夢のマイホームを購入する際、多くの方が金融機関で住宅ローンを組みます。
住宅ローンの額も多くの場合が、数千万円で35年と長期で組みます。30代でローンを組み、退職と同時に住宅ローンも終了し、老後はローンも無事に完済したマイホームで、ゆったりと年金で生活を送ろうという計画や希望をもって思い切ってマイホームの購入を決めます。
しかし、住宅ローンを組んだがために、破綻してしまう世帯もたくさんあります。
しっかりと再生活を再建できる方もいますが、マイホームも失い、家族も離散し、会社にも知られてしまい、生きる希望も失ってしまうほど悲惨な状況になってしまう方もたくさんいます。
「全国消費実態調査」(2009年)によると、住宅ローンを借りている世帯は、日本全国で約1,104万世帯で全世帯の22%を占めています。そのうち、実際に破綻してしまった「住宅ローン破綻」世帯はどれくらいあるのでしょうか。
正確にその数値を算出したデータはありませんが、住宅ローン破綻をする世帯の割合は0.5%から0.8%程度で、経済状況が悪化した場合に1%を超えることがあるだろうと推定されています。
すなわち、住宅ローンの債務者200人のうち1人~2人という割合になります。
という日本人らしい責任感により、日本人の破綻率の低さと、超低金利時代といわれる現在の環境により、意外と破綻者が少ない現況であると考えられます。
しかし、住宅ローンの破綻者が100人に1人以下だからといって、決して我が家は大丈夫とは安心できません。
実際に破綻している世帯は少ないものの、破綻しないよう、日々の生活を切り詰め、苦しい家計を必死でやり繰りし、なんとか生活を続けている世帯はその数倍にもなると考えられています。
実際に破綻はしていないけど「破綻予備軍」と言われる世帯は、とても多く、マイホームを購入できたからといって希望に満ち溢れた生活を送っている人は住宅ローン世帯の多くを占めているかもしれません。
また、破綻、破綻予備軍となる原因は誰にでも起こりうる可能性があるものです。
例えば、働き手である一家の大黒柱がなんらかの病にかかり、働くことができなくなった場合、もちろん数か月で回復することができる方も多いです。
そうなると、市場の相場よりかなり安い価格で住宅は売り渡され、多額の残債を一括返済しないといけなくなり、そうなると自己破産するしかなくなり、平穏だった生活は激変してしまうことになります。
数か月滞納も、貯蓄からなんとか回避できるよう日々貯蓄などをしっかりと行っている家庭は、難なくクリアできるかもしれませんが、住宅ローンを組んでいる世帯は、子どもも幼く、決して生活に余裕がある世帯とは言えません。
親族の援助などがあれば、乗り切ることもできるかもしれませんが、そうなると親族での肩身が狭くなったり、また近所や会社で噂が広がったりし、いずれにしても元の平穏な生活を送ることができないことはよくあります。
病は、誰かに責任があるとはいえないもので、誰にでも突然襲い掛かる可能性があるものです。また、病だけでなく、会社が倒産や、突然のリストラという事態も昨今とても多くあります。
債務者本人が責任があるというものでなく、一生懸命誠実に生きていても襲い掛かってくる不幸は誰にでも起こりうるものです。
だからといって、住宅ローンを組むことは回避しなければならないものだとも思いません。
日本は2008年のサブプライムローン問題から、超低金利時代と言われ、住宅ローンの金利もなんと1%程度の金利で住宅ローンを組める場合が多い、とても借りてにとってもメリットの高い時代ですし、賃貸のように賃料を払い続けるなら、後々資産にもなる不動産のローンを払い続け、不動産を所有する方がメリットが高いようにも考えられます。
しっかりと、ローンさえ完済できれば、不動産を所有することができ、住むところには困らない生活を手に入れることができます。
それは、住宅ローンが払えなくなったとときに、どのような動きをすればいいのか把握しておくことです。
住宅ローンが払えなくなるリスクは誰にでもあります。しかも債務者の責任ではない事由で襲い掛かるように訪れる事態に、どのように対応するかで、その後の生活が大きく変わります。
- 貯蓄や親類から当面のローンの支払い用立てる
- 1が無理なら不動産を売却することを考え、不動産屋で不動産査定をしてもらう
- 不動産査定額が、住宅ローンの残債務を上回れば、そのまま売却をすすめ、債務を残 すことなく、再生活の再建に努める
- 査定額が大きく、残債務を下回る場合は、
- そのまま売却し、残債務をなんとか工面し、一括で返済し、新生活の再建
- そのまま放置、滞納を続け、競売により売却されるのを待つ
- 専門の業者に依頼し、任意売却の手続きを開始する
上記4つの手段を選択することができます。1~3までで解決できれば問題なくそれで終了です。
もちろん、夢のマイホームを手放すことになったり、慣れた環境を離れないといけなくなるという悲しさや、寂しさ、悔しさはありますが、十分に別の地や、賃貸住宅などでの再出発が可能です。
