住宅ローンが払えない、もしくは将来的に払うのが厳しくなる状況が見込まれる場合、とれる手段は複数あります。しかし、いざ住宅ローンの支払いが困難な状況になってしまうと、その複数ある手段の中から悪手を選ぶ可能性が高くなります。
そのため、今回は住宅ローンが支払うことができない状態となったときにとるべき方法を紹介します。この情報を知っているか知らないかで、損をするかしないか、大きく異なってきます。
目次
住宅ローンが支払えない理由
住宅ローンといいますと聞こえはいいのですが、住宅ローンとは借金のことです。借金は必ず利子をつけて融資をしてくれた債権者である金融機関へ返済をしなければなりません。
そのため、住宅ローンの返済をすることができなければ、ペナルティが当然発生します。
しかし、きちんと検討をして融資を受けた身の丈にあった住宅ローンであれば返済することができないというケースは少なくなります。つまり、住宅ローンが払えなくなるにはなんらかの理由があります。
会社の倒産・リストラ・病気などで収入減
住宅ローンの返済が困難になり相談を受けるときに、もっとも多くあげられるものが会社の倒産やリストラ、病気などが原因で働けないことが原因で収入の減少。その結果として支払い不能となることです。
年齢とともに給料の額が増える年功序列の会社が定年まで社員を雇用して守る終身雇用制が日本独自の会社制度でした。しかし、現在は成果主義を掲げる企業が多くなり、また、国内外の複数の要因による不景気、近年ではリーマンショックなどがありました。
また、退職金を利用して返済を考えていたものの退職金の運用方法の変更により、退職金が一括で支払われない、退職金の運用の失敗により支払額が大きく目減りしてしまい、想定していた額の退職金が支給されないこともあります。また会社の倒産により退職金がゼロ円ということもあります。
そのため、会社をすでに定年退職をした高齢者の方が住宅ローンの返済に窮して、相談をする事例も年々増えています。
無理な資金計画が鯨飲の住宅ローンの滞納
住宅ローンを借りる際、借りた方の年収に対するローン返済金額の適正な割合は、
であると言われています。
実際にお金を借りる際の返済比率は、金融機関にもよりますが30~35%程度です。それを超える額の融資は難しくなります。
日本人は「不動産の価値は確実に上昇し、価値が下落することはない」という不動産神話があり、バブルの頃は返済比率の上限を超えた貸付を行っていたケースが往々にしてあります。
このバブル時代に行われていた、旧住宅金融公庫(現住宅金支援機構)がおこなっていた「ゆとりローン」も返済不可能になる原因の一つとなっています。当初5年間は低金利で融資を受けることができるものの、それ以降は5年目までの低金利分を回収するように6年目と11年目にステップアップで返済金額が増えていき、11年目以降は当初支払っていた金額の倍程度まで返済金額が増えるという、年功序列、終身雇用制度を前提にしたローン商品を販売していました。
当初5年目までは金利もある程度低く、ゆとりをもって生活ができますが、それ以降は金利が高くなり、昇給も望めず、ゆとりが全くなくなる人が続出しました。
その結果、ゆとりローンは国家的な詐欺といわれ2000年に廃止されましたが、20年30年という長期ローンであるため、廃止以降も高い金利でローンを支払い続ける必要があり、ゆとりローンの利用やの多くが自己破産を選択する結果にもなっています。
また、返済比率ギリギリでお金を借りた結果、会社倒産やリストラによる失業、減給がなくても結婚や子供ができたなどのライフスタイルの変化により、生活費に回す額が多くなってしまい、返済が困難になるケースもあります。
ギャンブル・浪費癖によるローン滞納
そこまで多い原因ではありませんが、住宅の所有者がギャンブルや浪費が原因で住宅ローンの返済に困ってしまうというものがあります。これは住宅の所有者本人だけではなく、その配偶者や家族がギャンブルや浪費狂であり、住宅ローンのために積み立てていたお金まで手を付けてしまうケースもあります。
離婚をきっかけとする住宅ローンの滞納
離婚が原因で住宅ローンの返済が困難になるというケースが近年では増加傾向にあります。
財産分与をおこない、妻に住宅の所有権をあたえ、夫が返済を続けるというケースです。このような場合、夫が再婚などを機に住宅ローンの返済が滞りがちになり、所有者である妻に催促や督促がくるケースです。
また、夫婦共働きの家庭が離婚をすれば、それだけで収入は半減してしまいますので、返済が困難になります。妻が連帯保証人の場合、夫が住宅ローンの返済が困難になり自己破産などをしてしまうと、連帯保証人である妻のもとへ請求が来ます。
住宅ローンが払えないときには?
