住宅ローンが払えないから売りたい!任意売却ができる条件とできない条件とは?

住宅ローンが支払えずに任意売却を検討しているけれど、任意売却をすることができないケースというものがあります。任意売却をするためには一定の条件が必要になります。条件を満たしていないと任意売却をすることはできません。また、住宅の場所によっては銀行側が融資を断りますので任意売却をしたくてもお金がなくて買主が購入することができないというケースもあります。

住宅ローンが払えないので、任意売却をしたい場合、条件が整わずに売れない可能性があります。今回は任意売却をするための条件や任意売却ができない物件の条件について紹介をしていきます。

任意売却をするための条件とは?

債権者(担保権者)全員の同意

この債権者(担保権者)というのは、住宅に抵当権を設定しているものです。抵当権を持っていない消費者金融業者やクレジットカード会社のような債権者は関係ありません。

そして、債権者の同意というのは抵当権を抹消してもいいよ、という同意です。

将来的に住宅ローンが払えなくなる可能性が濃厚な場合でも、現時点で支払えているので任意売却を望んだとしても、債権者が抵抗権の抹消をしてくれない可能性が極めて高くなります。

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なぜなら、債務者がどのような生活を送っていても、融資している分の住宅ローンを返済さえしてくれれば、抵当権を抹消する必要もなければ、任意売却に応じる必要もないからです。仮に債務者の生活がギリギリであったとしても、滞納せずに返済できるギリギリまで金融機関は返済してもらいたいというのが本音の部分です。

そのため、抵当権を抹消し任意売却するという選択肢を提示する前に住宅ローンのリスケジュールや負担額の軽減案などを示します。また、債務整理のひとつである個人再生なども提示することもあるでしょう。

個人再生というのは、住宅ローン以外の借金を原則5分の1まで減額して、減額した借金は3年以内(最長で5年以内)に完済するように、裁判所を利用して行う手続きです。個人再生を利用した場合、3年かけて完済し、そこから10年間は銀行などで信用情報機関のブラックリストに載ってしまうので、クレジットカードの審査や消費者金融業者・銀行からの借入審査には通りにくくなるでしょう。

抵当権を抹消させるためには、住宅ローンの返済を停止して住宅ローンを滞納する必要があります。もちろん、事前に任意売却をするためのことを視野にいれての滞納であることを債権者へ話しておくといいでしょう。

また、複数の債権者がいる場合、全ての債権者の住宅ローン返済を停止しなければなりません。1社でも返済を継続していると、その1社は任意売却に応じる必要がないので、任意売却をするために必要な債権者(担保権者)全員の同意を得ることができなくなります。
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わずかな額だとしても、全ての債権者へ返済してはいけないのです。

ローン保証会社による代位弁済の実行

銀行などの金融機関は住宅ローンを融資する場合、必ずローン保証会社を付けます。そして、6ヶ月間滞納をすると、債務者は期限の利益を喪失して、ローン保証会社が債務者の代わりに代位弁済をおこないます。

ローン保証会社が代位弁済をしてくれますので、金融機関としては損はでません。そして、ローン保証会社が代位弁済をするので、いくら銀行へ任意売却をしたいといっても銀行は任意売却に応じる必要はなく、債務整理を勧めてくるわけです。

ちなみに、ローン保証会社が代位弁済をしますと、債権が金融機関からローン保証会社へ移ります。つまり、代位弁済が実行された時点で、銀行が債権者でなくなります。そのため、債務整理の個人再生を利用することはできなくなります。

任意売却をする時間が十分にある

任意売却をするための条件の1つとして、任意売却をするための時間が十分にあるか、これも重要です。任意売却をするための時間とは、つまり、販売活動をするための時間がしっかりあるかということです。

競売開始決定の通知が届いた時点で、競売は債権者が競売の取り下げをするまで自動的に進行していきます。そして、期間入札を経て開札をされてしまうと、たとえ、住宅の買い手がついていたとしても、競売で競り落とした買受人へ住宅は売却されてしまいます。

そのため、期間入札が始まると任意売却で住宅を売却することはできません。理論上は期間入札の最終日、開札の前日までは競売を取り下げることが可能ですが、理論上であり、実務上では不可能です。期間入札が開始された時点で債権者は競売の取り下げに応じてくれなくなります。

仮に応じてくれたとしても、稟議書を作成して許可を得るなどの手続きがありますので、開札前日までに競売を取り下げることは事実上不可能です。

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住宅ローンが支払えず、住宅を売ることを決めた場合、住宅ローンを滞納していないときから、任意売却の専門業者に相談をして販売活動をいつでも開始できる状態にしておくことがいいでしょう。

