住宅ローンの返済が困難になったら?
夢のマイホームも購入し、順調に毎月支払いを行っていて幸せな時間を過ごしていても、突然何らかの理由で住宅ローンが支払えなくなることは誰にでもあるリスクです。
もちろん、収入に合わない、多額の買い物や豪遊をしていて支払えなくなる場合もありますが、予期せぬリストラや、突然の病気におかされ働くことができず、収入がなくなってしまうなどは、よほど裕福な世帯でない限り、どの世帯にでも起こりうる災難です。
実際、夢のマイホームを購入して、順風満帆に見える家庭はたくさんありますが、実際の家計は火の車で、なんとか住宅ローンを支払うことで精一杯という家庭はたくさんあります。
そういった家庭も今は、なんとか支払いができていても、いつ支払いが滞ってしまうかわかりません。
かといって、マイホームを購入し、住宅ローンを組むことがとてもリスクが高く危険なものというわけではありません。
現在日本は、超低金利時代と言われるほど、金利は市場最高というほど安く、ローンを組むメリットもとても高いと思います。また老後の生活を考えると、老後に住宅だけでも資産としてあれば、安心して老後を迎えることもできます。
住宅ローンが支払えなくなるリスクは誰にでもあるからといって、住宅ローンを組むことが間違っているというわけではありません。
住宅ローンを組んでいる方なら誰でも、もし住宅ローンが支払えなくなるかもしれないリスクを自覚し、
- 支払えなくなったときにどうしたらよいのか
- どのように清算する手段があるのか
- 家族がいるならどのような手段がベストなのか
などを知っておく必要があります。
一般的には、住宅ローンが支払えなくなると、銀行などの金融機関に差し押さえられ競売に掛けられ、自己破産してしまうなどという恐ろしいことを想像されるかと思いますが、実際にそのようなパターンももちろん存在します。
しかし、このようなパターンを望まれないなら、これを回避する手段があります。それが「任意売却」という手段です。
名前だけは聞かれた方も多いかと思います。近年、利用されるかたも増えている任意整理の一種で、不動産を売却することで、債務整理をすることができます。
ただ不動産を売却するだけではありません。通常の不動産売却では、住宅ローンの債務を完済することができない場合に、債務を削減したり、分割払いとしてくれるものです。
不動産を手放すという点では、通常の手法で不動産を売却する場合と、競売の場合でも同じですが、決定的に違うのが、不動産を売却してもなお、住宅ローンの債務が残る場合に、自己破産することなく、新生活を再建しながら整理された債務を支払い続け、完済することができるということです。
ご家族がいる方は、できるだけ家族に負担がないよう生活の再建を図りたいと望まれます。
そういった場合に任意売却はとても有効に働き、上手く成功させることができれば、マイホームは手放すことになりますが、ご家族そろって新生活の再建を図ることができます。
現状は住宅ローンの支払いに問題がなくても、しっかりと万が一の時を想定して、家族の為に貯蓄などをしっかりと行うとともに、万が一のときにとれる手段を把握しておくことは、住宅ローンを組む上でとても重要と考えます。
是非この機会に、住宅ローンの支払いが困難になったらするべきことをしっかりと学んでみましょう。
住宅ローンの返済が困難になったらするべきこと
住宅ローンの返済が困難になったら、まずは嘆いてばかりいずに、債務を清算し、新生活の再建をどのようにすればできるかを考えてみましょう。
なんとか、現金を工面し、住宅ローンを支払い続け、住宅に住み続けるというのも一つの手です。しかし、長い目で見て、お金を借り続けるなど無理があると考えた方には、不動産を売却し、債務を整理することができます。
そして不動産を売却するのに、3つの手段があります。
- 通常の不動産売却を行う
- 競売にかけてもらう
- 任意売却の手続きを行う
通常の不動産売却とは、街の不動産屋などに売却を依頼し、不動産の査定等を行い、一般的な方法で不動産の販売活動を行ってもらい、買い手が見つかれば売却し、その売却代金で住宅ローンを清算するという方法です。
不動産の売却代金が、住宅ローンの残債務を完済できれば問題はありません。
不動産を売却した場合、残った債務があるとそれは、住宅ローンを借りている銀行や金融機関へ一括で返済しなければなりません。
抵当権を抹消するためには、当然のことながら債務を返済しなければ、銀行などの金融機関は応じてはくれませんので、必ず残債務が発生する場合は、いくら高額であろうと現金で一括返済しなければなりません。
不動産を売却することで、住宅ローンの債務を完済することができる人はこの手法で問題ありませんが、住宅ローンの債務が残ってしまう場合、またその残債務を一括で返済できない方は、こちらの手法を利用すると、残債務の支払いのために自己破産するしかなくなってしまいます。
