結婚を機に、または子どもが産まれることを機に幸せな家庭を夢見てマイホームを購入する方はとても多くいます。住宅を購入する場合、日本では多くの場合、数千万円という住宅を購入します。とはいえ、現金で一括で支払われる方はほとんどいません。大半が、住宅ローンを組んで定年退職頃には、ローンを完済していることを目標に一生懸命働きながら幸せな家庭を築いていきます。
しかし、その幸せな家庭も、全体の約3割は、離婚という決断をされています。原因はそれぞれ異なるでしょうし、色んな事情で苦渋の決断となっているでしょう。今は辛いけど、離婚をして心機一転、新生活をスタートさせようと前向きに努めていても、予想外のトラブルが発生することがあります。
その原因がマイホームの住宅ローンです。
今回は、離婚に伴う住宅ローンのトラブルをご紹介したいと思います。どのようなことがトラブルにつながるのか理解して頂き、離婚を考えるならトラブルを回避し、円満に離婚ができるようすすめて頂けたらと思います。
目次
離婚をする前に任意売却をすべき!
結婚を機に住宅を購入する方は多いと思います。しかし、残念ながら離婚の決断をすることになったら、夫婦で購入したマイホームはどのようにしたらよいのでしょうか。
- 夫婦のどちらかが住み続ける
- 通常の不動産販売で売却する
- 任意売却にて不動産を売却する
どれも話し合いで、夫婦で決めることができます。夫婦のどちらかが住み続け、一方が出て行くというパターンも多いと考えます。お子様がいる家庭などは特にそのようなケースが多いのが実情です。住宅ローンの支払いは、住み続ける者が単独で支払い続けるか、または出て行った者も住宅ローンもいくらか負担するのか、夫婦の話し合いにより決めることができます。
また、住宅を売却し、綺麗に精算することもできます。高額で売れた場合などは、売却価額を二人で折半し、新生活の資金にすることもでができ、後ぐされなくそれぞれが余裕を持って新生活を始めることができるでしょう。
しかし、住宅を売却しても住宅ローンが膨大に残ってしまう場合はどうでしょうか。そのような場合は、残債務は一括で現金で支払わないといけないので、支払うことができない場合は、不本意だけどどちらかが住み続けるか、どうにかして現金を工面し残債務も完済してしまうということになります。これでは後ぐされなくとはいきません。元夫婦でしこりが残ってしまう状況になってしまいます。
ここで有効な手段となる任意売却の出番となります。任意売却により不動産を売却すると、住宅ローンの残債務が大幅に残ったとしても、分割で債務を返済していけるよう交渉することができます。
債権者が承認をすることで、住宅ローンの残債務を分割で支払っていくことができるので、離婚をして新生活を開始しても負担なく元夫婦それぞれがいくらか負担し、新生活をおくりながら債務を返済していくことができます。
任意売却でなく通常の不動産販売で売却する場合であれば、不動産の買主に物件を引き渡す際に、債務が残っていれば同時に債務を完済し、金融機関による抵当権の登記も抹消したものを所有権を移転しなければなりません。それゆえ残っている債務は、一括で現金で完済しなければならないことになります。少額の残債務であれば、親族や友人にお金を借りるなどして工面し、残債務の一括の返済も可能です。しかし、数百万円、数千万円と債務が残る場合、一括返済をすることはできず自己破産をしなければならないことになります。
離婚をして心機一転、新生活をと思っていたのに、自己破産をしてしまっては思っていたような新生活を迎えることができないかもしれません。また夫婦で住宅を購入する場合、夫が債務者、妻が保証人という形で住宅を購入したり、夫と妻が共有名義で住宅ローンを組んでいる場合がとても多いので、離婚後に、夫婦ともに自己破産となってしまうケースもあります。これを回避することができる有効な手段が任意売却がと考えます。
任意売却のメリットデメリット
