任意売却をすることができない10のケースとは?

任意売却をするためには債務者や債権者をはじめとして、住宅に関係者の合意の上に成り立つ債務整理の方法の1つであるといいでしょう。そのため、任意売却を成立させるためにはさまざまな条件があります。

さまざまな条件をクリアしなければ、債権者は任意売却を認めてくれない可能性があります。今回は債権者が任意売却を認めてくれないケースを紹介しますので参考にしてください。

任意売却ができないケースについて

 

任意売却ができないケースについては、

  1. 債務者本人、共有者全員の許可が得られない場合
  2. 保証人・連帯保証人・連帯債務者の承諾が得られない
  3. 内覧・内見希望者が来ても部屋の中を見せない
  4. 税金などの滞納額が債権者の許容範囲を超えている場合
  5. 本人もしくは共有者の意思確認ができない
  6. 債権者と債務者の関係が破たんしているとき
  7. 依頼主が途中で消息不明になってしまった場合
  8. 物件自体に問題があるケース
  9. 競売手続きが進み、時間的な猶予がない場合
  10. 債権者の同意が得られないとき

この10のケースがあります。

債務者本人、共有者全員の許可が得られない場合

不動産所有者本人が任意売却を望まない場合は、任意売却を当然ですがすることはできません。また、住宅の名義が任意売却を検討している債務者単独ではなく共有者がいるときは、共有者全員の許可が得られない場合も任意売却をすることができません。

共有者が大人数いる場合、1人でも同意がとれていないとなると、その1人が納得しない限り任意売却をすることはできません。共有者がいる場合は事前に全員の意思を確認しておくということは任意売却の必須条件になります。

住宅を売買するには印鑑や印鑑証明などが必要になります。そのため、承認・同意をしてもらわなければ話を進めることは不可能なのです。つまり、共有者が同意していないのに、同意を得たと嘘をついたといしても任意売却では適用されません。

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特に難しいのは夫婦共有名義だったものの離婚をした場合です。夫婦関係が悪化して当事者同士では話し合いをするのが困難となり、共有名義人の同意を得ることができないケースもあります。

そのような場合、任意売却を依頼している不動産業者のような第三者が間にはいり調整することで、不仲な夫婦間での話し合いがスムーズに進むことがあります。

さらに、共有名義人ではなくても、家族全員の同意はとっておくべきでしょう。

保証人・連帯保証人・連帯債務者の承諾が得られない

債権者によっては、保証会社以外の連帯保証人にも任意売却の承諾を求めることもあります。保証人・連帯保証人・連帯債務者の承諾が得られない場合、任意売却ができないケースがあります。

連帯保証人からの承諾を得ることが難しいというのであれば、事前に債権者と相談をしておく必要があります。債権者は連帯保証人を守らなければならないという法的に決まっていますので、その調整をしなければならないため、債権者と相談をしなければならないのです。

また、任意売却では、競売や自己破産ほどではあいませんが、連帯保証人にある程度の迷惑がかかります。とくに残債で負担をかけてしまう可能性があります。

実例として、連帯保証人には内緒に任意売却をしたという人も存在します。連帯保証人に言いにくいという、債務者の気持ちはわかりますが、前もって連帯保証人や債権者へ任意売却をすることを伝えておかなければ、後日揉めたり、多大な迷惑をかけたりする可能性が高くなります。

連帯保証人には債務負担があるので、同意なしで勝手に話を進めるというのは、モラル上大きな問題となります。

保証人・連帯保証人・連帯債務者の承諾が必要であるのにも関わらず連絡をしていない、連絡がとれないという場合、債権者は任意売却に応じてくれないことがあります。物件の購入希望者にしても、いつまで待っても連帯保証人の同意を得ることができないというのであれば、任意売却の物件購入をあきらめるといことになる可能性が高くなります。

返済能力の高い連帯保証人がいるのであれば、債権者としては住宅ローンの返済をそちらに請求することができるので、任意売却に応じる必要がなくなり、任意売却の話が難航する可能性が高くなります。

内覧・内見希望者が来ても部屋の中を見せない

自宅を売却したくても、購入希望者の内覧・内見の要求に応えることができなければ任意売却をするのは難しいでしょう。競売であれば物件の室内を見ることができなくても入札する方がいます。しかし、その分、売却価格が安く設定されています。

任意売却は一般の市場価格に近い額で売却されるわけですから、物件を実際に見ないで購入しようとするとは少ないといえるでしょう。

内覧・内見希望者が現れてもさまざまな理由をつけて物件を見せない方もいますが、これでは任意売却の話はまとまりにくくなります。依頼主が任意売却に非協力的であれば、購入希望者も買う気を失ってしまいます。