住宅ローンが払えないときに、とれる手段はどのような手段があるのでしょうか?
住宅ローンの返済が困難であるという場合、真っ先に思いつくのか生活費を削り、その分を住宅ローンの返済に回すという方法です。原因がはっきりしているのであれば、不必要な生活費を削ればいいのです。ただ、子供が増えた、収入が減少したという場合では、この生活費を削るというのは、少々、現実的ではないかもしれません。
次に収入を増やすですが、収入を簡単に増やせるのであれば、住宅ローンの返済に悩む方はそうそう現れるものではありません。そのため、収入を増やすというのも現実的な対策ではありません。
- 金融機関に相談してリスケ
- 個人再生
- 任意売却
- 競売
この4種類の手段があります。
1.金融機関に相談してリスケ
金融機関に相談するのが、住宅ローンの返済に困った場合、まず真っ先に行うべき行動であるといえます。
生活費の見直しをしても住宅ローンの返済が困難であるのなら、とるべき手段でしょう。
- 毎月の返済額の変更
- 返済期間の延長
- ボーナス返済の減額
といったことを交渉により実現することができる可能性があります。
どのようにしたら、返済を続けることができるのかということを金融機関で相談をするわけです。金融機関も債務者が返済を続けてくれている限りにおいて、さまざまな代替案を出してくれることもあります。
2.債務整理
金融機関が代替案として提出する方法の一つが個人再生です。
個人再生は、債務整理の一つの方法ですが、住宅ローン特則というものがあります。
住宅ローンを守り他の借金額を原則5分の1まで圧縮することができる、という債務整理の方法です。ですが、住宅ローン以外に借金がないのであれば、個人再生を利用しても意味がないのでは? と思うかもしれません。
個人再生には、住宅ローンの返済期間のリスケジュールまでできます。原則は、契約どおり返済をするべきですが、個人再生は民事再生法の規定に基づいて返済期間を最大で10年間延長が可能です。
10年間延長するために、住宅ローン特則の「最終弁済期間延長型」と呼ばれるものであり、これは住宅ローンの返済期間を最大10年間、延長できます。
しかも、金融機関がリスケジュールに応じなくても、個人再生を利用してしまえば、強制的にリスケジュールに応じさられるのです。
ただし、満70歳を超えてしまうと利用することができません。最長でも70歳までには返済を完了しなければならない計画となります。
また、個人再生には「完本一部据置型」というものがあります。これは、最終弁済期延長型をさらに一歩推し進めたものであり、債務者の負担を軽減することが可能な返済方式になります。
個人再生の再生期間中である3~5年間のあいだは、住宅ローンの元本返済を一部猶予してもらうことができます。
たとえば、住宅ローンの契約上、月々12万円の住宅ローン返済をしなければならないとします。内訳は元本が5万円、利息が7万円です。個人再生を実行して3年間は月々8万円の返済でOKとなります。内訳は元本が1万円、利息が7万円の返済でOKになるわけです。
さらに、個人再生を利用することで、3ヶ月~6ヶ月間、住宅ローンを滞納してしまった場合に喪失してしまう期限の利益を回復することができます。期限の利益を喪失してしまいますと、住宅ローンを一括で返済しなければなりません。
通常、住宅ローンを一括返済することは不可能なのでローン保証会社が代位弁済を実行します。結果として、債権がローン保証会社へ移ってしまい、個人再生は実行することはできなくなり、競売か任意売却の二択になります。
しかし、個人再生を利用すれば、住宅ローン返済が破たんしている状態であっても、そこから元の状態まで巻き戻すことができる、期限の利益を回復、巻き戻しと言います。
3.任意売却
住宅ローン返済ができない場合、期限の利益を喪失してしまい、なおかつローン保証会社が代位弁済をおこなってしまったら、競売か任意売却かの二択しかありません。
そして、競売と任意売却を比べると任意売却の方がメリットは多い方法です。
しかし、住宅ローン返済中の住宅を第三者に売却することは、抵当権という権利がありますので非常に売却が難しくなります。抵当権というのは債権者が持っている担保権であり、簡単に言ってしまえば借金のカタです。
たとえば、抵当権が付いている住宅の住宅ローンの返済ができなくなったら、抵当権者は抵当権を行使して、住宅の差押えをします。そして、その住宅を競売にかけて売却し、住宅ローンの残債務の返済に充てることができる権利です。
