任意売却というと、突然住宅ローンが支払えなくなっても、家を売却して、残りの債務は分割で支払っていけば自己破産などせずに、また家族と新しい家で楽に新生活をおくれるという良い事づくめの制度として広く知れ渡っています。
こちらに誤解はありません。全くその通り、そのように新生活をされている方はたくさんいます。
しかし、ここに大きな注意点があります!それは、誰でもできるわけではないということです。
家を購入し、住宅ローンを組んだとしても、支払えなくなっても任意売却するから何の心配もないわと思っている方、それは大きな間違いです。
任意売却は、希望する人すべてができる制度ではありません。
任意売却は、まず銀行などの債権者である金融機関の承諾がないと始めることはできません。競売までの限られた時間の中で、銀行の承諾を得たうえで、期限内に不動産を売却しなければ成立しません。
誰でも任意売却を行い、一般的な相場で不動産を売却し、無理の無い分割払いで借金を返済しようと思ってもできない場合があります。
任意売却は誰でもできると誤解したまま、ローンの返済を滞った場合、任意売却が成立しなかったら、裁判所での競売となり、一般の相場よりもかなり低い価格で落札され、強制退去ということになるでしょう。
なんの準備や心構えもしていなかったことから、精神的にも追いつめられ、残った債務は一括返済を命じられ、自己破産ということになります。
そうなると、ご家族とは別居ということになるケースもあり、とても元の生活に戻すには難しいものがあります。
任意売却とは、債務者や債権者にとっても有利に働くとても素晴らしい制度であることは違いはありません。
しかし、物事には良い面と悪い面があるのが世の常です。任意売却の制度にだって、メリットとデメリットがあってしかるべきです。
しかし、色く知れ渡ているのは任意売却の良い面だけだったりします。任意売却のネガティブな面を知らないかたがほとんどだと思われます。
任意売却がなんであるか、また良い面だけでなく、しっかりと悪い面、デメリットを把握しておくことが何より重要です。
今回は、任意売却がなんであるか、またデメリットがなんであるか、またそれへの対処はどのようにしておけば上手く任意売却を利用できるかをお伝えしたいと思います。
それでは任意売却を学び、もしもの時に備えてみて下さい。
目次
任意売却とは
借金の中でも、住宅ローンを滞納してしまい、金融機関などに家を差し押さえられ競売に掛けられてしまうといった場合に、金融機関に交渉し、通常の不動産売却のように住宅を売却し、住宅ローンの債務を支払い、新生活の再建をしながら、残りの債務を分割で支払っていけるようリセットさせてもらえる制度となります。
夢のマイホームに住み、ローンの支払いのために一生懸命働いて、子どもたちも地域になじんでしっかりと成長しマイホームで幸せな生活を送っていても、突然住宅ローンが支払えなくなるリスクは誰にでもあります。
そういったことに備えて、貯金や保険に加入している方もたくさんいると思いますが、想定外の事態ということも人生にはあるものです。
そういった場合に、夢のマイホームは手放すことになっても、しっかりと新生活を再建できるよう法的に認められた手段が任意売却です。
しかし、任意売却は必ずしも誰でもできる手段ではないですし、それなりにデメリットもあります。
そういった事をしっかりと知っておかないと、もし住宅ローンが支払えないなどの事態になった場合に、とんでもない不幸になることがあります。
任意売却をしっかり把握しておくのと、知らずに過ごしているのとでは、いざというときに残りの人生が180度変わると言っても過言ではありません。
誰にでも、想定外の事態が舞い込むリスクはあります。
そういった事態になっても知っている知識でしっかりと冷静に対処できることが肝心です。
任意売却や競売でなくても、通常の不動産売却で売却して、ローンを完済できるならそれで終わりです。問題は、売却しても多額に住宅ローンが残ってしまう場合です。
もし、その工面が難しければ、途方に暮れるのではなく、まず任意売却ができるかどうかを専門の業者に相談にいきましょう。
できるなら、競売になるよりメリットが多いのが通常です。
しかし、その場合でも、任意売却がどういったものかを知っていないと、上手く進めることができず、競売となり強制退去を命じられ、残債務の一括返済を請求されることになります。
そうなると、多額の現金を用意できないなら自己破産するしかありません。
自己破産すると世間にも知れ渡ることがあったりと、精神的にもとても苦痛を強いられます。新生活の再建にも困難が伴うことが多々あります。
なんとか競売だけは免れるよう、任意売却を成功させる必要があります。
そのためにも、しっかりと任意売却のメリットデメリットを知り、特にデメリットに対して対処方法を知っておくと、新生活がより易く始めることができ、家族への負担もより軽く済むはずです。
それでは任意売却を詳しくみていきましょう。
任意売却の流れ
- ローンの支払いが危なくなったら、焦らず冷静に任意売却の相談に行きましょう!
