持ち家や購入した分譲マンションの住宅ローンの返済が困難なときには、銀行をはじめとした金融機関へ相談に行くとリスケジュールに応じてもらえる可能性があります。リスケジュールというのは、返済条件の見直しです。
リスケジュールを選択せずに住宅ローンを滞納していると、任意売却や競売にて住宅を手放す必要が出てきてしまいます。任意売却はメリットのある方法です。一方、競売についてはメリットが少なく競売になると、任意売却よりも多くの残債務が残ることになります。
住宅を手放さないためには、金融機関へ相談をしてリスケジュールをするのがとても大切になります。しかしながら、リスケジュールをおこなうにしても、メリットとデメリットがあります。
メリットとデメリットを知ってから、リスケジュールに申し込まなければ、デメリットに悩む可能性があります。今回はリスケジュールのメリットとデメリットを紹介します。
目次
リスケジュールとは?
中小企業金融円滑法(モラトリアム法)が制定されて以降、金融機関は住宅ローンの延長の交渉にのってくれやすくなりました。
中小企業円滑法(モラトリアム法)とは、2009年~2013年にかけて実施された法律であり、住宅ローン返済が苦しくなった債権者に対して、金融機関は住宅ローンの延長などの相談に応じる努力義務を課しました。中小企業円滑法は2013年に終了を迎えましたが、金融庁はこの方針を継続するように指示をしています。
住宅金融支援機構をはじめ民間の銀行が、中小企業円滑法にのっとった取り組みを続けているので、住宅ローンの延長に比較的な銀行が多くあります。
- 返済期間の延長
- 一時的な返済猶予
この2つがリスケジュールとして実施されています。
返済期間の延長について
返済期間の延長ですが、明確なルールというのはありません。
一般的に住宅ローン返済期間が35年を超えたい範囲であれば、金融機関は延長を認めてくれる可能性があります。
たとえば、25年ローンを組んでいる場合、リスケジュールを申し込むことで、25-35=10年つまり、最長10年間の住宅ローン延長が認められる可能性があります。
ちなみに、住宅ローンの約定年数は平均25.7年です。(2015年度民間住宅ローンの貸出動向調査結果より)
ただし、「完済時の年齢」に注意をしなければなりません。返済期間が35年を超えない範囲だとしても、完済時の年齢制限が金融機関の定める年齢を超えてしまっては延長を認められないケースがあります。
一般的に、完済年齢は「75歳まで」と定めている銀行が多く、完済時の年齢が75歳を超えてしまった場合、住宅ローンを延長することができません。
現在の年齢が50歳の時に20年で住宅ローンを組み、残りの住宅ローンが15年ある場合、リスケジュールにより延長することのできる期間は、55+15=70歳なので5年間までしかリスケジュールにより延長をすることはできません。
完済時の年齢については、70~75歳までに設定している銀行が多くなりますが、住宅金融支援機構の場合は80歳完済まで認められています。
ちなみに、住宅金融支援機構の場合、住宅ローンの契約年数に関わらず特例にて、15年の延長が可能となっています。フラット35であれば、30年の住宅ローンを組んでいても15年延長することが可能です。
ただし、完済年齢の80歳という縛りがありますので、若い方でなければ利用することは難しいでしょう。
一時的な返済猶予
リスケジュールのもう1つの方法が、一時的な返済猶予があります。
この方法は一時的に一切返済をストップするのではなく、一定期間金利のみを支払い、住宅ローンの元本の返済しない、もしくは大幅に減額をして支払う方法です。
民間の銀行の場合、一時的な返済猶予期間については、6ヶ月~1年程度となります。
一方、住宅金融支援機構のフラット35の場合、原則として病気やケガにより返済が困難になった場合、一定期間の返済を減額し、減額期間満了後に返済額を増額させて追いつく必要があります。ただし、誰でも利用することができるというわけではなく、特例として条件を満たす必要があります。
- 最長15年の返済期間の延長
- 最長3年の返済猶予(元金据置期間)の設定
- 据置期間中の金利の引き下げ
これらが自動的に付与されます。
つまり、住宅金融支援機構の場合、リスケジュールの条件を満たすことで、住宅ローンの返済期間が最長15年に延長されます。また、最長3年間は元金の返済猶予があり、猶予期間中の利息は約定金利よりもマイナス1%程度低い金利が適用されます。
