競売の開始から落札までの流れ。競売の手続きに入っても任意売却は可能なのか?

任意売却とよく比較をされる競売ですが、任意売却とは異なり債権者が裁判所に申立てることで、自動的に競売は進行していきます。

任意売却は競売が開札される前に終了させなければ、売却契約を結んだとしても競売で落札した人の方に住宅を安く売り渡すことになり、交渉する間もなく追い出されてしまいます。

今回は競売の流れを、

  • 競売開始が決まるまでの流れ
  • 競売開始から開札までの流れ
  • 売却(競売終了)から退去までの流れ
  • 退去しない場合

この4つの段階に分けて説明をします。

また、任意売却ができるまでの期間について、紹介をしていきます。はたして、競売の手続に入っても任意売却をすることができるのでしょうか。

競売開始が決まるまでの流れ

住宅ローンの滞納

競売になる場合、住宅ローンを3ヶ月~6ヶ月間滞納をした場合にとられる手続です。

3ヵ月~6ヶ月間という期間は、債権者である金融機関により異なります。最短で3ヶ月、最長で6ヶ月間は督促通知というものが来ます。

督促通知とは、

  • ローン返済についてのご連絡
  • 督促状
  • 最終通告書

などとタイトルは異なりますが、住宅ローンの返済を要求する文書です。

 

このような書類を無視して、なぜ住宅ローンの支払を中断しているのかを答えなければ、金融機関の担当者からの電話、自宅訪問というものがおこなわれます。

また、3ヶ月~6ヶ月間連続して住宅ローンを滞納していると、信用情報機関では金融事故として処理されますので、以降 5年間は新規で住宅ローンを組んだり、クレジットカードを作ったり、カードローン(キャッシング)の審査に通らなくなる、ブラック状態になります。

期限の利益の喪失

ローン滞納中に、債権者から「期限の利益の喪失」を通知する書類が送られてきます。

 

では、「期限の利益」とは何か?といいますと、住宅ローンを締結するときに締結する金銭消費貸借契約の期間中、債務者は住宅ローンの返済日までに決められた金額を返済することにより、残りの借入金は、期限が到来するまで返済をする必要が無い、というお金を借りた債務者にとっては当然の権利です。

しかし、金銭消費貸借契約には必ず「期限の利益の喪失」という条項が存在しています。クレジットカードなどにも存在していますので、一度探してみてはいかがでしょうか。

期限の利益の喪失ですが、債務者が住宅ローンの滞納や自己破産などおこなうことにより、返済が止まった場合、債務者にいつまでも分割返済の利益を与えても意味がありません。これ以上待っても支払不能と債権者が判断することで、期限の利益は喪失されます。

期限の利益の喪失を受けた場合、債務者はただちに住宅ローン全額を債権者へ返済しなければならなくなります。

たとえば、住宅金融支援機構の場合は住宅ローン初回滞納時より6ヶ月で、期限の利益を喪失することになります。この期限の利益の喪失に対する通知というのが債権者からの最後通牒であり、これを無視すると、債務者は本格的に競売の手続きを始めます。

なお、債務者が自己破産をした場合は直ちに債権者は期限の利益の喪失を通知します。

代位弁済・一括請求

「期限の利益の喪失」をしますと、債務者は本来住宅ローンを金融機関へ一括返済しなければなりません。ただ、それは不可能なので住宅ローン保証会社が代わりに返済をしました、という代位弁済にかんする通知が送られてきます。

 

ローン保証会社は住宅ローンの融資を受ける際に金融機関との間で締結する金銭消費賃貸契約とは別に、保証会社もしくは保証協会との間にて「保証委託契約」というものを締結します。

そして、住宅ローンを融資してもらうときには、金融機関から債務者へおこなう融資に対する保証を保証会社へ依頼をすることが必須条件となっているはずです。

この保障契約がありますので、債務者が住宅ローンの返済を滞納し、期限の利益の喪失をした場合、保証会社が債務者に代わり金融機関へ借入金残高の全額を一括で支払います。このことを「代位弁済」と呼びます。

