任意売却をするときには連帯保証人からの同意が必要! なぜ、連帯保証人からの同意が必要になるのか?

任意売却をするときには、連帯保証人からの同意が必要になります。同意を必要としない契約もありますが、そのような契約をしていても同意を得る必要があります。任意売却をするときには連帯保証人からの同意がなければ、債権者が任意売却を渋ってしまうのです。

今回は、連帯保証人とはそもそもどのような存在なのか。そして、任意売却をする際に連帯保証人がどのように影響を及ぼすかについて紹介をします。

住宅ローンを利用するときには連帯保証人が必要になる

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住宅ローンを組む際に、融資をする条件として金融機関が連帯保証人を求めてくるケースがあります。これは、そこまで珍しいケースではありません。
たとえば、購入希望物件の価格が高く、収入面を見て、債務者単独での融資が難しい場合があります。また、会社への勤務年数が1年程度と短く、継続的な収入を得られているのかの判断が難しい場合は融資にたる信用度がないとして連帯保証人をつけて信用度に下駄をはかせることが一般的です。

連帯保証人については、住宅ローンをきちんと返済している限りにおいて、問題になるということはありません。きちんと住宅ローンを返済していれば、連帯保証人へ住宅ローンの請求が行くということはありません。

連帯保証人の問題点

問題となるのが、住宅ローンの返済ができなくなったときです。住宅ローンをいくらか滞納しても返済をして完済するのであれば、連帯保証人は問題とはなりません。

しかし、返済が不可能な状態となり任意売却をしても住宅ローンの残債務が残る場合、問題となります。つまり、連帯保証人へ保証債務として、残債務の全額の請求がいくことになります。

連帯保証人は、後述しますが、債権者からの請求を断ることができません。

連帯保証人は抗弁権を持たない

連帯保証人は、保証債務、つまり、保証人の住宅ローンなどの請求をされたときに、それを拒む抗弁権というものを持っていません。

保証債務の抗弁権とは、

  • 催告の抗弁権
  • 検索の抗弁権
  • 分別の利益

などがあります。

催告の抗弁権というのは、保証債務の返済の要求が債権者から来た場合、まずは主債務者、つまり、お金を融資してた債務者に請求をしてくれと求める権利です。

検索の抗弁とは、まずは連帯保証人の私の財産を差し押さえるのではなく、主債務者の財産から差押えをしてくださいと求める権利です。

そして、分別の利益というのは、900万円の借金があり、3人の保証人がいれば、3人の保証人は300万円ずつ借金を分別することができる利益です。連帯保証人の場合、分別の利益が認められていませんので、3人の連帯保証人がいたとしても3人全員が全額を保証しなければならないのです。たとえばですが、一番お金を持っていそうな連帯保証人へ900万円の請求がくるというパターンも考えられます。

これら抗弁権とは債権者に支払能力がある限りにおいて、返済はすべて債権者へ求めてくれという権利になります。しかし、連帯保証人はこれらの抗弁権を持っていません。そのため、債権者から請求がされたら抗弁をすることができず、主債務者の代わりに代位弁済をしなければならないわけです。

任意売却をするには連帯保証人の同意が必要

任意売却をする際には、債権者の同意が必要となりますが、連帯保証人が要る場合、債権者は連帯保証人から任意売却をしてもいいかという同意を得る必要が民法上存在します。

民法上では「担保価値保存義務」というものです。

連帯保証人の同意を得ることなく、確実に売却をするために少し安い価格で住宅を任意売却するとします。その状態で、任意売却に成功してしまったら、連帯保証人からは「担保価値保存義務違反をしている」と突っ込まれ、民事訴訟を起こされる可能性が非常に高くなります。

なぜか? 1000万円の価値がある不動産を500万円で任意売却をしてしまったら、連帯保証人は500万円も安く担保物件を売却されていることになりますので、担保保存義務違反となり、差額の500万円を連帯保証人は支払わないとなるのです。

このような問題が起こらないように、債権者が担保にしている不動産を債権者が勝手に抵当権抹消をさせないようにするために、民放504条にて担保保存義務が債権者に課せられます。

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一般的には任意売却をするときに債権者は連帯保証人に同意を求めて、納得をしてもらってから任意売却を進める、とされています。

担保価値保存義務の実際の運用

債権者は連帯保証人と保証契約を結ぶ際、多くの場合「担保保存義務免除特約」という特約を契約にて結びます。これは、仮に任意売却をするときに、連帯保証人は「債権者の行う活動には何も口を出さない」という契約です。