リスケジュールのメリット
- 一時的に資金繰りが楽になる
返済期間の延長や一時的な返済猶予を金融機関が認めてくれた場合、住宅を手放す必要はなく、一時的ではありますが、毎月の住宅ローンの返済額が減少します。そのため、リスケジュールの期間中は資金繰りが楽になり、リスケジュールの終了後の通常返済に備えることができます。
返済計画を変更することができれば、生活に困窮することがありません。また、生活のため、そして住宅ローン返済のために新たに借入をする必要はないわけです。
また、返済猶予の一時的な期間については6ヶ月~1年程度ですが、期間を延長したい場合、6ヶ月後~1年後に延長を再度申し込めば認めてくれる可能性があります。
リスケジュールはその名の通り、返済計画の変更です。住宅ローンそのものの減額でも免除でもありません。あくまでも、債務の先送りになります。そのため、リスケジュールのメリットは、一時的に資金繰りが楽になるというものばかりです。
リスケジュールのデメリット
リスケジュールのデメリットは以下のようなものがあります。
- 優遇金利が付いている場合、優遇金利がなくなる可能性がある
- 変動金利の場合、金利が0.5~1%引き上げられる可能性がある
- 返済期間が延びることで、総返済額が増える
- 延滞がある場合、滞納分を解消した後でなければリスケジュールができない
- 再度ローン審査が必要になり、審査に通らなければ延長できない
- 追加で担保や保証人を求められるケースがある
- 5年延長では、月々の返済額の減少が期待できない
- 新たな借入をするのが難しくなる
- ローンの借り換えをすることが難しくなる
このようなデメリットがあります。
優遇金利が付いている場合、優遇金利がなくなる可能性がある
金利や追加担保については、交渉により抑えることが可能です。しかし、優遇金利については確実になくなります。
リスケジュールをするのであれば、優遇金利がなくなる点を考慮して検討をするべきです。
5年延長では、月々の返済額の減少が期待できない
たとえば、
- 元本残高2000万円
- ローン残りが20年
- 元利均等方式
- 固定金利3%
このような住宅ローンを組んでいるとします。
リスケ前は、
- 月々の返済額:月11万0919円
- 返済総額:約2662万円
この場合で、5年間延長すると金利や返済方式は下記のようなものになります。
リスケジュール後は、
- 月々の返済額:月9万4842円
- 総返済額:約2845万円
このようになります。つまり、月々の返済を約11万円から約9万5000円に減額させることができます。
結局のところ、5年間の延長では約1万5000円の減額です。5年間の延長では月々の負担がこの程度となります。つまり、毎月9万円の出費であれば家計にダメージがないという場合以外は、リスケジュールをしてもあまり助けにならない可能性があります。
住宅保証機構の「住宅ローンシミュレーション」などの計算サイトを利用して、事前にシミュレーションを利用してからリスケジュールの検討をしましょう。
新たな借入をするのが難しくなる
新たな借入をすることが難しくなるというデメリットについてですが、リスケジュールを利用するということは、当初の返済条件での返済ができないということです。そのため、金融機関内での債務者の評価が低下します。
金融機関では、大きく分けると6段階で債務者を評価します。この評価を債務者区分と言います。
- 正常先
- 要注意先
- 要管理先
- 破綻懸念先
- 実質破綻先
- 破綻先
この6段階にて債務者を評価しています。
リスケジュールをおこなうことで、正常先に区分されていた債務者の評価は「要注意先」以下へ降下します。
ローンの借り換えをすることが難しくなる
また、ローンの借り換えを検討している場合、リスケをおこなうとローンの借り換えをすることが難しくなります。
これは、前述した債務者区分が正常先から下がってしまうことが原因です。
ただし、リスケジュールをしたら、新たな借入やローンの借り換えをすることが絶対にできなくなるというわけではありません。
リスケジュール後に、新たな借入やローンの借り換えをするためには、債務者区分を正常先に戻せば、新しく借入やローンの借り換えをすることができます。
リスケジュールのデメリットと誤解されるもの
- 返済期間を延長するとブラックリストに載る