その時点での生活の水準にあったところで、再生活をスタートできるので、なんとか住宅ローンを払い、苦しい生活を続ける「破綻予備軍」の生活より、精神的にも肉体的にも解放され、リセットでき、快適な生活を送れるという方も多いはずです。
問題は、4の選択肢しか残されていない方です。
4.2の選択肢だと、競売になり、残債務は一括返済しか選択できません。分割払いの交渉などは一切できません。なので、競売ののち、残債務がある場合、なんとか工面して一括返済をするか、自己破産をして借金をなくしてしまうかしかありません。
もちろん自己破産を前向きにとらえ、借金を法的にチャラにし、新生活の再建に努めたいという方にとっては、とてもメリットが高いシステムで利用すればいいと思います。
しかし、お子さんもいる多くの家庭では、なんとしても避けたいと思うのが自己破産かと思われます。
住宅ローンや貯蓄、自動車なども全て手放すことになり、さらには自己破産者であるということが公開され近所の方、また会社の方など誰にでも知られる可能性があります。
親族に知られることも避けたいと思われる方も多いですし、大半の方にとっては、絶対に避けたい事態です。
そのためには、住宅ローンの残債務が、家を売却した後もなんとか、分割などの返済方法で完済することができる手段をとらなければなりません。
それができる可能性があるのが、任意売却という手段です。
4.3の選択肢にある任意売却は、住宅を売却することは同様ですが、一般的な不動産売却の相場と同等の価格での販売が可能で、かつ売却後の残債務を分割での支払いの交渉をすることができます。
それにより、自己破産などすることなく、慣れた環境の地で、賃貸住宅などを借り十分に新生活を送りながら、返済を続けることができるのです。
近年、任意売却を選択される方も増え、取り扱う業者も増えています。
是非この機会に、任意売却がなんであるか、また一般の不動産売却とどう違うのかなどを詳しくお伝えしていきたいと思います。
目次
任意売却と通常の不動産売却
売却価格はそのままもちろん受け取れますが、売却に必要な費用や、所有権の移転登記費用、また引越し費用なども当然ですが、自分で調達し、不動産を引き渡します。
販売中は、内覧の希望者が自宅を訪ねて来たり、または先に退去をし、オープンハウスという形で、誰も住んでいないお部屋を見に来てもらったりもします。
こういった販売活動を通じて、売却するのが一般の不動産売却となります。
任意売却も、一般の不動産売却と外観は同じです。
価格の決定も一般的な相場に沿って決定しますし、内覧希望者に部屋の中を見てもらったりもします。圧倒的な違いは、主導権は金融機関がもっているということです。
住宅ローンが支払ってもらえなくなり、銀行などの金融機関は、住宅ローンを設定したときに、同時に設定した抵当権を行使し、不動産に対しての権利を所有しています。
抵当権は、住宅ローンの滞納が続き、債務者が期限の利益を失う(債権者は債務者に対して、一括での返済の請求をすることができるようになる)ことで、抵当権を行使し、金融機関は不動産を売却することができるのです。
そのような権利をもった金融機関に、任意売却をしたい旨を伝え、交渉をし、金融機関の許可がおりれば、任意売却の手続きをすすめることができます。
任意売却が認められると、売却後に住宅ローンの債務がまだ残っていたとしても、さらに債務を分割にして欲しいと交渉することができます。
さらには、売却費用や、登記費用なども売却価格から差し引いてもらえるので、数十万円もかかる費用は現金で用意する必要はありません。また金融機関の許可さえおりれば、引越し費用も売却価格から引いてもらえることがあります。
新生活の再建をなんとしても図りたいと考えられる方は、なんとかして任意売却を成功させたいものですね。
一般の不動産売却 | 任意売却 |
---|---|
住宅ローンは支払うことができているが、家を売りたい場合 | 住宅ローンの支払いが滞っている |
・売却する価格 ・売却する時期 ・売却先 ↓ 自由に設定できる | ・売却する価格 ・売却する時期 ・売却先 ↓ 銀行が決める |
任意売却とは
任意売却とは、簡単にいうと、住宅ローンが支払えなくなり、不動産を売却しても、住宅ローンの残債務が残り、それを分割払いにして、生活の再建が図り易くなる債務整理の一種と考えられます。
本来であれば、住宅ローンが支払えなくなった場合、銀行は督促状などを送付してもなお、支払いがない場合、住宅ローンの債権を保証会社に譲渡し、保証会社等により裁判所に競売の申し立てがなされ、競売が開始します。
しかし、厄介なのはそれだけではありません。競売により落札された価額は、おおよそ市場の相場7割程度での売却になります。
そうなると、競売により不動産を手放しても、大幅に債務が残ることになります。
競売手続きの場合、分割払いなどの交渉は認められませんので、一括で多額の債務を支払わなければなりません。なんらかの方法で現金を用意するか、法的に借金をチャラにする自己破産を行うしかありません。