代位弁済をしてもらったので、もう住宅ローンが消えてなくなった!というわけにはいかず、住宅ローンの債権については、金融機関から保証会社等へ譲渡をされます。

つまり、ローン保証会社が金融機関へ代位弁済をした場合、債務者へローン保証会社やローン保証会社から委託を受けたサービサー(債権回収会社)から、代位弁済をした残債務の一括請求をされます。

もちろん、一括請求が不可能なので、ローン保証会社は地方裁判所へ「不動産差押え」の申立てをします。

競売開始から開札までの流れ

不動産競売開始決定

ローン保証会社などの債権者は、地方裁判所へ「不動産差押え」の申立てをします。この申立てが受理されますと、債務者のもとへ「不動産競売開始決定」の通知書が特別送達にて送られてきます。

 

不動産競売開始決定ですが、債権者の権利である抵当権などの担保権の実行により不動産差押えが開始されるということです。つまり、競売手続きが開始されるというものです。

この不動産競売開始決定が行なわれた時点で、任意売却の専門業者へ慌てて相談をしにいくというケースが多いようです。

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住宅ローンの滞納を始めた時点で、任意売却の専門業者へ相談をしにいくのが理想的ではありますが、不動産競売開始決定の通知書が来てから相談に行っても競売が終了、入札期日までには、まだ4~6ヶ月程度の猶予期間がありますので、余裕がある時期であるといえます。

ただ、任意売却については早く動いた方がより高く、住宅を売却することができますので、任意売却は先手先手で動いた方が、損が少なくなります。

現況調査など

債権者により競売の申立てが行なわれると、後は自動的に競売の手続きは進行していきます。

管轄する裁判所の執行間の人数に左右されますが、不動産競売開始決定の通知が来てから1~3ヶ月後には、「現況調査」がおこなわれます。

現況調査とは、裁判所の裁判官の調査命令を受けた執行官と不動産鑑定士(評価人)が競売不動産の調査をするために訪問してきます。

執行官は、競売不動産の物件調査については国が認めた強い強制力を持っていますので、治外法権の大使館やものがあふれて物理的に入ることのできない部屋でない限り、執行官の室内への入出を拒むことはできません。

仮に鍵をかけたうえで居留守を使ったとしても執行官は解錠技術者(鍵屋)へ鍵を開けるように命令して、鍵を開けて強制的に入室をしてきます。もちろん、執行官の入室を邪魔しようとした場合、もしくは妨害が予想される場合は警察官により公務執行妨害の対象として排除されます。

そして、室内に入ったうえで調査や写真の撮影、関係者への聴取をおこないます。

執行官と不動産鑑定士は、現地調査や法務局や役所などへの調査にもとづいて、

  • 現況調査報告書
  • 評価書

これらを作成します。

現況調査報告書

現況調査報告書は、執行官が作成する調査資料です。

主に調査時点での占有者の状況・権利関係がわかる書類のことです。

評価書

不動産鑑定士(評価人)が作成する資料で、

  • 不動産の概要
  • 競売における資産的価値

このようなことが書かれています。

不動産の価値の根拠となるものであり、裁判所は評価書をもとにして、売却基準価格や入札可能価格を判断します。

物件明細書の作成

物件明細書は裁判所書記官が作成する書類になり、現況調査報告書と評価書をもとにして、民事執行法62条・民事執行規則31条により、買受人が引き受けるだろう権利関係などの概要など、競売にかんする一定の情報を記載して備え置かれた書類になります。
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たとえば、買受人が引き受けなければならない、賃貸権などの権利、土地や建物だけを買受た場合、その建物のために地上権が成立するかどうかなどです。
不動産業界では、

  1. 現況調査報告書
  2. 評価書
  3. 物件明細書

これらは、3点セットと呼ばれており、特に物件明細書は3点セットの中では一番重要な核となる書類になります。

売却基準価額の決定

裁判所は、評価人の評価にもとづき、住宅の売却価額の基準となるべき売却価額を定めます。入札金額の基準にはなりますが、最低ラインではありません。また、競売不動産は一般市場よりも売却が難しいという理由で、競売特有の減価率が採用されています。