- 返済期間を延長すると、団体信用生命保険が利用できなくなる
という2点の誤解があります。
返済期間を延長するとブラックリストに載る
リスケジュールをして返済期間を延長しても、信用情報機関のブラックリストに載るということはありません。
ブラックリストに載ると、ブラック状態の期間中、新規でクレジットカードを作ったり、銀行や消費者金融業者からお金を借りたりすることが難しくなります。銀行や大手の消費者金融業者の場合はブラック状態ではお金を借りることはほぼ不可能となります。
しかし、リスケジュールはブラックリストに載る「金融事故」ではありません。そのため、前述したデメリットを受けるということはないでしょう。
- 延滞
- 期限の利益の喪失
- 代位弁済
- 債権譲渡(移管)
- 債務整理(個人再生・自己破産)
これらの行為をおこなうとブラックリストに載ります。
返済期間を延長すると、団体信用生命保険が利用できなくなる
これは以前の話であり、現在は改善されているデメリットです。
以前、住宅金融支援機構では「団体信用生命保険の保障は70歳まで」であり「住宅ローン延長時の完済年齢の上限は80歳まで」と10年間のズレがありました。
この結果、住宅ローンのリスケジュールをおこない延長して70歳を超えてしまった場合、団体信用生命保険の対象から外れ空白期間が生じるという時代がありました。そのため、リスケジュールをおこない返済期間を延長すると団体信用生命保険が利用できなくなるという誤解の原因が生まれたわけです。
リスケジュールを確実におこなうためには?
リスケジュールのデメリットを少なくするためには、返済が遅れる前にリスケジュールの申し込みをすることです。返済が遅れる場合、金融機関とのリスケジュールの交渉は難航する可能性が非常に高くなります。
リスケジュールを実施するには、金融機関での審査が必要であり、2週間~3週間の時間をようしますので、申し込みをしたらすぐにリスケジュールが可能というわけではないのです。
また、リスケジュールの契約(条件変更契約書)の締結手続きが必要なので、返済日の1ヵ月前には申し出る必要があります。しかし、返済が遅れている場合、リスケジュールの交渉がうまく進まない可能性が非常に高くなります。
そのような場合は、強制的にリスケジュールをおこなえる、債務整理の一である「個人再生」を利用しましょう。
個人再生
個人再生は、債務整理の一種です。
債務整理の中では、任意整理より効力が強く、自己破産よりは効力が弱いのが個人再生です。個人再生の大きな特徴として、「住宅資金特別条項」というものがあります。
住宅資金特別条項とは、住宅ローンのリスケジュールを強制的におこなうものです。
個人再生を実行するためには裁判所へ申し立てる必要があります。個人で手続きをおこなうには、手続きが煩雑であり困難です。期間内に書類を提出しなければ手続きがすべてご破算になります。
- 住宅ローンを除く借金が5000万円以下であること
- 将来において継続、反復して収入を得る見込みがある
この条件を満たすことで、個人再生の住宅資金特別条項のリスケジュールを利用することができます。
リスケジュールの他に、住宅ローン以外の借金を圧縮することができますので、住宅ローン以外の借金がある方で、住宅を守り借金を減らしたいという方は利用するとメリットがある債務整理です。
まとめ
リスケジュールを利用するメリットとデメリットについて紹介をしました。
- 一時的に資金繰りが楽になる
これです。
リスケジュールを利用するとどのくらい月々の負担が楽になるのかを計算をして利用しなければ、このメリットもなくなるので注意が必要です。
- 優遇金利が付いている場合、優遇金利がなくなる可能性がある
- 変動金利の場合、金利が0.5~1%引き上げられる可能性がある
- 返済期間が延びることで、総返済額が増える
- 延滞がある場合、滞納分を解消した後でなければリスケジュールができない
- 再度ローン審査が必要になり、審査に通らなければ延長できない
- 追加で担保や保証人を求められるケースがある
- 5年延長では、月々の返済額の減少が期待できない
- 新たな借入をするのが難しくなる
- ローンの借り換えをすることが難しくなる
これらのデメリットがあります。
また、すでに延滞がある場合、リスケジュールには金融機関は応じにくくなります。そのような場合、個人再生の「住宅資金特別条項」を利用することで強制的にリスケジュールをすることが可能です。