自己破産は、法的に生活をリセットさせてもらえる、とても有意義な手段ではありますが、家族がいる方には知人に知られることになり、家族が肩身の狭い思いをするなどの精神的にとても辛い面があります。
困難なことは、クレジットカードや多額のローンなどが7年程組めなくなるなどの不便も生じます。
また、連帯保証人などがいる場合、債務者本人が自己破産をすると、連帯保証人などに支払いの請求がいくことになります。
連帯保証人の許可や同意が必要どころか、ほとんどの場合が連帯保証人も、共に自己破産を行わないと連帯保証人も支払うことができない場合がほとんです。
それに対し、効果的なのが任意売却という手続きになります。
任意売却は、住宅ローンが支払えなくなったら、金融機関に交渉にいき、不動産を売却させてもらう許可をもらいます。
それによって不動産を売却し、残債務は分割払いにしてもらい、生活を再建しながらなんとか完済できるようすすめるのが任意売却です。
しかし、任意売却の許可が必要なのと同時に、売り出し価格なども銀行の許可がないと決定できません。
というのも、銀行は、住宅ローンを貸し出すときに抵当権を取得します。
債務者が支払いを滞ると、期限の利益を喪失し、分割での支払うことができる権利を失います。そして、債権者である金融機関は抵当権の権利を行使することで、不動産を売却したり競売に掛けたりすることができるようになるのです。
住宅ローンの支払いを滞ったり、任意売却の手続きをしようと思うと、全て金融機関の許可が必要となり勝手に売却を行ったりすることはできなくなるのです。
もちろん任意売却の手続きを認めてもらえないこともあります。そうなると、金融機関により競売手続きが開始され、退去するしかなくなり、さらには一括で残債務の返済を強いられることになります。
それらすべてが上手くと、不動産は手放すことにはなりますが、近隣で賃貸住宅等を借り、生活の再建に無理の無い範囲で残債務を分割払いで支払いながら新生活をスタートすることができます。
子どもが幼い場合、できるだけ慣れた環境を離れたくないと思うのが実情です。任意売却なら、一般的な不動産売却ど外観は変わりませんし、無理の無い返済を続けれるので、慣れた地での再生活が可能となるのです。
住宅ローン滞納からの、任意売却と競売の流れ
任意売却の流れ | 住宅ローンの返済状況 | 競売の流れ | |
---|---|---|---|
1 | 任意売却の検討や、専門業者への相談を開始するのがいい時期です。 | ローンの返済が苦しくなる | – |
2 | ローンの支払いが遅れがちになる | – | |
3 | ローン滞納:1~2か月目 | 金融機関から督促状や催告状が自宅に届く | |
4 | ローン滞納:3~4か月目 | 競売申立 「競売開始決定通知」が自宅に届く | |
5 | ローン滞納:5か月目~ | 現況調査 裁判所から執行官が調査に来る(自宅の写真などを撮る) | |
6 | この時期までに任意売却の相談を済ませておかないと、手続きが間に合わなくなります。 | – | 入札の開始 期間入札の通知が届く |
7 | この段階に入ると、任意売却ができなくなります。 | – | 開札 |
8 | – | 売却の許可 | |
9 | – | – | 物件の引き渡し |
任意売却と通常の不動産売却の違い
任意売却も通常の不動産売却も、不動産を売却するという面では全く同じです。
しかし、大きく異なる点がいくつかあります。
それは、任意売却の主体が金融機関であり、金融機関の許可が逐一必要であることです。
また、任意売却が、住宅ローンが支払えなくなった事態に利用できる制度であることから、債務者に支払い能力がないという状況であることを鑑みられ、費用や責任の免除があるという点で通常の不動産販売と異なってくるように思えます。
具体的にどういった場面で異なるのかみていきましょう。
任意売却の価格決定には債権者の同意が必要
通常の不動産販売の手続きを開始する際、まずは不動産の査定を行います。
物件の構造や、築年数、専有面積、近隣の環境などから現況を調査し、同様の不動産が販売されたり過去に販売された事例と比較し、いわゆる一般的な市場の相場で価格を決定します。
早く売却してしまいたいと考える場合は、相場よりも安く売り出したり、また急がない場合は査定より少し高い目に販売し始める時もあります。
通常の販売では、所有者の望み通りで、価格を決定できますし、販売の開始時期や、引き渡し時期までなんでも自由に決めることができ、特別にどちらかの許可がいるなどといったことはありません。
もちろん、住宅ローンの支払いが厳しいとなった状況でも、不動産の査定額が残債務を上回る場合は、残債務が一括返済の請求される心配もありませんので、もちろん金融機関の許可などは必要ありません。(督促状や差押えが開始されている状況では、金融機関の同意が要る場合があります。滞納が開始すると抵当権が行使されることになりますので、なるべく早い売却に越したことはありません。)
一方、不動産の査定額が、残債務を大きく下回る場合は、不動産を売却しても、多額の残債務を一括返済を請求されてしまいます。そこで効果を発するのが任意売却という手法です。