- 任意売却は時間が勝負!しっかりと流れを把握し、焦らずに動きましょう。
- 任意売却の業者は、知識や経験が豊富な実績のある業者であることが肝心です!
任意売却は、時間がとても限られていますので、初動がとても重要です。
ローンが払えなくなりそうだと思ったら、まず焦らずに、信頼できそうな任意売却の業者を探し、相談に行きましょう。
そんな信頼できる業者を探すにも時間がかかりますので、是非支払えなくなりそうだと思ったら、信頼できる専門の業者を探しましょう。そのあと、ローンを滞納せずに済んだらそれはそれで一件落着です。
任意売却は時間が限られているので、時間切れで任意売却が成立しないということもあります。
任意売却をしっかりと把握していないと、競売が開始されてから慌てて任意売却の手続きをという方もたくさんいますが、それでは信頼できる業社に依頼することも困難ですし、良い業者に出会えたとしても、売却が間に合わないということになります。
任意売却がどういったものかをしっかりと把握しておき、ローンの支払いが危ないと思ったら、業者を探し、相談に行き、住宅の価格査定だけでも済ませておくととても良いと思います。
任意売却は、まず住宅ローンが支払えなくなってから手続きができます。
滞納してしまっても焦る必要はありません。しかし、金融機関から督促状などが届いたら少し急いで専門の業者に任意売却の手続きを始めてもらわなければなりません。
流れをしっていれば、焦らずに手続きを進めることができます。それでは流れを見てみましょう。
任意売却の流れ | 住宅ローンの返済状況 | 競売の流れ | |
---|---|---|---|
1 | 任意売却の検討や、専門業への相談を開始するのがいい時期です。任意売却を把握しているとこの時期にしっかりと準備することもでき、把握しておくことが何よりも重要といえます。 | ローンの返済が苦しくなる | |
2 | ローンの支払いが遅れがちになる | ||
3 | ローンの滞納:1~2カ月目 | 金融機関から督促状や支払催告状などが自宅に届く | |
4 | ローンの滞納:3~4カ月 | 競売申立「競売開始決定通知書」が自宅に届く | |
5 | ローンの滞納:5カ月目~ | 現況調査 裁判所から執行官が調査に来る(自宅の写真なども撮る) | |
6 | この時期までに任意売却の相談を済ませてかないと、手続きが間に合わなくなる | 入札の開始 期間入札の通知が届く | |
7 | 競売の開札日に、任意売却の買主と契約が住んでおり、退去していないと任意売却は不成立となります。 | 開札 (開札がされると、競売の取り下げができなくなる。) | |
8 | 売却の許可 | ||
9 | 物件の引き渡し(強制退去) |
任意売却は、競売の開札日までに、買主との契約、退去を済ませておかなければ、任意売却は不成立となります。
不動産の販売活動から、買主の決定、契約、引き渡しまでに3か月ほどかかることが多いので、時間に余裕はありません。
任意売却の交渉のための必要な書類などを用意するための調査なども必要ですので、住宅ローンが滞りそうだと思ったら、任意売却の専門の業者へ相談に行くのがいいかと思います。
焦ることはありませんが、しっかりと冷静に進めていくことが重要です。
競売とは何?任意売却との違い
任意売却という言葉より、競売という言葉の方が知っている方は、多いのではないでしょうか。
ここ20年程で任意売却の手続きは広まりましたが、従来、住宅ローンが支払えなくなって差し押さえられると金融機関に差し押さえられ、裁判所にて競売にかけられ売却されるというのが一般的でした。
しかし、競売というのがどのような権利で開始され、またどのように落札されていくか知らない方は多いと思います。
ここで競売とは、どのような手続きなのか今一度見直してみましょう。
競売の流れ
1 | 住宅ローンの滞納・延滞 | 1カ月間住宅ローンの支払いを遅延すると、督促状が自宅に届きます。 |
---|---|---|
2 | 債権者から呼び出し | 約2カ月間住宅ローンの支払いを遅延すると、債権者から呼び出され返済について話し合います。 |
その後の支払いについての相談 | ここで債権者である金融機関に任意売却を勧められる事もあります。 | |
3 | 再度滞納 | ここで滞納が続くと期限の利益の喪失となります。 |
期限の利益とは、住宅ローンを分割で返済しても良いという権利を失い、残債務を一括で返済しなければならなくなります。 | ||
4 | 債権者が保証会社に代位弁済を要求 | 債権者である銀行などは、保証会社へローンの残債務の代位弁済を請求し、保証会社が代位弁済をすることで債権は保証会社へ移り、今後債権者は保証会社となります。 |