この基準となるべき売却価額というのが任意売却をする上では、債権者の同意を得るための金額の目安となります。

ちなみに、期間入札の際に必要となる保証金は一般的に売却基準価額の2割となっています。場合によっては、2割以上になることもありますが、一般的には売却基準価額の2割です。

配当要求終期の公告

配当要求終期の公告とは、不動産競売開始決定がなされた住宅や債務者の名前が裁判所にて公告されます。

競売を申立てた債権者以外にも関係のある債権(無担保債権など)を持っている人がいれば、裁判所に申して出てくださいと告知するものです。

配当要求終期の公告は裁判所に掲示されますので、これを見るのは債権者だけではありません。

競売にかけられた住宅へ不動産業者の訪問や電話、ダイレクトメールなどが送られてきますが、その原因が配当要求終期の公告を参考にしています。不動産業者以外にも宗教団体、よくわからないコンサルタント業者、闇金からの連絡も来るようです。

売却実施処分

競売の期間入札の通知書というものが届きます。これには、いつ期間入札が始まるのか、開札日はいつなのかなどの情報がかかれています。

この競売の期間入札の通知書が届くと競売が実際に開始されるまで、あと少しという段階です。

期間入札にかけられる競売不動産についての情報は、入札期間が始まる期日の2週間前までには、裁判所の掲示板・庁舎内の掲示板で期間入札の公告が出されます。

また、住宅の情報が官報という国が発行する公報に載ったり、インターネットサイトである「不動産競売物件情報サイト(BIT)」に、個人情報の保護の観点から人物名など一部は黒塗りにされてわからないようにはされていますが、部屋の写真や間取りなどが全面的に無料公開されます。もちろんダウンロードも可能です。

さらに、前述した現況調査報告書、評価書、物件明細書なども公開されます。インターネット以外にも、広く一般から競売希望者を集めるために、管轄の裁判所の閲覧室などに3点セットは設置され、入札希望者が自由に閲覧することができます。

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ここから、期間入札の開始まで約2ヶ月程度の期間があります。任意売却をしても高額での売却などは難しくなりますが、まだ2ヶ月間ありますので任意売却をするのであれば最後のチャンスです。

期間入札の開始

売却実施処分の公告から約1ヶ月後に競売の期間入札が開始されます。

東京地方裁判所の場合ですが、期間入札は1週間です。

入札の金額ですが、特別な事情が無い限り、売却基準価額ではなく買受可能価額以上の金額であれば入札に参加することができます。

買受可能価額というのは、売却基準価額の80%の金額になり、この金額以上であれば入札が参加が認められます。ヤフオクの最低落札価格といったイメージです。買受可能価額も公告されます。
以前は最低売却価額というものがあり売却基準価額以上でなければ入札ができませんでしたが、平成17年(2005年)3月の改正民事執行法の施行にともない、競売の迅速化を図るために売却基準価格より20%安い買受可能価格が作られました。

競売が市場価格の60%~70%程度の価格になってしまう原因は、買受可能価額で入札をおこなうからです。

開札期日

期間入札の開始から1週間後が開札期日です。

開札期日において執行官は入札期間中に入札した人の中からもっとも高額な入札金額の申し出をおこなった者を「最高買受申出人」として認めます。

期間入札中に入札者が居ない物件については、「特別売却」という手法で買受人を集めます。これは、買受可能価格以上の金額を入札すれば早いもの勝ちで欲しい人に売却するという方法です。

東京地方裁判所の場合は、開札期日翌日より特別売却期間が始まります。

理論上は開札期日の前日までであれば、債権者は競売を取り下げることが可能です。あくまでも法律上のことであり、債権者が開札期日前日に競売を取り下げるのは現実的には不可能です。