任意売却の手続きをとれば、ほぼ通常の不動産売却と同様に売却でき、さらには残債務を分割で返済できるよう交渉することができます。
しかし通常の売却ではなく、任意売却の手続きをとることを選択した時点大きく、販売するにおいて変わる点があります。それは売主である所有者に決定権はなくなることです。
これは、任意売却であるからなくなるというわけではなく、住宅ローンの支払いが滞った時点で、金融機関の抵当権が行使され、不動産に対する権利は金融機関にあることになっています。
不動産に対して権利がなくなった売主は、売却価格や、売却時期に決定権をもたなくなるのです。
もちろん、売主も、お金を貸している金融機関も、不動産が高く売れて債務がなるべく減ることを望んでいるのは同じですので、それほど意見が異なることもありませんが、金融機関は、なんとか売却出来ることとにかく優先します。
任意売却の決定に債権者の許可が必要
通常の不動産販売とほぼ変わりはないのですが、任意売却は、競売の手続きが完了するまでに売却し、金融機関に精算しなければ、競売が成立し、任意売却は不成立となります。
そのため、およそ任意売却には3か月ほどの期間で成立させなければならないというリミットがあります。
こういった時間の制約は、どうしても不動産の価格に直結してきます。
一般的な相場で不動産の販売を開始できたとしても、1か月ほどで決まらなければ、価格はどんどん下げていかないと、到底3か月で決めることができません。
売り出しで、運良く買い手が見つかった場合は、本当に通常の不動産売却と価格的にも変わらずに販売できたといえます。しかし、時間が経過すると価格を下げていかざる負えないので、おおよそ、相場の8割程度で任意売却が成立することが多いのが実情です。
また任意売却に関する許可は、価格だけではありません。
しかし、同意さえ得られば、売却先が決定した後の、引き渡しに際して必要な引越しの費用も売却価格から差し引いてもらうことができる場合があります。
通常の不動産販売や、競売では、こういった交渉ができないので、任意売却ならではの利点でもあります。
任意売却では、瑕疵担保責任が免除される
瑕疵担保責任とは、法律に定められている不動産の売主の責任です。
これは、外観では分かりにくい、建物の中身のシロアリや、住んでみてしばらくして気付いた不動産の欠陥などに対して対処しなければならない責任です。
しかし、任意売却の場合、売主は多額の残債務を負った債務者であることが多く、損害賠償などの請求をされても対応できないことが配慮され、不動産の売却に際し、「売主は瑕疵担保責任を負わない」という特約を付けて販売することが認められています。
任意売却をすることで、窮地を脱した債務者に、再度窮地が訪れ、残債務の支払いを受けている金融機関ともとても複雑な問題が生じかねません。
こういったこともあり、普通の不動産販売より債務者の再生活を応援してくれるような、任意売却はやはり魅力がいっぱいだと考えられます。
任意売却なら、不動産の売却費用を工面しなくていい
任意売却を行う際、通常の不動産売却と同様以下のような費用が必要です。
- 不動産売却に対する仲介手数料
- 登記費用(所有権移転登記、抵当権抹消登記など)
- 引越し費用
- 新居の初期費用
任意売却に対する費用はありませんが、当然のことながら不動産の売却を行ったので、不動産の仲介手数料が必要です。しかし、こちらは成功報酬で支払うものですので、任意売却が成立しなかった場合、業者に支払う費用は原則的にはありません。
任意売却が無事に成立すれば、上記の仲介手数料から、新居の費用まで、ざっと不動産にもよりますが数十万から100万円ほどかかる程の費用が必要です。
しかし、任意売却は通常の不動産販売の場合と大きく異なる点がこちらにもあります。
それは、金融機関に交渉すれして同意さえもらえれば、上記費用を売却価額から差し引いてもらうことができます。なので、残債務は増えることになりますが、多額の現金を用意することなく、新生活をスタートすることができるのです。
新生活を安心して、またなるべく無理の無いようスタートできるよう考えられた手法のように考えられます。
任意売却と通常の不動産売却のメリット
- 任意売却のメリット
- 市場価格に近い価格で売却出来ること
- 売却後の残債務を分割で返済させてもらえるよう交渉できること
- 引越し費用、売却費用などを現金で工面しなくていいこと(交渉次第)
- プライバシーを守れること
- 引越し時期や条件も交渉次第で決めれる
- 任意売却の費用は実質ゼロ
- 専門の業者が交渉などを行ってくれる
- 通常の不動産販売
- 市場の相場や、自由な価格で不動産を販売できる
- 退去の日を買主との合意で自由に決めることができる
- 残債が無いので、次の不動産も好きに決めることできる
- 滞納者リスト(ブラックリスト)に登録されないのでまたローンなどが組める
任意売却のメリット
市場価格に近い価格で売却出来ること