また、滞納したことにより、滞納情報が金融機関が共有する個人信用情報に登録されることになります。 | ||
5 | 差押え | 差押えとは、担保権実行のための手段です。住宅ローンの場合は、金融機関がローンを貸し出すときに、同時に住宅へ抵当権を設定します。支払いがこのように滞ったときに、抵当権を実行し、このように差押え、所有者が不動産を自由に処分することができないようになります。 |
6 | 競売 | どうも処分できなくなった債務の最終処理の手段となります。 |
ここから、裁判所の執行官が不動産の調査をしたり写真を撮りに来たりします。自宅の情報が競売のインターネットサイトに掲載されたり、裁判所で公開されたりします。 | ||
7 | 入札 | 入札希望者による入札が始まる |
8 | 開札 | 入札希望者が複数いる場合は高値での入札の者に落札者が決まる。 |
9 | 立ち退き | 落札されると2~3週間ほどで裁判所により「不動産引渡し命令」が発令されます。 |
競売が成立し、立ち退きになると、その後落札価額で住宅ローンの一部が弁済され、残りの債務は一括返済の請求がなされます。
自己破産は法的に認められた、債務を帳消しにする手続きです。どうにも支払う術がなくなってしまった方が再起をできるように借金を帳消しにしてくれるものです。
任意売却をせずに、すぐに自己破産でもいいのではないかとも思いますが、もちろん自己破産にもデメリットがあります。
自己破産のデメリット
裁判所で支払いが不可能であると認められると、借金の支払い義務が免除され、全ての借金を支払う必要がなくなります。
借金の督促や取り立てもなくなり、生活の再建を図ることができます。しかし自己破産はとてもいい制度でありますが、その代償はその分しっかりとあります。以下のデメリットが考えられます。
- 財産を処分する必要ある
- 高額な現金、価値が20万円以上の自動車、バイク
- 車のローンなどクレジットカードで分割払いで購入した者
- 生命保険などの解約返戻金
- 退職金の1/8相当額が20万円以上の場合
- 信用情報に自己破産をした記録が残る
- 官報で公告される
- 資格に制限がかかる
- 免責されない借金もある
1.財産を処分する必要ある
自己破産は、一般的な債務整理(任意整理、個人再生)の手続きとはことなります。大きく違うのが、なにより支払いが免除してもらえるということです。
支払いを免除してもらう以上、その代償もしっかりとあります。
とはいえ、財産を全て処分してしまったら、生活すらできなくなってしまします。
そのため、生活するにおいて最低限必要と考えられる現金と所有物を保有することを許されています。
- 99万円以下の現金
- 20万円以下の預貯金
- 洗濯機、冷蔵庫などの家具家電
などは生活に必要な物として処分対象外となっています。その他、自分名義以外の自動車、生命保険なども処分の対象外となっています。
それでは処分の対象となる4例を紹介します。
高額な現金、価値が20万円以上の自動車、バイク
99万円を超える高額な現金は処分する必要があるのは、上記でお伝えしましたが、高額な自動車やバイクももちろん資産とみなされ、価値が20万円を超えるものについては処分し、債権者への弁済に充てることになります。
よって、価値が20万円に満たない自動車やバイクなどは、処分対象外となり保有し続けることはできます。
車のローンなどクレジットカードで分割払いで購入した者
車のローンや、クレジットカードの分割払いで購入したもので、まだ支払が完了していないものは、クレジット会社によって回収されます。
なぜなら、クレジット会社には所有権留保といって、クレジットの支払いが終わるまでは、その物の所有者はクレジット会社となっています。
なお、中古車や、事故歴のある物などは、市場価値も低いとみなされ、そのまま所有を許される場合もあります。
生命保険などの解約返戻金
生命保険などの保険に関しては、原則継続ができますが、解約返戻金(解約した時に返却されるお金)が20万円以上の場合は資産とみなされ、自動車と同様に処分の対象となります。
解約返戻金は、債権者への弁済に充てることになります。
退職金の1/8相当額が20万円以上の場合
退職金は退職していない場合でも、将来の支給見込み額として、8分の1相当額が20万円以上の場合は、配当すべき財産とみなされます。(20万円未満の場合は財産としてはみなされません。)
とはいえ、退職金を前倒しで会社から支払ってもらうわけにはいきません。
ただし、他の財産と合算して、合計99万円に満たない場合は積立しなくてよい場合があります。