任意売却は住宅ローンを滞納した債務者が、債権者により競売にかけられた住宅を、競売で落札される前に任意売却という手段で不動産を売却するものです。任意売却で不動産を売却することができれば、競売で売却するよりも、また通常の不動産販売の手法で売却するよりもメリットが高い場合もあります。そのような任意売却は、離婚に際して、不動産を処分する場合にもとても有効に働くと考えます。
どのように任意売却が有効でメリットが高い手段なのかをご説明したいと思います。また任意売却によるリスクやデメリットもあります。是非、メリットだけでなくデメリットも理解し、その上でどのような手段が自分たちに適しているかを判断してみて下さい。
任意売却のメリット
- 通常の市場の相場に近い価格で売却できる
- 任意売却に手数料などがかからない
- 残債務を分割払いにしてもらえる
- 残債務を減額してもらえることもある
- プライバシーが守られる
通常の市場の相場に近い価格で売却できる
任意売却で不動産を売却する方法は、債権者の承認が必要なこと以外は通常の不動産販売とほぼ同様の手法で売却されます。よって、販売価格を決定する際も通常の市場の相場に合わせて査定を行い、価格を決定します。ただし、任意売却ができる期間はおおよそ3カ月ほどで買主が決まり、契約、決済、引渡しを完了しなければなりません。
というのも、任意売却を行う場合は、原因が離婚であれ、3カ月ほど住宅ローンの支払いを滞納しなければなりません。それにより、住宅ローンを貸し出していた金融機関などは住宅を差押え、競売の手続きを開始します。競売の手続きが進められる中、任意売却を開始し、競売にて落札される前に任意売却にて売却をしなければ競売が成立してしまいます。競売が成立すると取り消すことはできないため、任意売却は不成立となってしまいます。
それゆえ、任意売却で販売を行う場合、表向きは通常の不動産販売となんら変わりはないのですが、価格は相場の8割ほどで販売し、早期に売却が決まるようにすすめます。しかし、競売などで落札されると、相場よりもはるかに安く売却されることになりますし、通常の不動産販売で売却すると、残債務は一括で現金で支払わなければなりません。よって通常の市場の相場に近い価格で販売することができ、残った残債務も分割で支払っていくことができる任意売却はとてもメリットが高いと考えられています。
任意売却に手数料などがかからない
任意売却は、不動産が売却されることで債務が精算されます。売却価格から、不動産の売却に必要な仲介手数料などを販売価格から差し引いてもらえ、残りの売却価格を債権者に精算されることになります。それゆえ、通常の不動産販売であれば、当然支払わないといけない仲介手数料や登記費用などを現金で工面する必要がありません。
不動産を販売する場合は、不動産屋に仲介してもらい、仲介手数料を支払うのが通常ですから、その費用を自己資金で用意しなくても良いのは、離婚に際し、引越しなど様々な費用がかかる中ではとてもメリットが高いと考えられます。
ちなみに、任意売却に関する手数料や代行料というものも存在しません。宅建業法にも、このような手数料などを受け取ることは禁止されています。よって、実質、任意売却を依頼して任意売却の手続きを業者に進めてもらっても特別な費用はかからないのでこういった意味でも任意売却はとても有効な手段と考えます。
残債務を分割払いにしてもらえる
任意売却の最大のメリットと考えられるのが、この残債務を分割払いにしてもらえるということです。
離婚に際し、不動産の処分を決断した場合、住宅ローンの残債務が膨大に残ることが問題となります。通常の不動産の売却をすると、残債務は一括で現金で支払わなければなりません。もし残債務を一括で返済することができないのであれば、通常の不動産販売の手法で不動産を処分する選択肢がなくなってしまいます。
