料
  • 4.滞納者本人10万円+家族1人あたり45000円
  • 5.(給与総額-上記4項目の合計額)×1/5

1~5を合計した金額が、給与の差押禁止の範囲になります。4番目の「家族1人あたり」とは、同じ世帯で生計をひとつにしている家族(配偶者・扶養家族)に限られます。

たとえば、給与の支給額が50万円、所得税、住民税、社会保険料の合計が10万円。世帯は夫と妻、子供1人の3人の場合は下記のようになります。

  • 所得税の源泉徴収額+住民税の特別徴収額+社会保険料=10万円
  • 4の計算額:10万円+4万5000円×2=19万円
  • 5の計算額:(50万円-29万円)×1/5=4万2000円

つまり、

  • 差押禁止額=10万円+19万円+4万2000円=33万2000円
  • 差押可能額=50万円-33万2000円=16万8000円
民間の貸金業者が強制執行では、「給料の4分の3に相当する部分は差押えることができない」という規定があります。しかし、税金の滞納処分の場合、差押禁止はルールが異なりますので注意してください。

なお、預金口座の差押えの場合は、差押禁止に関する規定はありません。つまり、市役所からの催告状などを無視して、一切役所と話し合いや相談をしていない場合、生活の実態を十分に把握されることがないまま、強制的な差押えに踏み切られてケースがあります。滞納税金を放置していたら、預貯金全額を差押えというケースも珍しくありません。

もちろんですが、市役所へすぐに連絡をとり誠実に交渉をすることで生活が立ち行かなくなる正式に認められれば、当然ですが滞納処分が比較的早期に停止される可能性があります。

滞納処分を回避するための3つの方法

督促状が送付されてから10日以上が経過した場合の措置については、市町村により異なります。しかし、しばらくは催告書が送られてきたり、電話がかかってきたりするのが一般的です。訪問をして催告をするケースもあります。

そして、重要になるのが、この点できちんと誠実な対応をとることです。不誠実な対応、無視をしたり放置をしたりすると、滞納を解消するための3つの方法をとることが難しくなります。それどころか、市役所としても納税交渉をすることができませんので、債権の差押えをしてきます。

誠実な対応をしておけば、次に紹介をする方法をしてもらえる可能性が高くなります。しかし誠実に対応をすることなく、ただ固定資産税の滞納を続けていますと、早々に財産、住宅や預貯金口座の差押えを市役所がおこなっても文句をつけることはできません。

そして、問題となるのがいつまで滞納をすると住宅や財産の差押えをされてしまうのかですが、それは各市役所の判断により異なってきます。そのため、明確に何ヶ月まで滞納可能とは断言できません。
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固定資産税の課税については1年に1回です。年度中に分割払いを滞納した程度で、差押をされるというのは、現実的に起こるものではありません。

1つ言えることは、法律上では「督促状が発送されてから10日が過ぎたら、差押えをしなければならない」と決まっています。つまり、10日以降、いつ差押えを受けても文句はいえません。滞納額が大きい人、長期にわたり固定資産税を滞納している人は、基本的に優先して財産調査をうけますので、差押えの可能性は高くなります。

では、滞納処分を回避する3つの方法について解説をします。

通常の分納

滞納処分を回避するためには、通常の分納方法があります。身も蓋もありませんが、多くの人が利用している一般的な分納方法です。これができないので滞納をするとは思いますが、滞納を回避するための方法ではもっともシンプルで簡単です。特別な手続き、資料を必要とすることなき気軽におこなえます。

徴収猶予

滞納処分を待ってもらいたい人が気になる方法のひとつとして、徴収猶予をあげることができます。徴収猶予と次に紹介する換価の猶予についてはできる可能性がある程度の認識があるで、間違いはありません。確実、徴収猶予と換価の猶予を実行できるとは限らないという点がキモです。

では、徴収猶予ですが、納税者の財産が震災や災害により失われてしまったり、盗難にあってしまったり、事業を廃止した場合、親族が病気や負傷などにより特殊な事情が発生したことで固定資産税を支払うことができなくなった場合、固定資産税の納付について1年間の猶予を受けることができる制度です。徴収猶予の期間は督促や滞納処分を受けなくて住みます。

これは、地方税法15条に明記された法的根拠に基づいて実行される猶予措置です。

換価の猶予

納税者の財産の換価をすることで、事業の継続や生活の維持が困難になる場合、かつ納税者が税金を支払う誠実な意思があると認められた場合、1年間(やむを得ない事情がある場合2年間)の猶予を受けることができます。現実的には、換価の猶予にて分割払いを認めてもらうケースが多くなるでしょう。

