【解説】住宅ローンが払えない場合に利用したい任意整理とは?

住宅ローンを支払うことができなくなった場合、とることができる手段は限られてきます。その中の手段のひとつに債務整理があります。債務整理は大きくわけると4つの種類があり、借金を減額することができるほか、借金を帳消しにする方法もあります。

債務整理の中で、任意整理というものがありますので、今回は任意整理について紹介をします。

住宅ローンを支払えない

住宅ローンを支払うことができなくなる原因というのはさまざまあります。近年では年功序列が破たんしていますので、会社に勤めていれば必ず給料が右肩あがりで増額されてはいかなくなっています。

そのため、まじめに働いていても住宅ローンの支払いが困難になるケースというのが増えています。

住宅ローンは滞納をはじめてしまうと、3ヶ月~6ヶ月以内に確実に期限の利益を喪失するでしょう。期限の利益とは、分割払いを認める債務者の利益です。期限の利益を喪失すると、住宅ローンを一括で返済しなければならなくなります。

通常、住宅ローンを一括で返済することは不可能ですから差押登記をされ、競売にかけられてしまいます。競売にかけられてしまったら、6ヶ月~1年程度の準備期間を置いて強制的に住宅を売却されてしまうのです。

住宅ローンが支払えない原因はさまざまですが、住宅ローン以外にも多額の借入をしているのであれば、債務整理をすることで、月々の返済額を減額させることができます。結果、住宅ローンの支払いをスムーズに続けることができる可能性が高まるといえるでしょう。

債務整理について

債務整理については、4種類の債務整理があります。この中で、住宅を守ることができる債務整理は3種類です。

つまり、

  • 任意整理
  • 特定調停
  • 民事再生(個人再生)

この3つの債務整理が住宅を守りながら、借金を減額させることのできるものとなります。

このほかに、自己破産がありますが、自己破産を選択してしまった場合、借金は非免責債務を除き帳消しになりますが、住宅も売却しなければならなくなります。

仮に自己破産をするのであれば、任意売却をして住宅を売却してからおこなった方がいいでしょう。

なぜ、任意売却をしてから自己破産をした方がいいのかといいますと、住宅という不動産を持っている場合、住宅ローンの残債務額と住宅価値が1.5倍以上ない限り、管財事件という自己破産の手続きになります。

管財事件の場合、裁判所へ納める予納金の額が最低でも50万円はします。地方裁判所によっては少額管財という制度を利用することができるのですが、必ず弁護士に依頼をしていないと、この少額管財は利用することができません。

裁判所へ納める予納金を集めることができないのであれば、自己破産の手続きを進めることができないのです。なおかつ、管財事件は最低でも6ヶ月間は破産者として制限を受けることになります。破産者になった場合、警備員をはじめとした複数の仕事に就くことができませんし、資格なども制限をされてしまいます。

管財事件は、この破産者でいる期間が他の手続きと比較をして長いので、大きなデメリットとなるのです。

住宅ローンが原因で債務整理を考えているのであれば、前述した「任意整理」「特定調停」「民事再生(個人再生)」の3種類が現実的です。

特定調停については、現在ではあまり利用されておらず、利用しても債権者に有利な条件で調停調書を作られてしまう可能性があります。そして、調停調書は公文書になりますので、調停調書どおりに返済をおこなわないのであれば、債権者は容易に強制執行にて給与の差押えをしてしまいます。

つまり、債務整理を検討しているのであれば、任意整理もしくは民事再生(個人再生)の利用が現実的な運用であると言えるでしょう。

任意整理について

任意整理は、裁判所などを利用せずに債権者と私的な和解交渉をおこない債務整理をする方法であり、債務整理の中でもっとも多く利用されている方法となります。そのため、債務整理=任意整理と考えられている節もあります。

任意整理は、法律にのっとった手続きではありません。債権者と債務者が話し合いをして、妥協点を探るものです。

また、任意整理のひとつの方法に任意売却があるのです。

債務整理にておこなうことができるのは、

  • リスケジュール
  • 将来利息のカット
  • 遅延損害金の免除

この3つです。

任意整理をおこなう場合、弁護士や司法書士、そして任意売却の会社などが助言、補助をおこない進めていくというのが現実的です。

なぜなら、消費者金融業者などの貸金業者の多くは過払い金返済ブームの影響により多くの貸金業者が倒産に追い込まれています。結果、任意整理の交渉に応じないというケースが増えているのです。そのため、一般人が知識をつけて消費者金融業者などの貸金業者と交渉をしても、煙に巻かれてしまうだけで、借金の減額効果を望むことはできません。