ご家族がいる場合、将来のことも考えると、自己破産は避けたいと考えられる方が多いはずです。そういった方には通常の不動産売却は向かないと考えます。
そして、2番目の手法は、競売にかけてもらい不動産が落札され売却されるのを待つというものです。
競売の手続きとは、住宅ローンの支払いを3カ月程滞納することで、銀行などの金融機関により住宅の差押えが行われます。
それにより、銀行などの金融機関は、抵当権に基づく権利の行使により、不動産などの売却などが行えるようになりますので、裁判所にて競売の手続きを開始します。
競売の場合でも、多額の債務が残っても分割の返済などが認められず、一括で返済しなければなりません。
住宅ローンが支払えなくなった方というのは、多額の残債務を現金で用意できる方はほとんどいないのが実情で、多くの場合が自己破産ということになってしまいます。
自己破産も確かにメリットはありますが、所有できる資産に制限があったり、資格によっては制限され仕事を続けることができない方もいます。
また、自己破産は、公告という形で世間に自己破産者が公表されるので、知人や近隣のかたにも知られてしまうことになり、精神的にもとても苦痛を強いられることがあります。
これらにより、新生活の再建というのはとても困難になることがあり、住宅は手放すけれども、新生活をリセットし、スムーズに進めたいと考えられる方には不向きかと考えます。
そこで、上手く成功させることができれば、新生活がより再建しやすく、通常の不動産売却を行ったときと見た目は同様に新生活を始めることができ、また不動産を売却してもなお残ってしまった残債務も、分割で無理の無い範囲で支払いを続けていくことができます。
それでは、今回は任意売却を他の競売や、通常の不動産売却との比較をしながら詳しくご紹介していきたいと思います。
任意売却とは
本来であれば、住宅ローンが支払えなくなった場合、銀行は督促状などを送付してもなお返済をしてもらえない場合、住宅ローンの債権がを保証会社に譲渡され、保証会社等の金融機関により裁判所にて競売の手続きが開始されます。
競売が開始すると半年ほどで、落札され不動産の譲渡先が決まり、退去日を言い渡され、否応なしに退去することになります。債務者がなんらの手続きを行わなくても、勝手に裁判所にて競売が行われ、退去しなければなりません。
しかし、競売を避けたくなるのこれらだけの要因だけではありません。競売により落札された価額は、おおよそ市場の相場の7割程度での売却となります。
そうなりますと、競売によりマイホームを売却したとしても、多額の残債務が残ってしまうことがあります。
自己破産となりますと、連帯保証人の方がいらっしゃるときなどは、連帯保証人の方も共に自己破産をしなければ、債務者の本来の債務が、連帯保証人が完済しないといけなくなるので多大な迷惑をかけることになりかねません。
こういった理由から、一般的には自己破産を避けたいと考えられますが、一括で返済するためには、多額の現金を工面することが必要で、住宅ローンの支払いを滞納しないといけなくなった方には、無謀ともいえる状況となります。
同じような局面で、こういったことを丸ごと回避できるのが、『任意売却』になります。
任意売却でも同様に不動産の売却を行いますが、販売手法は、通常の不動産販売同様、不動産屋にて行われます。
不動産情報誌や不動産情報サイトなどにも掲載され、もちろん業者同士が情報を共有している指定流通機構レインズにも掲載され、通常の不動産同様に販売活動が行われます。
さらに、価格も通常とおり不動産の査定が行われ、市場の相場に合わせた価格で販売されることが多く、思い入れのあるマイホームを売却するのに精神的にも進めやすくなります。
ただし、任意売却は、競売の手続きが完了する前に、任意売却での買主が決定し、決済、引渡しが完了していなければ競売が完了してしまい、任意売却の手続きは失敗ということになります。
なので任意売却は、販売活動が行われる期限が限られています。約3カ月ほどで完了しなければいけないので、どうしても価格は市場の相場よりも少し安い価格での売却ということが多くなります。
しかし、任意売却は、さらに大きなメリットがあります。
任意売却では、不動産売却をしてもなお残る残債務が分割での支払いが認められることがあることです。
競売や不動産売却では、分割での支払いの交渉をする余地は無いので、任意売却の大きなメリットといえます。
分割の支払いが許されることで、のちの新生活の再建はよりスムーズにすすむはずです。
さらには、多くの場合、新生活の再建の無理の無い範囲での月々の支払いが許され、しっかりと新生活を安定させながら、完済することができます。
というのも、競売や自己破産となると、近隣の方に住宅ローンが支払えなくなったことが知れ渡り、その慣れ親しんだ地域を離れないといけなくなることがあると思います。