通常の不動産販売と同様に、一般的な相場を基準として、販売価格を決定します。
しかし、決定するには、債権者である金融機関の承認が必要です。
金融機関も、債務者である売主もなるべく不動産を高額で販売したいという意思は変わらないのですが、金融機関はなるべくはやく売却できることを望みますので、査定より少し低い価額を好まれる場合があります。
売却後の残債務を分割で返済させてもらえるよう交渉できること
住宅ローンの返済を6か月ほど滞ると、銀行などの金融機関は、債務者に対し、残りの債務を一括で返済するよう請求することができます。
これを債務者は期限の利益を失ったといいます。債務者は期限の利益があることで、金融機関に分割払いを許されていたのですが、債務者が支払いを滞り、金融機関との規約を破ったということで期限の利益を失い、分割で支払うことができる権利を失います。
それゆえ、一括で請求されても支払うことができず、競売にかれられることになります。
こういった事態を回避するため、任意売却という手続きをとります。
任意売却が認められれば、不動産を手放すことには変わりはありませんが、残りの残債務を分割で支払っていけるよう金融機関に交渉することができます。
競売になるとこういった交渉もできないため、このような意味でも任意売却はとてもメリットが高いと言えます。
引越し費用、売却費用などを現金で工面しなくていいこと(交渉次第)
任意売却により、一般的な市場の相場で売却できたとしても、引越し費用や、新居の初期費用、また任意売却による不動産の仲介手数料などを支払わないといけないとなると、数十万円から100万円ほどの現金が必要となることがあります。
住宅ローンが支払えなくなった債務者には、そのような現金を工面できないことが一般的だと考えられ、生活を再建するためにも、不動産の売却費用から上記費用を差し引いてもらえるよう、金融機関に交渉することができます。
プライバシーを守れること
住宅ローンを滞納したことにより、住宅が競売に掛けられると、裁判所の執行官や不動産鑑定士が自宅を訪ねて現況調査や、不動産の調査が行われます。
仮に居留守などを使ったとしても、裁判所は権限により強制的に鍵の解錠をすることができ拒むこともできません。そのため、ご近所の方に、競売に掛けられている事実を知られることになり、近隣の賃貸住宅に引っ越したとしても精神的に苦痛を受けることがよくあります。
競売を避けたいと思われる心理には、こういった世間に知られてしまうということを避けるためにも、なんとか競売を免れたいと思われるようです。
しかし、同様に住宅ローンを滞納することとなっても、任意売却が認められると、上記のように、裁判所の執行官が無理やり自宅を調査したりすることはありません。
一般的な不動産販売と同様に、不動産屋が不動産の調査や室内の調査をし、広告や情報をネットに公開することはありますが、任意売却であるという事情も知られることはほぼありません。
多くの方が、なんとか債務を整理し、生活の再建を図りたいと考えています。そのためには、債務の整理も重要ですが、生活の再建が可能である環境もとても重要だと考えます。
ファミリー世帯であれば、お子様が小学校に通っているなどの事情がある方もたくさんいます。なるべく近くに引越し、転校などもせずに、慣れた環境で新生活をおくれることはとても魅力的だといえます。
引越し時期や条件も交渉次第で決めれる
債権者である金融機関に交渉ができれば、引越しの費用を住宅の売却費用から差し引いてもらうだけでなく、引越し時期の調整も可能です。
強制競売だと期日がくると強制的に退去しないといけないので、引越し時期の交渉などは一切できません。
しかし、任意売却であれば、購入者との合意もあれば、売却が決まって最大で2か月程は猶予があるのが実情です。
買い手が無事に決まり、自分たちのペースや計画で新居へ引越しが出来たり、子どもたちの学校の都合などにも合わせたりすることができるので、とても有難い手法といえます。
任意売却の費用は実質ゼロ
任意売却の費用を請求されることは、一般的にはありません。
もちろん不動産売却で必要な不動産売買の仲介手数料は不動産屋へ支払わなければなりません。
しかし、こういった費用は、任意売却で無事に売却ができた成功報酬ですし、金融機関の承認があれば、売却費用から差し引かれ、金融機関から不動産屋へ割り当てられることになります。
また、悪徳な任意売却業者も多く存在します。任意売却を成功させたとして、仲介手数料以外に手数料を請求されることもありますので、業者を選ぶ際にもとても注意が必要です。
専門の業者が交渉などを行ってくれる
任意売却は、不動産知識だけでなく、複雑な法律の知識も必要です。またもちろん知識だけでなく、豊富な経験により複雑な問題を解決しなければいけないのでとても素人が単独で行うのは難しいと考えられます。
そもそも任意売却は、不動産を売却しますので、宅地建物取引主任者の資格を持つものが必ず必要になります。そういったことから、多くの任意売却はを取り扱う業者は、不動産の売却も業務とする不動産屋であることが多いです。