また、任意整理そのものは、前述したように利息カットとリスケジュールにより月々の返済額の軽減を目指すものであり、借金の元本の減額はありません。元本の減額まで考えるのであれば、別の債務整理方法を選択するべきでしょう。

しかし、2010年以前から長期にわたり貸金業者からお金を借りている場合、過払い金が発生している可能性があります。過払い金というのは貸金業者に過払いした利息になります。

本来、貸金業者は利息制限法により利息が決められているのですが、出資法という別の法律を利用して利息制限法よりも高額な利息でお金を貸出していました。

利息制限法と出資法の間の金利がグレーゾーン金利です。グレーゾーン金利でお金を貸すのは違法でしたが罰則がなかったので、グレーゾーン金利にて貸金業者はお金を貸していたのです。

現在グレーゾーン金利は廃止され、利息制限法にてお金を貸しだしているのですが、グレーゾーン金利でお金を借りた場合、利息を払いすぎていることになります。

金利引き直し計算をすることで、払いすぎた利息の有無を確認し、払いすぎた利息がある場合、それをすでに返済したものとして元本の減額に充てます。これを利用することで任意整理でも元本の減額をすることは可能です。

しかし、2017年現在において金利引き直し計算をして過払い金が発生するというのは極めて稀ですから、任意整理を利用したとしても元本の減額を期待することはできません。

リスケジュール

任意整理のリスケジュールですが、最大で3年間36払い延長が一般的です。債権者が同意をすれば5年60回払いまで応じてくれます。リスケジュールをすることにより、月々の返済額を減額することができます。

しかし、リスケジュールをするということは、36回分余計に支払をしなければならないので、総支払額は増えてしまい、住宅ローンを圧迫するのではないのだろうかと考える方もいるかもしれません。

そのため、将来利息のカットがあります。

将来利息のカット

将来利息のカットは、将来払うことになる利息のカットをします。リスケジュールをした場合、返済期間が長くなりますが、将来利息のカットをすることで36回払い分の利息を支払わずに済みます。

つまり、元本のみの返済だけになりますので、非常にメリットがあるといえます。

リスケジュールと将来利息のカットを合わせることにより、月々の借金の返済を大幅に減額することが可能です。

遅延損害金の免除

遅延損害金とは、借金の支払がおくれたときに発生するお金です。任意整理をすることで遅延損害金を免除してもらえる可能性があります。

任意整理をするメリット

任意整理をするメリットですが、任意で債権者を選ぶことができます。

自己破産や民事再生(個人再生)の場合は、破産法、民事再生法という法律にのっとり手続きを進めるものですから、債権者を平等に扱わなければなりません。つまり、すべての債権者を平等に扱うという観点から、住宅ローンを融資している債権者をも対象に債務整理をしてしまいます。

そのため、たとえば自己破産の場合、自己破産をした瞬間に期限の利益を喪失してしまい、競売もしくは任意売却をしなければならなくなります。

しかし、任意整理は法律にのっとりおこなわれるものではなくあくまでも私的な和解交渉ですから、特定の債権者とは債務整理の交渉をして、住宅ローンの債権者とは和解交渉をしないという方法を利用することができるのです。住宅ローンの債権者とは和解交渉をしませんので、期限の利益を喪失することはなく、任意整理をするのであれば任意売却や競売をする必要はありません。

また、弁護士への依頼料がその他の債務整理よりも圧倒的に安く、裁判所を利用しないのでプライバシーの面から考えても周囲に任意整理をしている事実がばれるということはありません。

仮に、民事再生(個人再生)や自己破産を利用した場合、国が発行する官報という広報紙に名前が載ることになります。しかし、任意整理は裁判所を利用していませんので、官報に名前が載るということはないのです。

任意整理を利用することで、自宅を任意売却することなく、そのまま住み続けることができる可能性が高くなります。

また、任意整理をしても連帯保証人への影響は少ないというのもメリットであるといえます。民事再生(個人再生)や自己破産をした場合、債務整理をした本人の借金は減額されたり免除されたりしますが、減額された分、免除された分が連帯保証人へ請求されます。

任意整理の場合は利用しても借金の元本を減らす債務整理ではありませんので、きちんと返済をしていれば、連帯保証人をはじめ、保証人へ影響を与えることはありません。

場合によっては、連帯保証人と連名で任意整理をすることで、支払が滞っても影響を少なくさせることができます。

任意整理のデメリット

任意整理とは、あくまでも債権者と和解交渉をすることにより、和解案に同意をしてもらわなければ、任意整理をすることはできません。しかしながら、債権者は和解交渉に応じる法的な必要性はありません。