そのため、この契約を結んでいるときに限り、連帯保証人の同意を必要とせずに債権者が任意売却を主導して任意売却をすることができるわけです。

しかし、東京高裁昭和54年3月26日の判決にて、

主債務者が保証を依頼するに際して、この特約を了承してうるかどうかについて確認の措置をとらず、保証人としては、この特約によって責任が付き急されることがあるということまで思い至らず、十分な担保があるものと信じて保証を承諾したものと推認されるときは、この特約は効力を認めることができない

という、担保保存義務免除特約を結んでいたとしても、連帯保証人を保護するべきであるという判決がでました。

また、平成2年4月12日の最高裁の判決では、

債権者に、担保等の変更時において故意・重過失がなく、免除特約(担保保存義務免除特約)の効力を主張することが信義則に反し、権利の濫用に該当するものとすべき特段の事情がない場合は、債権者は免除特約の効力を主張することができる

という判決もあります。

2種類の判決がありますので、任意売却をする場合、債権者は連帯保証人が要る場合、担保保存義務の免除特約を事前に結んでいたとしても、任意売却をするために、連帯保証人などから抵当不動産の担保解除につき、念のため再度、同意をとりますが、原則として連帯保証人が反対するのは難しいといえます。

任意売却をするのであれば、緊密な連絡が必要

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任意売却をする場合、債権者は担保保存義務の観点から連帯保証人へ同意を求めますが、債務者も連帯保証人と話し合いをして、将来的にどのようになるのかを説明する必要があります。

市場価格よりは少し安くなるものの、任意売却をする方が競売にかけられるよりはましであることをしっかりと説明して、連帯保証人を説得しなければなりません。

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住宅ローンが破たんしてしまった場合、任意売却をしても競売をしても、連帯保証人へ迷惑をかける可能性があります。そのため、精神的に苦痛を伴うものの、少しでも早く連帯保証人の債務が減るように努力する旨をしっかりと誠意をもって伝えることが必要であると考えます。

競売と連帯保証人

住宅ローンの返済ができないまま放置をしていますと、債権者により裁判所へ競売の申立てがおこなわれ、住宅は競売にかけられて、処分されてしまいます。競売となった場合は、連帯保証人の同意は不要となります。

そのため、債権者によって競売にかけられてしまうと、任意売却をしたときと比べて多額の残債務が残ることになります。

結果として、連帯保証人に多大な迷惑をかける可能性があるでしょう。

任意売却後に自己破産をすると連帯保証人にどのような迷惑がかかるか

住宅ローンの主債務者が任意売却をする前、任意売却をした後に自己破産をすると、主債務者の借金の返済義務は免除されますが、連帯保証人の債務は免除されず全額、連帯保証人が返済をしなければなりません。

結果として、連帯保証人も自己破産をしなければならないというケースが非常に多くなります。
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任意売却後に自己破産をしなければならないほど経済的に困窮しているのであれば、事前に連帯保証人と話し合いをして、伝えておくことが道義的な責任であるといえます。少なくとも自己破産の手続きを始める1ヶ月前には連帯保証人にその旨を伝えましょう。

離婚と連帯保証人

連帯保証人の問題で多いケースに離婚を上げることができます。

夫婦で住宅ローンを借り、夫が主債務者になり、妻が連帯保証人になるケースです。離婚をする際に、口約束で夫に養育費と住宅ローンの返済をすることを認めさせたものの、夫の収入が減少し自己破産をする、もしくは新しいパートナーができたことにより、住宅ローンの支払いが滞納され、競売にかけられ債権者から連帯保証人なのでお金を支払ってください、と住宅ローンの請求がくるケースなどが多々あります。

連帯保証人の契約と婚姻関係の契約というのは、法的には全く別の契約になりますので、連帯保証人である以上、元夫に返済の意思がない、返済する能力がない場合、連帯保証人である元妻が支払う必要があります。

連帯保証人というのは、夫婦間の約束ではなく、銀行などの債権者との契約になります。そのため、離婚をしたからといっても債権者が認めなければ連帯保証人のままです。

連帯保証人ですから抗弁権を利用することはできません。つまり、まず元夫に請求をしてくれと抗弁することもできません。また、元夫が自己破産をしていれば請求することは法律で禁止されてしまっているので、元妻に請求するしかありません。

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離婚しても、死亡をしても返済の義務というのはなくなりません。
さらに、夫婦で購入した家に現在住んで居いようがいまいが関係なく、住宅ローンが残っているのであれば、その返済の義務が生じます。

離婚をするさいに連帯保証人から外れる方法を

連帯保証人から外れたい場合は、

  • 債権者との話し合いで連帯保証人を抜ける
  • 元夫にローンの借り換えをしてもらう

この2つの方法があります。

債権者との話し合いで連帯保証人を抜ける

これは、合意解除という方法で、債権者と話し合いをして、連帯保証人をやめさせてもらう方法となります。しかしながら、債権者としては念のために連帯保証人をつけているのであり、単にお願いをされたから簡単に連帯保証人を辞めていいよと快諾してくれるわけではありません。