2.信用情報に自己破産をした記録が残る
信用情報とは、金融機関か共有している情報です。
お金を貸し出したり、クレジットカードを発行する際に、金融機関が閲覧し、貸し出したりしても返済をしてもらえるかどうかを審査します。
今後の事業や子どもの教育ローンなどを考えると、自己破産をしない方がいい方もいる場合があります。
3.官報で公告される
官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律が制定された場合など、それに記載し広告されます。
自己破産も同様に共有されるべき事実として、自己破産をした者の名前や住所が記載されます。
これにより世間に知れ渡ることになりますが、これをわざわざ日常的に閲覧をしている人も少ないと考えられるので、近所の人に知られたり、会社へばれて肩身が狭い思いするというのはあまりないと考えられます。
4.資格に制限がかかる
破産手続きをすると、破産開始決定によって、人の財産に関わる資格(弁護士、公認会計士、生命保険募集人、宅地建物取引主任者、警備員など)については、手続き中は資格を使用した仕事ができなくなります。
破産手続き開始決定から復権まで、資格制限がかかる資格一覧
弁護士 | 商工会の役員 |
司法修習生 | 証券取引外務員 |
検察審査員 | 建築士事務所開設者 |
弁理士 | 証券業 |
司法書士 | 投資顧問業 |
土地家屋調査士 | 貸金業 |
不動産鑑定士 | 調教師 |
社会保険労務士 | 騎手 |
行政書士 | 後見人 |
中小企業診断士 | 後見監督人 |
通関士 | 保佐人 |
宅地建物取引主任者 | 補助人 |
公認会計士 | 遺言執行人 |
税理士 | etc |
5.免責されない借金もある
免責許可(借金がチャラ)となったとしても、免責されない借金もあります。これを「非免責債権」といいます。
また、浪費などの事実を隠蔽したり、偏頗弁済(一部の債権者のみを優遇して返済する行為)、財産の隠匿など、免責を許可しない事由があるときは、破産管財人が調査をし、裁判所が裁量で免責許可決定をしなければ免責されません。
免責されないものの参考一覧
- 税金
- 罰金等
- 横領などを行った場合の賠償金等
- 偏頗弁済
- 夫婦間の協力・扶助義務など親族関係にかかる請求権
- 不法行為に対する損害賠償請求権 etc
借金がチャラになり、新生活を再スタートにするのにメリットが高いと思われがちですが、家族がいる方などは世間体も大切ですし、会社への影響も気になります。
事業を営んでいる人であれば、数年間ローンが組めないなどの制約は大変痛手になる場合が多いです。
自己破産をしなくても、分割での支払いが許される可能性のある任意売却が脚光を浴びることになります。
ご家族のいる方などは、慣れた環境を離れずに、再生活を送りたいと考えます。
近くで賃貸住宅を借りるなどして、賃料も払いながら無理なく残債務も返済していくというのがとてもメリットが高いのです。
しかし、任意売却もメリットばかりではありません。
しっかりとメリットデメリットを理解しておかないと、任意売却が上手くいかなかったときなど、大変なことになります。しっかりとみていきましょう。
任意売却のデメリット
生活の再建には任意売却がとても有効的で便利であると考えられますが、任意売却にもデメリットはあります。
それを知らずに手続きをすすめてしまうと、後で困ったことや取り返しのつかない事態になりかねません。
しっかりと生活の再建を図りたいと考えるならデメリット把握したうえで、もしもの場合の対処までを、しっかりと考えてから進めることをオススメします。
任意売却のデメリット
- 任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納しなければならない
- 債権者の同意や許可が必要
- 連帯保証人の協力が必要
- 競売になる可能性がある
- 信用情報(ブラックリスト)に登録される
- 任意売却を行う業者に悪徳業者も多い
- 内覧の立ち合いが必要
①任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納しなければならない
任意売却の要件として、忘れてはならないのが住宅ローンを実際に3カ月ほど滞納した事実が必要です。
住宅ローンが支払えなくなりそうだと思って、すぐに不動産を売却し精算して新生活をと思っても金融機関の承認もありませんし、任意売却の手続きはすすめられません。
しかし、実際に任意売却を始めると時間はとても限られているため、始めるには早いに越したことはありません。