換価の猶予は地方税法15条の5に明記された法的根拠に基づいて実行される猶予措置です。

ここでキモになるのが、誠実に固定資産税を支払おうとする態度になります。前述しましたが、支払うことが難しい場合、督促状が送られてくる前に相談へ行くというのは、換価の猶予を見越しての行動であるといえます。支払いますよという意思を見せていれば、まったく音さたがない人に比べれば、当然ですが換価の猶予を受けやすくなります。

そして、固定資産税の滞納に特別な事情がないのであれば「換価の猶予」を利用するのが一般的です。換価の猶予は自分で申請をする方法と徴税職員が職権でおこなう方法の2つがあります。ただし、自ら換価の猶予を持ち出して適用を主張するケースは多くありません。ほとんどが徴税職員の職権により猶予してもらうということになります。

繰り返しになりますが、換価の猶予を実行するためには誠実に固定資産税を支払う意思があることが条件になります。そのため、役所に出向きなぜ支払うことができないのか、そして、差押を待って欲しい旨を相談するしか方法はありません。

換価の猶予が認められた場合、延滞金についても優遇処置があります。つまり、2分の1が免除となります。これも地方税法15条の9に明記されています。

誠実な対応とは?

「役所の人にも人情があるので、誠実にちゃんと話すことで税金の納付も待ってくれる」という意見をネット上にちらほらあります。これは間違いではありませんが、前述したように仕組みがあるから、役所の職員は待ってくれるのです。役所の職員の個人的な気持ちや同情の意思で納付を待ってくれることはありません。

法律にて「職権により換価の猶予ができる」と決められているので、役所の職員は猶予をすることができるわけです。その条件として誠実な意思を有するとなっています。そのため、人情にて支払を待ってもらえると勘違いしてしまうわけです。

では、誠実な意思とはなにか、といえば「他の支払よりも優先的に税金を納付する意思があること」になります。そのため、誠実支払いますからと床に頭をこすりつけて低姿勢で丁寧にお願いをしたとしても、実際他の債務の返済を優先的におこなっていれば、「誠実な意思はない」として換価の猶予を認めてもらえない可能性は非常に高くなります。つまり、態度の問題ではないということです。

分納方法ごとのメリット・デメリット

通常の分納

通常の分納は、ただ単純に徴収職員との話し合いをして、そこで作成した分納計画通りに納税をするだけなので、シンプルで非常に簡単です。しかし、あくまでも口約束になってしまいますので、計画通りに納税できなくなったときには弁明の機会を設けられることなく、ただちに差押えをされてしまうリスクが高くなります。しかも、延滞税の割引はなく、年利9.1%が発生します。

つまり、メリットは手続きが簡単であるということ。デメリットは延滞税の優遇処置がなく、差押のリスクが他の方法より高く、返済におくれた時に弁明の機会を与えてもらえないことが一般的です。

徴収猶予

大きなデメリットとしては、全員が利用することができないという点があります。

病気やケガなどで急な出費が重なってしまった場合や事業不振などが原因で収入が減ってしまった人などしか、徴収猶予を利用することができません。また、用意する書類の準備が大変であるというというのもデメリットのひとつであるといえます。

しかし、メリットとしては延滞税を50%~100%免除することができます。さらに分納計画通りに納税ができなくても弁明の機会が与えられます。さらに、猶予期間中の差押えはなくなります。また、すでに差し押さえられている場合、一定の要件に該当することで差押えを解除することができます。

換価の猶予

徴収猶予の利用要件に該当せず、すでに財産の差押えをされている人は換価の猶予の手続きをとります。この制度を利用すれば1年~2年は財産の売却を一時的にストップさせることがで、その間に固定資産税の滞納を解消することで財産を守るという方法です。

メリットとしては、延滞税の2分の1つまり50%を免除してもらうことができる点、そして財産の換価処分(売却)を一時的に先延ばしすることができるというものです。

しかし、換価の猶予が認めらえる可能性は低いというデメリットがあります。

徴収猶予を利用するための条件

納税者にとって有利な制度である徴収猶予ですが、利用するためには条件があります。

つまり、

  • 災害・盗難にあった場合
  • あなた、家族・親族が病気やケガをしてしまった場合
  • 事業を廃止・休止した場合
  • 災害・盗難・病気・ケガはしていないが、同等のことが起きてしまった場合
  • 事業の廃止・休止・いちじるしい損失を被ったわけではないが、似たような事がおこった場合