そのため、

  • 代わりの連帯保証人を用意する
  • 別の不動産を担保として差し出す

このような代替案を示す必要があります。

連帯保証人は外れますが、代わりにこの人を連帯保証人にしてください、そうすれば、債権者さんはお金を取りはぐれることはないでしょうと交渉をするわけです。

あくまでも、債権者との話し合いでの決定となりますので、代わりに連帯保証人や追加担保を用意したとしても、100%連帯保証人を外れることができるとは限りませんので注意が必要です。

元夫にローンの借り換えをしてもらう

合意解除が難しい場合、つまり、代わりの連帯保証人を見つけるのが難しい、交渉が難航する場合は、元夫にローンの組みなおしをしてもらうという方法もあります。

新しいローンに借り換えてもらい、その際に、別の連帯保証人をつけてもらう、もしくは連帯保証人なしのローンにしてもらうという方法です。

これも確実に実行できるというわけではなく、元夫の収入やその他の条件があり、ローンの借り換えをすることができない場合もあります。そのため、こちらも確実にできる方法というわけではありません。

当然ですが、住宅ローンを滞納している状態でローンの借り換えをするというのは、不可能といって過言ではありません。

離婚を検討するのであれば、事前に解決が望ましい

離婚時に共同名義の不動産をそのままにしていたのが原因で、数年後にトラブルになるケースというのがままあります。特に見受けられるケースとしては、住宅ローンを支払う約束をしたのにも関わらず、元夫が住宅ローンをいつの間にか滞納するというケースです。

住宅ローンが支払われると思って住宅に住んでいたら、ある日突然競売開始決定通知が届くというケースです。

口約束で住宅ローンの支払いをお願いしていると、滞納していても罰則がありませんので、滞納されたとしても打つ手がありません。元夫にも新しい家庭ができるなどして、自身が住んでいない住宅の住宅ローンを支払うのはばかばかしく思うのは仕方のないことです。

新しい暮らしが落ち着いてきて、新しい家庭ができた中で、元配偶者が原因の金銭トラブルというのは面白くありません。

離婚調停などを利用して、離婚をしておけば、滞納している住宅ローン分の差押えをすることが可能です。また、連帯保証人から外してもらう手続きをとる、住宅ローン自体を任意売却で処分して住宅ローンの残債務を減らしておくなどの手段があります。
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つまり、後々、トラブルになる契約や物件などは離婚時に処分しておいた方がいいでしょう。

連帯保証人にもっとも迷惑をかけないのは任意売却

債権者が債権を回収する基本は、返済可能な場所から回収することです。つまり、支払い可能な連帯保証人であれば、債権者が請求する対象を債務者から連帯保証人へと代えてしまいます。

前述しましたが、連帯保証人には拒否する権利がありません。債務者と同じように債務を独立して負うものです。そのため、債務者による住宅ローンの支払いが困難になった場合、債権者は連帯保証人へ返済を請求します。

連帯保証人へ迷惑をかけないためには、任意売却を諦めるべきではないかと考えるかもしれませんが、連帯保証人から回収をするどうかは債権者が決定することです。そして、任意売却の専門業者に依頼をすることで、債権者と交渉が可能です。

そのため、可能な限り連帯保証人に影響を及ぼさないように、任意売却を済ませることができます。

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任意売却後の残債務の支払いについても債務者と連帯保証人が納得できる条件での任意売却ができるかどうかは、債権者との交渉をする任意売却の専門業者の交渉力次第になります。

まとめ

住宅ローンを利用するときは、金融機関から連帯保証人を求められることがあります。これは、融資を依頼する人物の信用度が足りないので用意するように依頼されるのです。

そして、連帯保証人は通常の保証人とは異なり、抗弁権というものをもちません。

抗弁権とは、

  • 催告の抗弁権
  • 検索の抗弁権
  • 分別の利益

などがあります。つまり、主債務者へまずは債務を取立に行ってくれと債権者に言う権利を持っていないのです。債権者が支払えといえば、主債務者と同様に支払いの義務を連帯保証人は負います。

連帯保証人として問題になるケースは離婚をしたときです。離婚時に連帯保証人などの関係をすっきりさせておかなければ、ある日突然、競売開始の決定の通知が届くことがあります。

  • 代わりの連帯保証人を用意する
  • 別の不動産を担保として差し出す

といった方法もありますが、任意売却で住宅を売却してしまった方がいいかもしれません。

ただし、任意売却をする場合、連帯保証人から同意を得なければ任意売却をすることは難しくなります。

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