事件屋・抗告屋など怪しげな業者に注意

ちなみに、競売が始まり「配当要求終期の公告」というものがなされますと、さまざまな怪しい業者からのアプローチがなされます。

配当要求終期の公告というのは、競売開始決定がなされた不動産と債務者名を裁判所にて公告をします。これは、競売を申し立てた債権者以外にも、その債務者に対して債権を持っているのであれば、裁判所に申し出てきてくださいよと告知をするのです。

そして、怪しい業者の中に「事件屋・抗告屋」と呼ばれる存在がいます。この業者は競売手続に対する不服申立である、執行抗告を債務者の代わりに行う業者です。業者の言い分では執行抗告をすることで競売の期間を長くすることができるというものです。

執行抗告をするためには具体的で理路整然な理由が必要なのですが、抗告屋が行う執行抗告は「落札価格が不当に安い」という大した理由でないので、地裁にて「原審却下決定」を即座にされますので、時間稼ぎにはなりません。
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住宅ローンを支払うことができないのに、任意売却の専門業者などへ相談をしていなければ、怪しげな業者からのアプローチに頭を悩ませることになります。

妥当な売却価格である

住宅ローンの返済ができず、任意売却をする場合、時間との勝負です。販売期間が短ければ競売にて売却されてしまいます。そうなってしまうと、債権者も債務者も損をしてしまうわけです。

しかし、任意売却では、売却価格が市場価格と比べて妥当な価格でなければ債権者全員から同意を得ることができません。仮に債権者全員が納得して不当に安い価格設定にできた場合、今度は連帯保証人から文句が付きます。

住宅ローンに連帯保証人がついている場合、連帯保証人は任意売却後に残った住宅ローンの支払い義務を主債務者と同様に負います。そのため、連帯保証人は不当に安い価格で売却されてしまうと、それだけ売却後の支払いが重荷になる可能性があるわけです。

また、債権者も保証人を守る義務を持っています。仮にこの義務を守らない場合、連帯保証人は、本来の値段と販売価格との差額分の保証を放棄します。
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保証人を守るという観点からも妥当な売却価格で売却しなければなりません。

税金滞納で差し押さえられていない

固定資産税をはじめとした住宅にかかる税金を滞納していると、役所によって差押登記をされてしまいます。その場合、債権者、連帯保証人が住宅の売却に納得して、しかも買主がついている場合でも売却することはできません。

住宅ローンが払えない場合、税金などの支払いも滞納してしまう可能性があるでしょう。しかし、税金については納税の義務というものがありますので、滞納をしていると役所により差押えを受けてしまうわけです。

住宅を任意売却すると決めたら、住宅ローンで消えていた分の収入がまるまる入ってきますので、その収入を使い、税金を滞納しているのであればきちんと支払う姿勢を見せる必要があります。

本来は、国税徴収法にて任意売却をする住宅の差押えは無益の差押えとして禁止されているのですが、実務上はいちいち役所は調べて差押えをしません。そのため、事前に役所におもむき、なぜ滞納をしているのか、そして、きちんと支払う姿勢がある旨を説明する必要があります。

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これをおこたると、決済日に差押登記が入り、任意売却の契約が白紙撤回になる可能性もあります。

税金についてですが、住宅を売却した代金の中から10万円程度控除してくれます。ただし、優先税という抵当権が付く前に発生している税金については全額控除されるのが一般的です。ただ、抵当権がついた後に発生する税金の額の方が多く、優先税が発生する方が稀です。

共有物件は共有者全員の同意

たとえば、夫婦の共有名義で住宅ローンの融資を受けた住宅の場合、共有者全員の同意が必要になります。反対する人がいる場合、売却することができません。

マンションの管理費・修繕積立金を支払っている

住宅ローンの支払いが厳しい場合、マンションの管理費・修繕積立金を滞納しているケースも考えられます。このような場合、売却するのは難しくなります。売却ができないわけではなく、難しくなります。

マンションの管理費・修繕積立金を滞納している場合、そのマンションの部屋を購入した買主に、売主が滞納しているマンションの管理費・修繕積立金の支払い義務が発生します。たとえ、売主と買主の間で、「買主はマンションの管理費・修繕積立金の滞納分を引き継がない」という契約を結んでいたとしても、問答無用で買主に支払い義務が発生します。

そのため、債権者がマンションの管理費・修繕積立金の滞納分を売却代金から控除するというのが一般的です。たとえば、住宅金融支援機構の場合、過去5年分までに限り滞納分を支払うとしています。5年以上前の滞納分は時効を迎えていますので、支払いの義務はなくなります。しかし、住宅金融支援機構の場合、遅延損害金などは支払いませんので、その分は債務者自身が支払う必要があります。