上記のうち、ひとつでも該当すれば徴収猶予を利用することが可能です。

また、1番~4番に該当する場合、延滞税が100%免除され、5番~6番に該当する場合は延滞税50%が免除されます。

そして、5番と6番ですが範囲が非常に広くなります。そのため、多くの人が利用できる可能性があるのです。たとえば、賃貸経営をしている大家が、空室が多くなり収入が少なくなったら、6番目の「事業の廃止・休止・いちじるしい損失を被ったわけではないが、似たような事がおこった場合」に該当します。

サラリーマンの場合、業績不振で収入が減った、リストラにあった場合、6番に該当します。また、病気やケガをして収入が減った場合は2番、5番、6番に該当します。さらに、親の介護が必要になり、仕事を減らさなければなくなった場合、2番、5番に該当する可能性が出てきます。

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このように、全員がすべからく利用することができるわけではありませんが、利用できる範囲が広いので利用できる可能性は必ずしもゼロではありません。

換価の猶予の利用条件

換価の猶予の利用条件は、下記の通りです。

  • すでに財産を差押えられている
  • 財産を売却すると生活に困窮する、または事業の継続が困難になる可能性がある
  • 換価の猶予を受ける固定資産税以外に税金の滞納がないこと
  • 納税について誠実な意思があると認められること

このような条件になります。

つまり、差押で財産を売却されてしまうと、生活や事業に支障が出て困ってしまう可能性がある方であれば、換価の猶予を誰でも申請することが可能です。

換価の猶予の詳細については、国税庁が作成した「納税の猶予等の取扱要領」が詳しいので、検討するのであれば一読しておきましょう。

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また、固定資産税などの地方税に関する換価の猶予の申請権については、あくまでもお願いというスタンスです。そのため、お願いなので拒否される可能性は十分にあります。

ダメ元で、換価の猶予のお願いをしてもいのですが、あまり大きな期待をすることはできません。換価の猶予のお願いを聞き届けてもらえる確率を上げるには、初動の対応が重要となるでしょう。

徴収猶予の流れ

徴収猶予の手続きの流れは下記の通りです。

  1. 徴収猶予申請書、必要書類の提出
  2. 現在納付可能資金額の納付
  3. 行政による書類審査
  4. 猶予許可通知書・猶予不許可通知書が届く
  5. 分納計画通りに分納を開始

徴収猶予申請書、必要書類の提出

書類と印鑑を準備して、役所の固定資産税を取り扱う課にて徴収猶予のお願いをします。

現在納付可能金額の納付

現在納付可能資金額を納付する必要があるため、現在納付可能資金額の納付書を役所の職員に作成してもらいます。作成された納付書を持って、自治体の中にある金融機関の窓口などで振込をして納付をしましょう。

行政による書類審査

書類の内容に不備がある場合、役所から補正通知書とうい書類が届きます。この書類を受け取ったら、20日以内に内容を修正した書類を再提出しなければなりません。20日の期限を越えてしまいますと、徴収猶予の申請を取り下げたと判断されてしまうので注意をしましょう。

書類内容について、確認事項がある場合、質問や確認の連絡がなされます。

猶予許可通知書・猶予不許可通知書が届く

徴収猶予が許可されたら「猶予許可通知書」が不許可の場合「猶予不許可通知書」が届きます。

猶予許可通知書には、分割納付計画が記載されており、その通りに納付するようにしましょう。また、許可の内容が一部の滞納金額のみ許可となるケースもあります。

不許可の場合、通知あった日から60日以内に異議申立、審査請求をおこないます。

分納計画通りに分納を開始

計画書どおりに納付しなければ、徴収猶予を取り消される可能性が十分にあります。ただし、その場合、弁明の機会が与えられていますので、直ちに財産が差押えらえるリスクはありません。

換価の猶予の流れ

  1. 換価の猶予に関する上申書・必要書類の提出
  2. 現在納付可能資金額の納付
  3. 行政による書類審査
  4. 換価の猶予を認めるかどうかの回答
  5. 分納計画通りに分納の開始

内容は、徴収猶予とほぼ同じです。

まとめ

住宅ローンを滞納している場合であっても、なるべくは税金の滞納はするべきではありません。固定資産税などの税金を滞納した場合、民間の貸金業者よりもエグイ手段で、役所は差押えをしてきます。差押えの内容は民間の貸金業者と少し異なるので注意をしましょう。

差押えられないためには、事前に役所へ赴き支払うことができない理由などを説明するのが有効な手段です。

  1. 徴収猶予
  2. 換価の猶予

を引き出すことができる可能性が高くなります。[/aside]

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