しかし、任意売却の手続きによる不動産の売却であれば、不動産を売却してもなお残ってしまう債務を分割で支払っていくよう交渉することができます。それが認められると、新生活を送りながら、分割で支払っていき完済することができます。また、不動産を売却することで、大半の債務を返済することができているので、残りの債務に関しては分割で支払っていく場合であっても、新生活の再建に無理の無い範囲での返済額を設定してもらうことができます。離婚に際し、それぞれが新居に引越し、新居での生活費も支払っていかなければならないのですから任意売却でのこのような返済手法は、とてもメリットが高いと考えます。
残債務を減額してもらえることもある
任意売却の魅力的な点はまだあります。残債務を分割で支払っていくことができるだけでなく、場合によっては、債務自体減額してもらえる場合があるのです。他の売却手法ではこのようなことは絶対にありえないので、任意売却のメリットの高さが理解して頂けると思います。というのも、夫婦別々に新生活を始めるということは、奥様側は、専業主婦である場合も多く、そのような場合は、すぐに安定した収入を得ることが難しい場合があります。
また、元夫や元妻のどちらかが健康上に問題を抱えている場合など、新生活を再建しながら債務を返済していくことは、そもそも無理がある場合があります。そのような場合、債権者に交渉をすることで債務を分割払いにするだけでなく、減額してもらえる場合があります。新生活が再建できなければ、任意売却の手続き事態が意味の無いものとなりますので、離婚という精神的にも体力的にも、また経済的にも苦痛が生じる局面では、任意売却は特に有効な手段であると考えます。
プライバシーが守られる
任意売却の不動産販売手法は、見た目は通常の不動産販売とほぼ変わりません。不動産業者が自宅に来て、室内を見てまた建物の外観の調査なども行い不動産の査定をします。また、物件に興味を持たれた方が、自宅の室内の内覧に来たりもします。しかし、競売の手続きのように裁判所の執行官が物件の調査に来ることもありませんし、競売のサイトや情報誌に物件が掲載されたり、競売を行ったものとして公にさらされることがありません。
よって、近所の方や知人、同僚などに不動産を売却するに至った経緯などを知られることもなく、希望するなら近所で不動産を借りるなどして新生活を開始することができます。近所の方に事情を知られたり、会社の同僚に知られると、肩身の狭い思いをしてしまう場合もあります。そういった他人にできる限り何も知られたくないという方には特にメリットが高いと考えます。
任意売却のデメリット
ここまで、任意売却のいい話ばかりしてきましたが、物事には必ず良くないと考えられる点もあります。
しっかりとリスクであったり、デメリットであると考えられる点も把握した上で、自分たちには適している手段であると判断した場合に任意売却を進めるようにしましょう。
任意売却は必ずできるわけではない
任意売却は、不動産を売却してもなお債務が残ってしまう場合、なんとしても任意売却で不動産を売却し、債務は分割で支払っていきたいということを望んでも、任意売却ができる期間に、買主が見つかり、引渡しまで遂行できなければ不成立となってしまいます。そうなると、残債務を完済できなければ自己破産ということになってしまいますし、夫婦ともに債務者であったり連帯債務者であると、夫婦ともに自己破産ということになりかねません。どれだけのぞんでも、無事に買主が現れ、引渡しまでできなければ任意売却にて売却をすることができないというのは、任意売却の最大のデメリットと考えられます。
個人信用情報(ブラックリスト)に載る
任意売却を選択するなら、住宅ローンを3カ月ほど滞納しなければ手続きを開始することができません。
それゆえ、債務者は個人信用情報に滞納者として登録されてしまいます。いわゆるブラックリストに載るということです。滞納者として登録されると、新たに住宅ローンや自動車ローン、教育ローンなども5~10年程は組むことができなかったり、クレジットカードを新規で作成することもできないことがあります。事業を行っている場合には、事業に必要な資金などの借入れなどもできなくなるので慎重な決断が必要です。
離婚に伴うよくある住宅ローンに関するトラブル