支払えなくなりそうだと思ったら、任意売却の専門の業者を探し、相談に行き、不動産の査定などを行ってもらうといいかと思います。
金融機関への承諾などは、3カ月ほど滞納をしてからのスタートになります。
②債権者の同意や許可が必要
任意売却は、不動産が残債務より下回る価格で売却する場合に行う手続きです。
もし残債務を上回るなら、通常の不動産売却での手続きで済みますので、そもそも任意売却など考える必要はありません。
残債務を下回るが、不動産を売却し、新生活を送りながら、さらに残った債務を返済していくという申し出に対して、金融機関である債権者の許可をもらうのです。
そのためには、金融機関との交渉に慣れ、任意売却の成功実績がある信頼できる業者へ依頼することが重要です。
任意売却は、市場の相場と同等の価格で不動産を売却できるので、金融機関にとってもより高い返済を受けることができるのでメリットは高いのです。
しかし、交渉や不誠実な対応だと金融機関に任意売却を拒否されることがあります。そういった失敗が無いためにも業者を選ぶのはとても重要な課題でもあります。
③連帯保証人の協力が必要
住宅ローンを借りるときに連帯保証人や連帯債務者を設定した場合、債務者が住宅ローンを滞納すれば、連帯保証人や連帯債務者に支払いの請求がいきます。
そのためには、事前に債務者から連帯保証人や連帯債務者へ相談や報告をしておく必要があります。
頼み事ができない関係であったり、住宅ローンを滞納するなどといった話は恥ずかしいので人には知られたくないと思うのが普通ですが、連帯保証人や連帯債務者を設定している方は、そうは言ってられません。
手続きをすすめないと、競売などの手続きになり自己破産が必要な事態になりかねません。
しっかりと今後の新生活の再建の計画なども伝え、任意売却をすすめたいという熱意を伝え、事前に承諾をもらっておくのがいいかと思います。
連帯保証人の方なども、自分たちが債務者の代わりに支払おうと思う方は少ないはずです。
しっかりと事前に相談しておけば、誠意ある行動とみなしてくれることもあるでしょう。
④競売になる可能性がある
債権者の承諾なども得られ、無事に任意売却の手続きをすすめ、不動産を販売にできたとしても期限内に売却し、契約手続きなどが済んでいるといないと、任意売却が不成立となり、競売手続きをすすめられる可能性はあります。
任意売却は、手続きが認められるだけでは安心ができません。
およそ3カ月ほどの間で、債権者が認める売却価額で売却が完了しなければなりません。完了するまでは、安心して眠ることもできないかもしれません。
もし不成立となれば、競売の入札が行われ、落札が決まると、強制退去となります。
相場よりもかなり低い価額での売却となりますので、残債務も多額になることが一般的です。そうなると、残債務は、一括返済しか認められませんのでなんとか工面するか、できなければ自己破産をするしか手段はありません。
任意売却はとても有効な手段ですが、しっかりと成立する保証がどこにもありません。
任意売却をすすめられたとしても、成立するまでは安心できませんし、競売になり自己破産になる可能性が十分にあると思って手続きはすすめなければなりません。
最悪の場合の自己破産になったときなどの今後の生活のことなどもしっかりと考え、冷静にすすめられると、もし任意売却が不成立だったとしても、家族の住まいや仕事のことなどを冷静に対処し、新生活への第一歩をいち早く始めることができます。
幼いお子さんのいる世帯では、自己破産になったからといって嘆いている暇はありません。いつだってどんな状況になろうと冷静に対処するため、しっかりと任意売却のデメリットも知っている必要があります。
⑤信用情報(ブラックリスト)に登録される
信用情報に登録されるということは、なにも一般に公開されるということではありません。
信用情報は、金融機関などが共有するもので、一般の誰でもが見れるものではないので、もちろん会社にバレるといったことの心配はほぼありません。
しかし、信用情報とは金融機関が、滞納者などを登録してお金を貸し出したり、クレジットカードを作成するときに、返済をちゃんとしてもらえる人かどうかを審査するために閲覧する物ですから、もちろん信用情報に登録されると、削除されない限り、新規でローンを組んだりクレジットカードを作成したりすることができなくなります。
もちろん永久に削除されないわけではありません。5年から7年、長ければ10年経てば、削除されると言われています。
信用情報は、滞納した事実だけでなく、任意売却をした者、自己破産した者などが登録されるので、任意売却の時点でこれを恐れても、自己破産をするといずれにしても登録されます。