金融機関との交渉も重要な課題ですので、非常に複雑な問題に対処する知識や経験が必要ですので、専門の業者へ依頼することが一般的です。
しかし、上記にも記しましたが、任意売却に関する手数料などを支払うことは一般的にはありません。(不動産売却にともなう仲介手数料は必要)なので、業者へ依頼すれば、あとは金融機関との交渉や、不動産の売却などお任せすることできます。
重要なのは、信頼できる誠実な任意売却を扱う業者を探すことです。
もし、住宅ローンが支払えなくなった、またはなりそうになったらまずは冷静になり、任意売却を上手く達成できるような業者を探すことを考えましょう。
住宅ローンが支払えないという差し迫った状況ですと、債務者の判断力も低下していますので、悪徳任意売却業者にひっかかり、多額の報酬などを請求されることもあります。
通常の不動産売却のメリット
市場の相場や、自由な価格で不動産を販売できる
通常の不動産売却は、当然のことながら全て自分の判断で、自分で決めて売却することができます。
相場の価格で売れれば、残債務が残ることもない状況なので、少し高く売却することも可能です。早く完済してスッキリしたいと思えば、少し安い目に、焦っても無いから少し高い目に売り出してゆっくりと決めたらいいかとするも自由です。
任意売却のように金融機関の承認も、もちろん必要ありませんし、競売のように勝手に落札されることもありません。
退去の日を買主との合意で自由に決めることができる
住宅ローンの支払いさえ滞ることが無ければ、売却が決まっても1~2か月ほどであれば、買主と合意し自由に引渡し日や退去日を決めることができます。
生活の再建に必要な、新居の準備も重要なので、自由に決めることができるのはとてもメリットが高いと考えられます。
残債が無いので、次の不動産も好きに決めることできる
住宅ローンが支払えなくなりそうになっても、住宅が相場より高く売れ、残債務が残らなければ、もちろん次の不動産も自由に決めることができます。
ひとまずは賃貸住宅を借りて新生活を始めることも可能ですし、住宅ローンの滞納をまだしていなければ、滞納者リストにも登録されていないので、住宅ローンを組み、住宅を再度購入することができます。
不動産の残債務さえ残らなければ、通常の不動産の売却ができ、なにからなにまで思うままに決めることができ、一番の理想ではあります。
滞納者リスト(ブラックリスト)に登録されないのでまたローンなどが組める
上記でも記載しましたが、滞納者リストには、およそ3か月程、ローンを滞納すると金融機関などが共有する滞納者リスト(ブラックリスト)に登録されます。
一度登録されると数年消えない場合もありますので、クレジットカードを作成したり、ローンを組んだりすることができなくなります。
しかし、滞納をまだしていない段階、もしくはまだ一度しか滞納していない場合等であれば、登録される可能性は低いと言われていますので、再度住宅ローンを組んだり、カード事情も今までと変わらずに利用することができます。
任意売却と通常の不動産売却のデメリット
住宅ローンが支払えなくなりそうだという差し迫った状況だと、任意売却のような手続きはいいことづくめのように思え、飛びつきたくなりそうです。
しかし物事にはなんにでも良い面と悪い面があり、いいことづくめに思える任意売却にももちろんデメリットがあります。
しっかりと良い面と悪い面を理解した上での決断でないと、あとで想定外の事態になったりと困惑することもあるかもしれません。
また実際に自分たちにとって任意売却がベストなのかどうか、良い面悪い面をしっかりと話してくれ、アドバイスをくれる任意売却業者であるか見極めるためにも、任意売却の全体像をしっかりと把握しておくことは重要です。
また、なんでも自由に決めることができる不動産売却も、自由であるからこそのデメリットもあります。そういったことも今後不動産を所有したりするだけであっても、知っておくことは重要と考えます。
それでは具体的にみていきましょう。
- 任意売却のデメリット
- 任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納しなければならない
- 債権者の同意や許可が必要
- 連帯保証人の協力が必要
- 競売になる可能性がある
- 滞納者リスト(ブラックリスト)に登録される
- 任意売却を行う業者に悪徳業者も多い
- 乱の立ち合いが必要
- 通常の不動産販売のデメリット
- 通常の売主としての責任を負わなければならない
- 仲介手数料を工面しなければならない
- 残債務はないが、生活再建に必要な費用も自分で工面しなければならない
任意売却のデメリット
任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納しなければならない
任意売却の手続きをするには、住宅ローンの支払いを実際に2~3か月滞納し、銀行などから支払いの督促状などが来てからでないと金融機関との交渉をすることができません。