別居や離婚を急ぐと、住宅の処分などを話し合う前に離婚されてしまい、トラブルになる方が非常に多いのが実情です。新生活を行うということは、一つであった世帯が二つに分割されてしまうため、家計も二つとなります。住宅ローンを今までのように支払っていくのは困難となることも多いのです。
離婚後、どちらかが住み続ける場合であっても、売却する場合であっても別居や離婚をする前に、しっかりと不動産に関して話し合い、結論を出しておかなければ、喧嘩別れのように感情的になっている局面で分かれてしまうと、後々トラブルになるかもしれません。お互いの人生のため、しっかりと冷静にならなければなりません。
それではどのようなトラブルが考えられるのか一例をみてみましょう。
離婚をすれば、保証人を外れることができると勘違いしていた
夫が債務者、妻が連帯保証人となっていた場合、離婚をしたからといって保証人から外されることはほぼありません。保証人でなくなるためには、住宅ローンの債権者である金融機関の承諾が必要です。金融機関に相談することで、代わりの保証人を建てる場合などは応じてもらえる場合がありますが、そうでない場合はほぼ保証人を外れることはできません。もし、夫が債務者で、そのまま不動産を夫が所有し、妻は別で住宅を借りるなどして、離婚をして別々で暮らしていても、夫が住宅ローンの滞納や、自己破産などをすると、妻に債務の請求がくることになります。
妻も生活に余裕がなければ、共に破産となることもあるので、離婚したからといてっても不動産の名義や保証関係は続くと考え、しっかりと離婚をする前に話し合いを行い、そういったトラブルにならないようにしたければ売却の手続きをすすめるなどをし、離婚前にできる限り債務の精算などは済ませておきましょう。
住宅の残債務が多額で、新生活を送りながらの返済が大変
離婚をすると、新生活をそれぞれが負担し、生活を営んでいかなければなりません。予想外の収入減でなどで新生活を送りながら債務を返済することが困難になる場合があります。また、専業主婦であった方が、離婚して働きだしたとしても、すぐに安定した十分な収入を得ることが難しい場合があります。そのようなこともしっかりと想定し、できる限り離婚前にしっかりと夫婦で話し合い、無理の無い返済の方法を考え決断しておきましょう。
まとめ
離婚に際して、共有名義で不動産を所有している場合、または夫婦のどちらかが債務者で一方が保証人などとなっている場合には、必ず、別居や離婚前に不動産に関する話し合いを済ませましょう。
どちらかが住み続けるのか、もしくは売却するのか。
どちらかが住み続けるなら住宅ローンの負担はどうするのか。現実的に住み続ける者だけで支払い続けるのは、新生活を再建しながらですので難しい場合があります。そのような場合は、出て行く側もいくらかは負担するという旨を取り決めておくことをオススメします。
さらには、不動産を処分し、債務を精算してから離婚をしたいと考える場合は、不動産が通常の売却でいいのかどうかを話し合って下さい。不動産を売却してもなお債務が残らない場合や、むしろ売却価格が債務を上回る場合は通常の不動産売却で問題ありません。不動産の販売期間に制限はありませんし、価格も相場に合わせた価格で自由に設定することができますから、最も所有者にメリットが高いと考えます。
しかし、問題は不動産を売却してもなお、多額の債務が残ってしまう場合です。残債務はどれだけ多額であろうと一括で支払わないといけなくなるので、自己資金がない方には、泣く泣く不動産を所有し続け、住宅ローンを支払っていかないといけないということになります。そこで有効なのが任意売却の手続きです。
任意売却にて不動産が売却出来れば、離婚をしてもそれぞれの新生活に負担の無いよう、残債務を分割で支払っていくことができます。離婚後にこれらを話し合って、協議を重ね、すすめていくことは困難となります。投げやりとなり、自己破産などにならないよう、是非、夫婦で不動産を所有する場合は、離婚や別居をする前に、お互いの新生活のため冷静にしっかりと不動産に関して話合いを行いましょう。