売却方法は債権者という存在があるので、普通の不動産業者より任意売却になれた専門業者でなくては、交渉が困難になることが予想されます。なぜなら、全ての抵当権者が任意売却に納得をしなければ任意売却をすることができません。一人でも反対をしていると、任意売却をすることはできないからです。
ただ、抵当権者との交渉などという面倒くさい手続きをしてでも、任意売却をするにはそれだけのメリットがあるからです。
任意売却をすると、市場流通価格に近い価格で自宅を売却することができます。また、プライバシー面も守られており、ご近所さんにはただの住宅売買にしか見えません。
また、マンションなどを任意売却するときには、滞納している管理費や修繕積立金などを代わりに支払ってもらえるほか、引越し代が出るケースもあります。
販売活動をする業者への支払いは、売却した住宅の代金から控除されますので、持ち出し金は1円も必要なく、任意売却は可能です。
4.競売
競売は、任意売却をせずに何もしていないと始まるものです。抵当権者が裁判所に申立てることで、競売は始まります。競売が始まってしまうとあとは自動で進行していきます。
競売は任意売却と比べると非常にデメリットが多くなります。
まず、プライバシー面がまったく守られません。自宅の間取りなどが専門のサイトであるBITに掲載されるほか、裁判所に名前や住所などが掲示されて公告されます。そのため、悪徳業者から闇金、宗教団体、自称不動産業者などさまざまな怪しい業者からアプローチを受けることになります。
連日連夜、さまざまな業者からのアプローチやダイレクトメールが届きますので、精神的に摩耗してしまうでしょう。
また、任意売却と比較をすると住宅の売却価格が低くなります。これは裁判所が行う競売は高く売ることに重点を置いているのではなく、安くそして迅速に売ることに重点を置いているからです。
そのため、競売後の残債務額は任意売却と比べると多くなります。
住宅ローンが払えないときにやってはいけないこと
住宅ローンが払えないときにやってはいけないことというのもあります。住宅ローンが支払えないとついついやってしまうのですが、人生そのものを狂わせてしまう可能性がありますので、注意をしましょう。
- 無計画にお金を借りる
- 闇金や消費者金融を利用する
- 任意売却をする前に自己破産をする
- 保険金で住宅ローンの返済
1.無計画にお金を借りる
住宅ローンの返済のために無計画に借金をしてしまうと、結局、無計画に借りた借金の返済と住宅ローンの返済と多重債務に陥る可能性があります。どうしても必要というときは借りるべきであるとは思いますが、その場しのぎのために借りるのは全くよろしい手ではないと考えます。
2.闇金や消費者金融を利用する
無計画に借りるにつながる話ではありますが、消費者金融は高金利であり利用してしまうと、その返済に頭を悩ますことになるでしょう。
3.任意売却をする前に自己破産をする
自己破産は債務整理の中の一つの手段ではあります。自己破産を実行すれば、税金など納税の義務があるもの以外の借金は帳消しになります。当然、住宅ローンも帳消しになります。
しかし、自己破産をするときには、自身も一定額以上の財産を処分しなければなりません。財産が特にない場合は同時廃止事件という手続きとなり、2ヶ月~半年以内で自己破産の手続きは終了しますが、不動産などの財産を持っていると管財事件という手続きとなり終了までに1年程度の期間、「破産者」となり、さまざまな制限が加えられます。
4.保険金で住宅ローンの返済
自殺をして保険金でローンを返済するというものです。住宅ローンの返済を目的とした自殺の場合、保険金はおりません。自殺をするよりは、任意売却や個人再生などを利用して再起を図る方がいいでしょう。
まとめ
住宅ローンが払えない、もしくは将来的に払うのが厳しくなる状況が見込まれる場合、とれる手段は複数あります。
- 金融機関に相談してリスケ
- 個人再生
- 任意売却
- 競売
これらの方法です。
金融機関と相談をしてリスケジュールに応じもらえなければ、個人再生を利用して返済を試みましょう。しかし、個人再生を利用しても返済が難しいのであれば、任意売却や競売という手段があります。そして、競売よりも任意売却の方が有利であるといます。
- 無計画にお金を借りる
- 闇金や消費者金融を利用する
- 任意売却をする前に自己破産をする
- 保険金で住宅ローンの返済
これらです。
どの方法を利用しても最終的には損をします。