その結果として、時間切れとなり競売に発展するということもあります。

部屋が汚れている、散らかっているから他人にあまり見せたくないという人もいますが、任意売却を希望するのであれば、できるだけ部屋の片づけをしておくようにしましょう。

税金などの滞納額が債権者の許容範囲を超えている場合

税金やマンションの管理費、修繕積立金などの滞納額が、債権者の手に負えないほどの高額になっている場合も任意売却は難しくなります。

税金の延滞が続くと国や市区町村は住宅や自動車などの動産を差押さえします。税金の差押さえについては、給料をはじめとして、預貯金や生命保険の返戻金などにもおよびます。多額の税金の差押登記がはいっていると任意売却は困難になります。

役所から差押さえがついている場合、その差押登記を抹消し、不動産の市場価値を復旧できる前提でなければ任意売却をすることはできません。しかも、役所により差押登記抹消については温度差がありますが、税金を差押されてしまうと市区町村は簡単に差押を解除してくれません。

滞納額が多大であると、全額返済以外は一切解除に応じないという役所も存在します。

任意売却を成立させるにあたり、税金などの月々の支払いの優先順位も非常に大切になります。もっとも気を付けなければならないのは税金や健康保険などの社会保険料の滞納です。滞納しても最初はそれほど厳しく督促されませんが、それを放置していると突然差押登記をされてしまいます。そうなってしまうと、解除してもらうのは簡単ではありません。

税金などの差押えの解除は抵当権の解除以上に難しいものです。法律により税債権は抵当権より優先されます。そのため、任意売却が成立したとしても、税金などの滞納で差押されている場合は、抵当権の設定日より未払いの税金の法定納期限の方が1日でも早ければ、税務署が抵当権者に優先して、債権を回収することができます。

仮に自己破産をしたとしても、税金は非免責債権になりますので、免除されることはありません。税金の滞納分は納めない限り消えることはありません。

マンションの滞納管理費などは、控除経費ですべて控除できない場合、控除できない金額はマンションの買主に引き継がれることになります。買主がその事情を受け入れてくれなければ任意売却は成立しません。

本人もしくは共有者の意思確認ができない

任意売却できないケースの中で、債務者本人あるいは共有者の意思確認が取れないというものがあります。

実際に、購入希望者が現れて契約直前までいったとしても、不動産の名義人の意思確認ができないという例があります。債務者がかなり高齢や自分で自分の意思を伝えることができない場合も、これにあたります。

そうなると、任意売却は難しくなるといえるでしょう。

債権者と債務者の関係が破たんしているとき

任意売却は競売とは異なり、債権者と債務者の話し合いにより任意売却をするかしないかを決めます。そんため、双方の同意がなければ任意売却は成立しません。そのため、債務者と債権者の関係が良好であることも任意売却の成立には欠かすことのできない条件になります。

借入の返済などをめぐり、債務者に対して背信行為などをおこなうと貸借の関係が破たんしてしまい、債権者は任意売却を認めません。特に債権者と債務者の関係が修復不可能な感情にまで発展してしまっている場合、債権者の同意を得られないので任意売却をすることは難しくなるでしょう。

債権者との関係が良くなければ、仮に任意売却に応じてくれたとしても、自分の有利な条件で進めることは非常に困難になるでしょう。債権者からの連絡にも誠実に対応していかないと債権者は任意売却よりもメリットが少ないと思ってはいても、やむを得ず競売の手続きを始めてしまうことになります。

依頼主が途中で消息不明になってしまった場合

 

依頼主が任意売却の手続きの途中で消息不明になってしまった場合、当然のことですが任意売却をすることはできません。

実例として任意売却業者が依頼を受けて販売活動をおこなっていたとしても、物件には債務者以外の人間が居住していて、債務者が音信普通になってしまうケースが稀にあります。

当事者がいないのですから売却自体は困難であるといえます。業者が任意売却の手続きを勝手に進めることはできません。

依頼主が途中で消息不明になるというのは非常に稀なケースではありますが、任意売却を依頼したのに依頼主と長期間連絡がとれなくなるケースもあります。任意売却をスムーズに進めるには、いつでも連絡のとれる状態にしておくことが重要なのです。

しかしながら、所有者が行方不明でも任意売却をすることができるケースもあります。たとえば、住宅ローンを借りている配偶者の夫が行方不明になってしまい、ローン返済が困難になった妻が任意売却したいというケースです。