つまり、入札期日が到来した時点で任意売却は不可能となり、競売しか選択肢がなくなります。

売却(競売終了)から退去までの流れ


競売が終了して、買受人が入金を済ませてしまうと、その時点で住宅の所有権が買受人のものになり、不法占拠している状態になります。

もちろん、他人の所有物になっているのですから、住宅を任意売却をすることもできません。

売却許可決定期日・売却許可決定

売却許可決定期日は、裁判所執行官が定めた最高価買受申出人に対して、不動産の売却を許可するかどうか審査をした上、売却許可決定もしくは不許可決定を下す裁判手続きの期日になります。

 

代金納付期限日=所有権移転日

売却許可決定が確定したら、買受人に対して代金の支払いを命じる通知が裁判所から特別送達で届きます。

これを「代金納付期限通知書」といいます。

代金納付期限通知書は買受人にのみ送付され、現在住宅を所有している債務者へは届きません。

東京地方裁判所の場合では、代金納付期限通知書が届いてから1ヶ月後が代金納付期日となっています。

買受人が代金納付期限日までに落札金額から保証金を差し引いた額と登録免許税等の代金を納付すると、所有権移転登記をおこない、住宅の所有権は以前の所有者から買受人へ移動します。

これを持って、住宅は債務者の所有物ではなくなり、以降は不法占拠している状態になってしまいます。

配当

競売による不動産の売却代金を裁判所が各債権者に配当をします。

この日を配当期日と呼びます。

債務者には「配当期日呼出状」が裁判所から特別送達で送られてきます。

 

呼出状が来たとしても実際に裁判所へ出頭する必要はありません。

住宅からの退去

他人の住宅を不法占拠している状態なので明け渡しをしなければなりません。退去日はケースバイケースですが、必ず退去をしなければなりません。

この際、引っ越し料金や立ち退き料金は一切支払われません。支払う義務が法的には無いからです。以前は立ち退き料が出るケースもありましたが、現在では強制執行をおこなうことで一切立ち退き料を支払わず追い出すことが可能です。

住宅から退去をしない場合

引渡命令申立て

任意で引渡命令が実行されない場合に、法的な手段で引渡しを受けることができます。

その法的手段の最初が「不動産引渡命令の申立て」です。

 

不動産引渡命令は裁判手続きの中では迅速に取得できる方法になります。

  1. 引渡命令の発令
  2. 引渡命令送達
  3. 引渡命令確定
この順番に手続が進み、命令に従い住宅を明け渡す必要があります。

執行官への強制執行の申立て

不動産引渡命令が行なわれて居座り続けると、強制執行が行なわれます。

強制執行の申立てをおこなったとしても即日強制執行が行なわれるわけではありません。段階的に強制執行が行なわれます。

執行官との面談

まずは、執行官との買受人が面談をします。面談後2週間~3週間程度以内に執行官が矯正執行の予告をするために、元所有者の債務者が不法占拠している住宅へ向かいます。

これを、強制執行の催告といいます。

催告の際は、執行官の他に

  • 解錠技術者
  • 強制執行業者
  • 立会人

が同行をします。

そして、居留守や不在の場合でも鍵を解錠して室内に入り、その場で実際に強制執行をおこなう期日を決定します。

断行

催告の日からおよそ1ヶ月以内に断行日というものを決めます

断行期日までに不法占拠している債務者が住宅の明け渡しをしなければ、実際に強制執行が断行されます。

強制的に不法占拠している債務者は排除され、買受人に不動産の引渡が行なわれます。また、室内にある家財道具一式も運びだされ倉庫に1ヶ月間保管され、その間に債務者が持っていかなければ売却処分することになります。

まとめ

競売の流れについて紹介をしました。

任意売却は、売却実勢処分(期限入札の通知)が届くまででしたら、十分に可能です。しかし、期間入札開始の段階になってしまいますと、法律上、開札日前日まででしたら競売を取り下げることが可能ですが、実際問題取り下げるのは不可能です。

競売については、迅速にそして確実に売却をするために住宅を安く販売されてしまいますので、なるべくは任意売却にして、競売を避けるようにした方がお得でいいでしょう。

concierge
まだ時間があると考えるのではなく、早め早めに任意売却の手続きを済ませた方が、面倒くさくなくていいと考えます。

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