しかし知っていることで新規事業を起こす場合も、資金の調達方法も前もって対処することができます。
もしローンを組むことなどをあてにしていると、早速事業がとん挫するということにもなりかねませんので、信用情報に登録されてしまうということを覚えておきましょう。
⑥任意売却を行う業者に悪徳業者も多い
任意売却は通常の不動産取引に加え、借入金や税金に関する法律の知識や豊富な経験が必須となります。
というのも、任意売却は住宅ローンを延滞したからといって必ず認められる方法ではありません。
金融機関である債権者に任意売却をしたい旨を伝え、債権者が同意してくれる販売価格や条件を検討し、上手く交渉をしなければなりません。それにより、債権者の許可がおりるかどうかが決まるのです。
しかし、任意売却を行う業者には悪徳業者が多いのが実情です。なぜなら悪徳業者というのは人の弱みにつけ込み、現金などを搾り取ろうとするものです。
任意売却を望む人は、住宅ローンが支払えなくなりとても差し迫った状況であることがほとんどです。なんとか競売が成立してしまうのを避けようと藁にもすがる思いで、任意売却を行ってもらえる業者を探します。
そんな中、任意売却の良い話ばかりを吹聴し、絶対に成功するなどと債務者をあおり、自社で契約させます。債務者は、差し迫った状況から、業者の実態がどのようであるかまで気が回らないという方も多いでしょう。
そんな場合、簡単に悪徳業社の思うつぼとなり、任意売却が成功しようと、しまいと多額の手数料などといって費用を請求されることになるでしょう。
せっかく新生活の再建をと思い、必死で任意売却しようと躍起になっても、悪徳業者から散々吸い取られ、最終的には結局自己破産ということにもなりかねません。
このような事態にならないためにも、住宅ローンが支払えなくなった場合冷静に今後のことを考えなければなりません。
その中で、任意売却がベストだと思えば、信頼できる業社探しをまずは冷静に集中して探さなければなりません。今後の運命は、任意売却の業社にかかっているといっても過言ではありません。
ここで、悪徳任意売却の業者にひっかからないための3つのポイントを紹介します!
任意売却の業社に騙されない3つのポイント!
- 弁護士などの法律家が主体となっている業者であるか
- 税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
- 「任意売却専門」などのうたい文句にだまされない
1.弁護士などの法律家が主体となっている業者であるか
任意売却は、債務整理の一種です。債務整理とは、過剰に増えた債務を整理し、債務者が支払いを続けれるよう整理してもらうものですが、法律の知識や経験が必須となります。
一般的にも、債務整理をする場合は、弁護士事務所や、司法書士事務所へ相談へいくことが多いはずです、任意売却も債務整理の一種ですので、弁護士などの法律家が主体となって問題会見にあたってもらうことが、重要であることがわかります。
もちろん、多くの不動産会社で、顧問契約を結んでいる顧問弁護士というものがいます。
2.税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
任意売却は、不動産取引が重要であります。売却を短期間で高条件で成功させなければなりません。
そして債務をできるだけ返済し、残債務を少なくしなければなりません。法律家がいるだけでなく、宅地建物取引業の免許もっていて不動産売却に実績のある方が必要になります。
ただ不動産の売却ができる不動産屋ではなく、法律の知識や経験などがある特殊な専門知識が備わっている不動産会社でなければなりません。
任意売却を依頼する判断で最も重要なのは、会社の知名度ではなく、どれだけの任意売却の実績があり、知識や経験が豊富であるということが重要となります。
3.「任意売却専門」などのうたい文句にだまされない
任意売却を成功させるには、法律や不動産の知識や経験が豊富であることが重要です。
弁護士や宅地建物取引主任者だけでなく、税理士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家の判断が必要な場合が多々あります。
いかにその業者が、多くの専門家と連携がとれているかなども把握しておくことが必要です。
任意売却では、基本的に費用はかかりません。必要があれば、任意売却が成立した売買代金から債権者が許可した費用が差し引かれているので、債務者が自己負担することはありません。
しかし「手数料」、「販売促進費」、「任意売却申請費」などの費用を請求される場合があります。
もし相談に行った際に、こういった話が出た場合や、におわされた場合はその業者は避けるか警戒をしておく必要があります。