この場合、家庭裁判所にて不在者財産管理選任の申立てをおこないます。選任された不在者財産管理人は、不在者の財産を管理するほか、家庭裁判所の許可を得て不在者に代わり不動産の売却をおこなうことができます。しかし、手続き期間の問題や債権者の同意を要することを踏まえると、理論上はこの方法を利用することは可能ですが、現実的には難しいと考えるべきでしょう。

物件自体に問題があるケース

物件に問題がって任意売却ができないこともあります。一般的に「売却難物件」と呼ばれるものです。特に、再建築不可という建物を建ててはいけない土地に指定されている物件は売却できる可能性が低くなります。

再建築不可ではなくても、違法建築物、高圧線下物件、狭い道路に面している、築30年以上の物件、借地権が設定されている物件なども売却する上で不利となることが予想されます。

競売手続きが進み、時間的な猶予がない場合

任意売却は競売と同時におこなわれていますので、スピードが命になります。

売却期間というのは無制限ではありません。債権者は、債権回収のために長い時間をかけません。特に競売申し立てがされている場合、時間は限られてきます。

当然ですが、競売手続きが進行してしまって期間入札の直前に迫っていると、物理的に任意売却をすることは不可能となります。

開札期日前日までに債権者に競売申し立てを取り下げてもらうには、買主を見つけて、債権者が抵当権などを外すために社内的な稟議を通し、決済をおこなう必要があります。

それだけの時間的猶予がなければ物理的に任意売却は不可能です。

理論上は開札日の前日まで競売の取り下げは可能とされていますが、あくまで理論的な話しであり、現実的には期間入札が始まってしまった時点で債権者は競売の取り下げに応じなくなるでしょう。

債権者の同意が得られないとき

当たり前の話ですが、債権者の同意が得られないのであれば任意売却は成立しません。数字があわなければ債権者は任意売却には応じてくれません。

債権者が複数存在し、後順位の担保権者が抵当権の抹消に応じない場合もあります。最後まで応じない債権者はきわめて少数で、通常はハンコ代で手をつくことがほとんどです。しかし、あくまでも競売による債権回収にこだわる債権者も稀に存在します。

以前、自民党の議員立法で「不動産任意売却促進法案」を国家に提出しようとしたことがありました。この法案では、第1順位の抵当権者と債務者が事前合意して、買主が見つかっている場合に裁判所へ申立てることにより、第2順位以降の抵当権者は一定の要件を満たさない限り法律によってすべての抵当権が抹消されるというものです。

この法案については、結局成立しませんでした。金融機関などの反対が強かったのではなかろうかと分析しています。この法案が成立していれば、任意売却は現在よりも大幅に普及していたことは間違いないでしょう。

また、任意売却を一切認めていない債権者もいます。UR都市開発機構(旧公団)は基本的に任意売却を認めていません。URから直接割賦販売で住宅を購入して破たんした場合は競売で処理されます。ただし、URの支社によって対応が多少異なることがあります。

仮に任意売却を認めていたとしても、残債務額以上で売却できなければ、その差額を現金で支払うように要求されます。ただ、それができるくらいならばローン破たんをしないわけですから、UR都市開発機構の場合は任意売却をするのは難しいといって過言ではないでしょう。

また、複数の債権者が存在し、すべての債権者から期限の利益の喪失を受けてなけていれば、任意売却をすることはできません。任意売却の手続きをするためにはすべての債権者へ返済をしてはいけないのです。返済ができている限りにおいて、債権者は任意売却に応じる必要がないので任意売却の手続きを進めるためには返済をすべてやめる必要があります。

この時、住宅ローンに消えていた収入を滞納している税金の返済に充てておくといいでしょう。

まとめ

任意売却ができないケースについては、

  1. 債務者本人、共有者全員の許可が得られない場合
  2. 保証人・連帯保証人・連帯債務者の承諾が得られない
  3. 内覧・内見希望者が来ても部屋の中を見せない
  4. 税金などの滞納額が債権者の許容範囲を超えている場合
  5. 本人もしくは共有者の意思確認ができない
  6. 債権者と債務者の関係が破たんしているとき
  7. 依頼主が途中で消息不明になってしまった場合
  8. 物件自体に問題があるケース
  9. 競売手続きが進み、時間的な猶予がない場合
  10. 債権者の同意が得られないとき

この10のケースがあります。

特にややこしい問題となるのが、「税金などの滞納額が債権者の許容範囲を超えている場合」と「債権者と債務者の関係が破たんしているとき」この2つであるといえるでしょう。

税金の滞納が非常に面倒な問題になります。滞納している税金については、任意売却のために住宅ローン返済を止めるので、それで消えていた収入を税金の返済に充てるのがいいでしょう。

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