支払いができなくなりそうだから、任意売却をして、債務を整理し、新生活を始めよう!と思っても、実際に滞納することが要件となりますので注意が必要です。
相談だけでしたら、滞納する前から始めても問題はありませんし、綿密な計画が必要な任意売却を時間的に余裕をもって始めるには、早いに越したことはないからです。
債権者の同意や許可が必要
債権者である金融機関は、半年ほど支払いの滞納を続けると、競売の手続きを開始します。
債権者は、競売により売却できた売却価格を返済に充てることができる法的な権利があるので、勝手に任意売却を債務者側で勝手にすすめることはできません。
任意売却は、住宅ローンの残高よりも低い価額での販売ということになりますので当然のことながら、債権者である金融機関の承諾を得てから任意売却の手続きをすすめることになります。
このような交渉段階で、金融機関への交渉の経験が浅く、下手であったりすると、金融機関から任意売却を拒否され競売の手続きを行われることになりかねません。
任意売却はとても有効な手段ではありますが、誰でも必ずできるわけではないということを覚えておかなければなりません。
連帯保証人の協力が必要
任意売却は競売のように公開されることはありませんので、近親者のかたなどにも知られずに済む場合もありますが、手続きを進めるうえで、連帯保証人には必ず知られることになります。
なので礼儀もかねて、しっかりと債務者自身から、連帯保証人の方に、住宅ローンが支払えなくなる旨を伝え、任意売却の手続きをすすめたいと事前に相談を行うなり、伝えておくことが必要です。
これらは、連帯債務者も同様です。住宅ローンが滞納している旨が通知されるので、連帯債務者がそれにより支払ってしまわないように、事前に相談や伝えておく必要があります。
競売になる可能性がある
任意売却は、競売が成立する前に売却し、債権者へ返済をしなければ競売により売却されてしまうことになります。
なので、競売が成立するまでの間、多くの場合は2~3か月ほどで任意売却の買い手がつかなければ、競売による強制退去となります。
任意売却の金融機関による承認が得られたからといって安心はできません。なんとか競売が成立する前に、任意売却の買い手がつかないと競売となる可能性は、十分にあるということを忘れてはいけません。
滞納者リスト(ブラックリスト)に登録される
滞納者リストに登録されるということは、一般に滞納者であることを公表されるわけではありません。滞納者リストに登録されたからといって、会社の方がかや近所の方に知れ渡るといったことはありません。
しかし、滞納者リストに一度登録されると5~7年ほどは、大きなローンを組んだり、クレジットカードを新規で作成することが難しくなります。というのも、滞納者リストというのは、信用情報といい、金融機関などが共有している滞納者の情報が記載されているものです。
ローンやクレジットカードに加入する際に、審査をされますが、そういった際に金融機関は信用情報を確認し、貸し出したり、クレジットカードを作成しても問題がないものかどうかを判断します。
明確には公表されていませんが、長くても10年ほどで多くの方が、再度ローン組んだりすることができるようになっています。
もし、なんとか工面すれば住宅ローンを支払い続けれるなら、滞納はせずにマイホームに住み続ける場合がいい場合もありますし、債務を整理するために任意売却を進める方がいい場合があるかと思います。
任意売却を行う業者に悪徳業者も多い
任意売却は通常の不動産取引に加え、法律の知識や豊富な経験が必須となります。
というのも、任意売却は住宅ローンを延滞したからといって、必ず進めることができるものではありません。任意売却をしたい旨を伝え、債権者が同意してくれる販売価格や条件を検討し、金融機関に交渉しなければなりません。
しかし、任意売却を行う業者には悪徳業者が多いのが実情です。
なぜなら住宅ローンを支払えず、マイホームがなくなり、さらには残債務の一括請求をされかもしれない差し迫った状況であり、任意売却で生活の再建を図れるなんて夢のような話を聞かされると、その業者の実態がどうであるかを深く判断することなく、債務者はその業者に任せてしまうことになります。
債務者が差し迫った状況で、藁にも縋る思いである状況につけ込んでくる悪徳な手法です。このような業者に引っかかると、任意売却が成功しようとしまいと、報酬や手数料を要求されたりすることがあります。
このような悪徳業社に引っかからないためには、事前に任意売却がどうのようなものであるか、またどのような業者に任せるのがいいのかを知っておく必要があります。
知識があることで、住宅ローンが支払えないという窮地に至った場合でも、きっと冷静に判断ができることでしょう。
ここで、悪徳な業者にひっからないための3つのポイントをお教えしたいと思います。
- 弁護士が主体となっている業者であるか
- 税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
- 「任意売却専門」などのうたい文句にだまされない!