内覧の立ち合いが必要
任意売却は、通常の不動産売却と同様に、不動産情報誌や不動産情報サイトなどに掲載され、実際に部屋の中を見たいという購入検討者の方に、内覧や見学という形で家の中を見学に来てもらう必要な場合は多々あります。
その内覧に立ち会う必要もありますし、居住中に他人が部屋の中を見回すことになるので、精神的にも辛いと感じることはあるかもしれません。もちろんそれ以前に引越し済みであれば問題はありません。
任意売却のメリット
任意売却は、住宅ローンが支払えず、一括返済を迫られると自己破産をするしかなく、家族にも負担掛けてしまうことを避けたいと考える人にとっては、良い事づくめの救済のように思えます。
実際に多くの方がそう思っているはずです。
上記のデメリットさえなんとかクリアできたら、任意売却により新生活が再建できるでしょう。
しかし、ここで任意売却はどのようにメリットがあるのかも把握しておく必要があります。簡単にこちらでご紹介致します。
任意売却のメリット
- 市場価格に近い価格で売却できる
- 売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
- 引越し費用、売却費用などが売却価格から引いてもらえる
- プライバシーを守れる
- 引越し時期や条件も考慮してもらえる
- 任意売却の費用はかからない
- 専門の業者に依頼することができる
①市場価格に近い価格で売却できる
任意売却では、不動産売却と同様に、不動産販売の情報誌や情報サイトに掲載され、一般の方でも通常の不動産と同じように検討することができます。
価格も一般の相場の価格に近い価格で販売されます。もちろん、不動産業者などが共有する指定流通機構のレインズにも登録されます。
一般の方に広く検討してもらえます。価格は債権者である金融機関の承諾が必要です。
②売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
ここが、競売や他の手段では叶わない魅力の一つです。
任意売却の手段以外、返済を6か月ほど滞ると、一括返済を請求されます。それを免れるには、自己破産しかありません。
しかし、自己破産すると、債務は免れる反面、デメリットがたくさんあり、生活の再建に支障がでることもあります。家族が居たり、慣れた環境で再起をと望まれる方は避けたいと考えられる場合が多いです。
そこで任意売却が手続きがすすめれるとなり、売却も成功すると、売却価額が返済に充てられます。
そして、さらに残った残債務が本来なら一括請求されるところ、金融機関に交渉することで分割返済にしてもらうことができます。
競売などの手続きでは、金融機関への交渉は一切できません。競売で売却された後は、容赦なく一括返済の請求がされるでしょう。
任意売却では、最終的に分割での返済の交渉ができ、そしてそれが認められたら、生活の再建に支障のない範囲で、月々10,000円から50,000円程での支払いを許されます。
家族がいたり、幼い子がいる家庭では慣れた環境を離れるのは、とても肉体的にも精神的にも辛いことがあります。
これが任意売却の大きなメリットの一つといえます。
③引越し費用、売却費用などが売却価格から引いてもらえる
任意売却では、通常の不動産売却取引と同様の諸経費がかかります。
例えば、仲介手数料、抵当権設定登記の解除費用、残置物の撤去費用など債務者がかかる費用は通常の売却と同様に支払わなければなりません。
さらに売却が決定したら、引越しをしなければなりません。引越し業者に支払う費用だけでなく、新居を賃貸する場合には、敷金礼金などのまとまった費用が必要になります。
通常の不動産売却の場合や、競売の場合は、自分で売却費用や引越し費用などは工面しないといけないので、任意売却の大きなメリットの一つだと考えられます。
④プライバシーを守れる
任意売却での不動産の販売活動は、通常の不動産販売と外観は同じです。
任意売却であることを公表されることはありませんし、販売価格も一般的な相場に応じて決められることが多いので、住宅の購入を希望される方に怪しまれることも多くの場合は無いかと思われます。
競売の場合は、新聞や情報誌、競売のインターネットサイトなどに住宅が掲載されることになるので、近隣の方や知人に知られる可能性がありますが、任意売却ではそういったこともないので、周囲の方に知られずできるということで、精神的に比較的に楽に新生活の再建に向けて進めるのではないかと思われます。
また、周囲の方に知られないということは、近隣で賃貸を借りて再生活を図ることがとてもし易くなります。