税金の控除もそうですが、住宅の売却代金の中から債権者が控除、つまり、必要経費として代わりに支払ってくれるのです。しかし、住宅の売却代金の中から支払われる関係上、無限に認めていたら債権者の取り分が少なくなってしまうので、どのくらいまで控除するのかきちんと決められています。

法的制限で売ることが難しい物件

今度は、住宅ローンの返済が厳しくて住宅を売りたいのだけれど、法的に制限があり任意売却をするのが難しい物件について紹介をします。

接道のない敷地(再建築不可物件)

接道のない敷地というのは、任意売却をするのが難しい物件です。

なぜかと言いますと、家を建てるときには建築基準法など様々な制約があり、好きな場所に自由に家を建てることができません。そして、その中に「接道義務」というものがあります。

接道義務というのは、都市計画区域内で建物を建てる場合、原則、建築基準法で定められた広さ(幅員)が4メートル以上の道路に2メートル以上接した土地でなければ、接道義務を満たしていない土地になります。
この土地に家がある場合、その家を解体して新しく家を建てようとすると、現在の建築基準法が適用され、新しく家を建てることができなくなります。

つまり、再建築不可物件となります。

市街化調整区域内の建物

都市計画法の定義として、市街化調整区域とは「市街化を抑制するべき区域」とされます。この区域では原則として開発行為をおこなってはいけません。新しく建築物を建てたり、増築をするのも極力抑えたりしなければならない地域なのです。

開発を行う場合、都道府県知事から開発許可を受ける必要があります。

このような物件については、任意売却に関しては当事者間で合意があれば可能なのですが、銀行はこのような物件に対して融資をおこないません。つまり、一般人では接道のない敷地や市街化調整区域内の建物を購入するというのは現実的には不可能であるといえます。

UR都市再生機構の任意売却

独立行政法人都市再生機構(UR都市機構)は任意売却を原則認めていません。

そのため、UR都市機構から住宅ローンを借りて、住宅を建てた場合、住宅ローンの返済ができなくなってしまったら、その住宅は競売によって処理されます。

任意売却を認めていない理由ですが、公団など抽選などで当選して住宅を取得した方が利益を目的として転売をするのを防ぐためです。また、割賦販売という公団に分割払いをする購入者が公団そのものになるからです。そのため、全額償還以外は認められず、UR都市機構は任意売却には応じません。

これがUR都市機構の方針になります。ただ、絶対にUR都市機構が任意売却を認めていないかといえば、実はそうでもありません。最近では一定の条件下であれば任意売却を認めています。ただし、その条件についてはかなり厳しくなっています。

売却期間は6ヶ月限定であり、売却指定価格の見直しは認められていません。そのうえ、残債の弁済契約には、公正証書が条件となります。また、UR都市機構から費用負担は触媒契約の手数料のみであり、引越料金などは認められていません。

しかもUR支社により対応が異なりますので、任意売却を認めていない場所と上記の条件で任意売却を認めている場所があります。また、任意売却を認めていても、残債務額以上の価格で売却することが条件となるケースもあります。

つまり、任意売却を認めていないのではなく、事実上任意売却が不可能で競売のみでしか処分をすることができないというケースが多いわけです。
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そのため、住宅ローンの支払いが厳しい場合はとりあえず、任意売却で処理をしてくれないかと交渉をして、その交渉の結果、現実的に実行が可能なら任意売却を、不可能なら競売を選択するのがいいと考えます。

まとめ

住宅ローンが払えないので売るという選択は重要であると思いますが、任意売却をするための条件、任意売却をするのが難しいケースがあります。そしてUR都市機構のような、そもそも任意売却を認めていない場合もあります。

任意売却をするための条件は、

  • 債権者(担保権者)全員の同意
  • ローン保証会社による代位弁済の実行
  • 任意売却をする時間が十分にある
  • 妥当な売却価格である
  • 税金滞納で差し押さえられていない
  • 共有物件は共有者全員の同意している
  • マンションの管理費・修繕積立金を支払っている

このような条件が必要です。

この条件を満たしていない場合、トラブルになる可能性があります。「マンションの管理費・修繕積立金」については、売却金額か控除されますが、無限に控除されるわけではありませんので、なるべく滞納をしないようにしておきましょう。

また、法的に売却が難しい住宅として、

  • 接道のない敷地(再建築不可物件)
  • 市街化調整区域内の建物

このようなものがあります。

このような法的に売却が難しい住宅の場合、銀行が融資をしませんので、売却はかなり難しくなります。

そして、UR都市機構から融資を受けて建てた物件の場合は原則として任意売却を認めていません。競売のみです。任意売却をすることはできますが、非常に条件が厳しくなります。

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