和解交渉に応じず、自己破産をされてしまった場合、借金を回収することができなくなりますので、任意整理の和解交渉に応じてくれる可能性は0ではありません。しかし、貸金業者である債権者も経営が厳しいので、リスケジュールには応じても将来利息のカットには応じないなどのケースがあります。

つまり、債権者次第で借金の減額効果というのが変わってくるわけです。そして、債権者によっては和解交渉にすら応じないケースもあるわけです。

任意整理はもっとも利用しやすい債務整理ではありますが、その他の債務整理の方法と比較をすると借金の減額幅が少ないというデメリットもあります。

前述をしましたが、過払い金が発生していない限り、元本の減額はありません。そして、グレーゾーン金利の廃止にともない過払い金を利用して元本を減額するという手段を利用が難しくなっています。

また任意整理は、3年~5年以内に必ず完済をする見込みがない限り任意整理を利用することはできません。そのためきちんとした収入があることが、任意整理を利用するための大前提となります。

収入が少なくて3年~5年のリスケジュールをしても返済をすることができないのであれば、任意整理をしても意味がありません。この場合、借金の減額を考えるのであれば、任意整理よりも債務整理の減額効果がある民事再生(個人再生)を利用するべきであると考えます。

また、任意整理をすると必ず、個人信用情報機関の個人信用情報に事故記録が残ります。事故記録が残ると5年間は、新規で借入やローン、クレジットカードの作成をすることができなくなります。

ただし、任意整理を利用せずに任意売却を利用した場合も、期限の利益を喪失するまで住宅ローンを滞納しなければなりませんので、任意整理と同じく5年間はブラックリストに登録されます。

ですが、任意整理の場合、リスケジュールをしている3年間も新規で借入やローン、クレジットカードの作成ができなくなりますので、通算で8年間はブラックリストに登録されるわけです。

つまり、任意整理は任意売却よりもブラックリストに登録される期間が長くなります。

また、そもそもの話ですが、任意整理は住宅ローン以外の借金が多い場合に利用することができるものです。そのため、住宅ローンのみしか債務がない状態で任意整理をしても意味がありません。

そのため、住宅ローン以外の債務のせいで住宅ローンの返済が困難になっている状態でしか、任意整理を利用しても意味がないということになります。

任意売却をするか任意整理をするか

任意売却をするか、任意整理をするか、その判断基準ですが住宅ローン以外の借金がありそれの月々の返済額のせいで住宅ローンの返済が困難になっている場合には任意整理を検討してもいいでしょう。

債務が住宅ローンのみであるのならば、任意整理をすると期限の利益の喪失をしてしまう可能性があります。

任意整理は、債務整理の中ではもっとも効力の弱いものです。そのため、任意整理をしても意味がない場合でも、民事再生(個人再生)の利用を検討してみるという手段があります。

また、任意売却をした場合、残債務が残ります。残債務が残っている場合、任意整理をすることで、月々の返済が楽になる可能性があります。また、連帯保証人へ迷惑をかけずに済む可能性もあるわけです。

まとめ

住宅ローンの支払いをすることができない場合にとることのできる手段として、任意整理があります。任意整理は債務整理のひとつであり、任意売却は任意整理のひとつの手段となります。

任意整理は債権者と債務者が任意で話し合いをすることで、和解を目指す債務整理の方法のひとつです。私的な話し合いになりますので、債権者が和解交渉に応じない可能性があります。

任意整理でおこなうことができるのは、

  • リスケジュール
  • 将来利息のカット
  • 遅延損害金の免除

これらがあります。

つまり、任意整理をすることで、借金の返済期間を3年~5年間延長することができ、将来発生する利息をカットし、元本のみの返済をしていくのが任意整理のだいごみです。また、特定の債権者とのみ債務整理の交渉をすることができるので、住宅ローンを融資している債権者を任意整理の対象からはずすことで、住宅ローンを守りながら、その他の借金を減額させることができるわけです。

任意整理のデメリットとして、任意整理をすることで5年間ブラックリストに登録されます。しかし、登録されるのは完済したのちに登録されますので任意整理の場合は8年間ブラックリストに登録されることになります。

また、債権者が交渉に応じないことがありますので、その場合は法的な効力のある民事再生(個人再生)の利用を検討していきましょう。柔軟な対策が必要です。

 

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です