ご家族がいる方だと、慣れた環境を離れるのは、精神的にも肉体的にも苦痛となる場合が多いです。幼いお子さんがいる方だと、小学校などを転校させる事が辛く思われる場合が多いかと思います。
そういった事も考えると、任意売却はご家族いる方にとってはよりメリットが高くなるではないかと思われます。
⑤引越し時期や条件も考慮してもらえる
任意売却というのは、債権者である金融機関が主導ですすんでいくものです。不動産の売却価格から売り出しに関することも、金融機関の承諾がないと進められないですし、買い手の方もこの人で良いという許可がないと、売却を完了させることができません。
なので、逆にいうと金融機関の承諾さえあれば、色んな交渉や条件を汲んでもらうことができます。
引越し代金や、引越しの時期なども金融機関に交渉し、場合によっては債務者に配慮してくれることがあります。
一般の売却や競売ではこういったことが一切認められません。競売の場合は、強制退去の日が決定となると、その日に退去しておかないと、荷物なども屋外に出されてしまいます。
こういった意味でも、任意売却はメリットが高いと考えられます。
⑥任意売却の費用はかからない
かかる費用は、基本的には、任意売却により売却された売却価格より差し引いてもらえます。
またかかる費用とは、不動産を売買するのに一般的に必要となる仲介手数料や登記費用などとなります。
別途、任意売却の成功報酬などを本来、請求されることはありません。もし請求されたり、最初にそのような費用が必要だと言われた場合は、怪しい業者であると思って避けた方がいいかもしれません。
⓻専門の業者に依頼することができる
任意売却の手続きや進行は、素人では判断が難しい法律の知識や不動産の知識が必要となります。
さらには、上手く債権者である金融機関との交渉をしていかないといけないので、金融機関の傾向などを把握しているなど、実績のある業者に依頼することが重要なのです。
任意売却のデメリットへの対処方法
任意売却のデメリット
- 任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納しなければならない
- 債権者の同意や許可が必要
- 連帯保証人の協力が必要
- 競売になる可能性がある
- 信用情報(ブラックリスト)に登録される
- 任意売却を行う業者に悪徳業者も多い
- 内覧の立ち合いが必要
任意売却の上記のデメリットを払拭することはできません。
どれも任意売却の手続きで、必ず経なければならない過程です。なので一番重要なことは、これらのデメリットがあるということを事前に知っておくということです。そして、焦らず冷静でいることです。
デメリットがあっても、それらを事前に知っていて、冷静な判断ができればなにも戸惑うことなく、流れに沿って手続きを進めていくだけで済みます。
このようなデメリットを知らずに、任意売却に飛びついてしまうと、重要な時に戸惑い、立ち止まったり、身動きがとれなくなってしまったりします。
特に連帯保証人の承諾などは、連帯保証人さん自身も考える時間が必要だと思うので、なるべく早く、できれば事前に知らせておくのがより良いと思います。
住宅ローンを滞ったら、また滞りそうになったら、任意売却のデメリットを把握し、冷静に信頼できそうな業者を探しましょう。
任意売却は時間が限られているので、早いに越したことはありません。住宅ローンが支払えなくなりそうになったら、落ち込んだり自暴自棄になったりせず、自分のため、また家族のために新生活の再建に向けて冷静に動けばいいのです。
そうすれば、上記のデメリットも知らずに任意売却の手続きが進むよりも、動揺や衝撃が少なく済みます。一番やってはいけないことは、焦って、任意売却や競売のことなどを把握せずに進めていくことです。
任意売却が成功したとしても、多額の費用を請求されたりすることもあります。
まとめ
任意売却だけでなく、物や事には良い面と、悪い面どちらも存在します。
誰かにとっては良く作用し、他の人にとってはデメリットだらけという事態もあります。
その人にとって良いか悪いかは人それぞれです。
任意売却ももちろん、多くの人にとっては有効な手段だと思われますが、向いていない方もいます。自分にどちら何が合っているか知るためにも、メリットデメリットを把握しておくのはとても重要です。
そして任意売却を成功させるためには、メリットだけでなくデメリットを把握しておくと問題に対処がし易く、目標を成功させることができるでしょう。
大切なのは、焦らず冷静にです。差し迫った状況であるからこそ落ち着いて問題を見極め、成功に導く方法のメリットデメリットをしっかりと検証し、対処していくのが重要と考えます。