1.弁護士が主体となっている業者であるか
任意売却は、分類すると、債務整理の一種と考えられます。
一般的にも債務整理を依頼する場合は、多くの方が弁護士事務所や司法書士事務所へ相談に行きます。
任意売却も債務整理の一種ですので、弁護士などの法律の専門家が主体となって問題の解決にあたってもらえることが任意売却を成功させるためには重要と考えられます。
しっかりと任意売却に関しての実績やノウハウのある弁護士などが、主体となって取り組んでくれる業者であるかを判断しなければなりません。
2.税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
任意売却は、不動産取引です。不動産を売却し、債務を返済するという債務整理です。
債務整理に弁護士などの法律家がいたとしても、宅地建物取引業免許を持っていない限り、不動産取引を行うことができません。しかし、一般的な不動産会社ですと、法律の知識や経験などがある特殊な専門知識がない不動産会社では任意売却はできません。
大手の不動産会社に任意売却を依頼したのに、競売になってしまったという事例はたくさんあります。
3.「任意売却専門」などのうたい文句にだまされないこと!
任意売却を成功させるには、法律や不動産の知識や経験が豊富であることが重要です。
弁護士や、宅地建物取引主任者だけでなく、税理士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家の判断が必要な場合も多々あります。
いかにその業者が、多くの専門家と連携がとれているかなども把握しておくことが必要です。任意売却では、基本的に費用はかかりません。
必要があれば、任意売却が成立したあと、売買代金から債権者が許可した額が差し引かれるので、債務者が自己負担することはありません。
もし任意売却の相談に行った際に、こういった費用の話をされた場合や、におわされた場合は、その業者は避けた方がいいかもしれません。
内覧の立ち合いが必要
任意売却は通常の不動産売却と同様に、不動産情報誌や、不動産情報サイトなどに掲載され、実際に部屋の中を見たいという購入希望者の方などに、内覧という形で家の中を見学にきてもらう場合があります。
その内覧に立ち会う必要もありますし、居住中に他人が自宅に入り、部屋の中を見て回られるという精神的に辛い思いをすることもあるかもしれません。
もちろん先に退去を済ませることもあります。そういった場合はオープンハウスとして空き家を見てもらうことになるので、生活を見られるということはなく、任意売却を済ませることができます。
通常の不動産販売のデメリット
通常の売主としての責任を負わなければならない
通常の不動産売却時には、自宅を引渡し、かつ瑕疵責任を負います。
上記で、任意売却となった場合は、瑕疵担保責任を免除してもらうことができるとありましたが、通常の販売ではそうはいきません。
また、費用面でも任意売却は自分で現金を工面しなくても良いというメリットがありましたが、通常の販売では、仲介手数料から登記費用、引越し費用など全てを現金で工面しなければなりません。
仲介手数料を工面しなければならない
上記でも記載しましたが、通常の販売では、任意売却のように売却費用から差し引いてもらい、後日返却していくなどの制度はありません。
しっかりとした計画をもって売却することが重要となります。
残債務はないが、生活再建に必要な費用も自分で工面しなければならない
めでたく買手がつき、引越しをしないことなっても、新居で必要となる敷金などの初期費用や引越し費用が必要です。債務より余分に高く売却できれば、金融機関へ返済をしても余分に残り、新生活の再建費用などに充てることができます。
そういったことも念頭に起き、売却手続きを進めることも肝心ですし、どうしても自己資金の捻出が難しい場合は、あえて任意売却の手続きをとり、新生活の再建をし易い方を選択する方もいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。住宅ローンが支払えそうになくなった場合、または払えなくなった場合、とれる手段はいくつかあります。
どの手段が、自分や家族にとって最適であるかを冷静になり考えることが重要です。通常の不動産販売、任意売却、競売、どれも長所と短所があります。
窮地に落ち至ったときは、自暴自棄になったり、もしくは甘い話に飛びついたりしがちです。しかし、そんなときこそ冷静に、何が自分にとって、家族にとってベストであるのかしっかりと考えてみましょう。
自分のため、家族のため、債務を整理し、新生活をなんとか再建するために努めようと思うなら、そんな時こそしっかりとご家族と話し合い、また連帯保証人の方がいる場合は、そのような方にもしっかりと相談し、理解を得て、進めていくのが重要かと思います。