任意売却では、通常の不動産売却と見た目はなにも変わらないので、慣れ親しんだ地域で賃貸住宅を借りて新生活を始めることができます。
小さなお子様がいる家庭では、子どもを転校させたりするのは親子共々精神的な負担になることがあるかと思います。
そういった場合でも、転校させることがなく新生活を始めることができるので、任意売却ならではのメリットだと考えられます。
もし、住宅ローンが支払えなくなったら、まずは不動産を普通に売却するか、そして任意売却を検討してみてはいかがでしょうか。
以下により詳しく、競売や通常の不動産売却と比較しながら、任意売却をより知って頂けたらとおもいます。
それでは、みていってみましょう。
一般的な不動産売却との違いは
一般的な通常行われる不動産売却とは、街の不動産屋でネットにて不動産の査定を申込み、相場から販売価格を決定し、不動産屋で販売してもらうことをいいます。
売却により受け取った代金は自由に使うことができ、返済が必要な場合は、それを返済に充てることになります。
さらに、当然のことながら不動産の売却に必要な、仲介手数料や、登記費用、引越し費用などは自分で調達し支払う必要があります。
販売中は、内覧の希望者が自宅を訪ねてきて売主として部屋を見学させてあげたりもします。こういった販売手法が一般的な通常の不動産売却と言えます。
任意売却も、見た目は一般の不動産売却と同様です。価格の決定も一般的な相場に沿って決定しますし、内覧希望者には部屋の中を見せる必要もあります。
しかし、販売をするにあたり大きな違いがあります。
それは、売主は不動産の所有者である債務者本人であるにも関わらず、価格などの決定権限は金融機関がもっているということです。
銀行などの金融機関は、住宅ローンを設定すると同時に設定した抵当権を行使することができ、不動産に対して処分する権利を所有しています。
抵当権は、住宅ローンの滞納が続き、債務者が権限の利益を失う(債権者は債務者に一括出の返済の請求をすることができるようになる)ことで、抵当権を行使し、金融機関は、不動産を売却することができるのです。
任意売却が開始されるときは、住宅ローンの滞納が続いた時となりますので、すでに債務者は期限の利益を喪失しており、金融機関は抵当権に基づき売却などの処分を行う権利を行使することができます。
任意売却では、債務者は所有者でありながら不動産に対する権限もなく、デメリットに感じるかもしれませんが、通常の販売では、自由に売却ができる分、不動産を売却することで債務を完済することができればそれでいいですが、もしできなければ一括返済をしなければならないですし、仲介手数料や新生活に必要な引越しの費用や賃貸を借りる初期費用までも用意しないといけなく、住宅ローンが支払えない状況の債務者には非現実的な手法といえます。
しかし、より不動産を高額で売却することができますし、債務をなんらかの手法で完済することができ、新生活も始める余力があるなら、ブラックリスト(信用情報)にも登録されることも無く済むこともあるので、一般的な不動産売却ば望ましいと考えられます。
競売との違いは
競売とは、住宅ローンなどの滞納があった場合に、金融機関などの債権者が裁判所へ競売の申し立てを行い、裁判所にて競売が開始し、落札者が決まると住宅が売却されることになります。
さらに、不動産を売却してもなお残る債務は一括で返済しなければなりません。任意売却のように、分割での支払いの交渉はなく、期限までに全額返済することができなければ法的に自己破産するしかなくなります。
売却価額も、市場の相場よりも低くなることも多く、落札者が決まらないと、価格はより下がっていくこととなり、残債務はより増えていくこともあります。
競売というのが具体的にどのように進んでいくのか知らない方も多いと思うので、ここで競売の流れをご紹介したいと思います。
1 | 住宅ローンの返済がストップ | 住宅ローンの返済の滞納が開始されます。 2~3ヵ月ほどで金融機関から督促状などが送られてきます。 | 約3~6ヵ月 |
---|---|---|---|
2 | 個人信用情報に登録される | これにより、5~7年は新規でローンを組んだりができなくなります。 | |
3 | 「期限の利益の喪失」 | 分割返済の権利を失い、一括で残債務を返済しなければなりません。銀行などの金融機関は、債務者からの返済がないため、保証会社や債権回収会社に債権を引き渡します。 | |
4 | 保証会社等により、ローンの残高が一括返済される | 保証会社等により、ローンの一括返済がされることにより債権者は今後、銀行ではなく保証会社などの金融機関となります。 | 約1~2カ月 |
5 | 保証会社等により競売の申し立てが行われる | 競売が開始されます。 | |
6 | 競売開始決定・差押え | 競売開始決定通知書が債務者に送付されます。 | 約3~6ヵ月 |
7 | 執行官により現状調査 | 執行官が自宅に来て、現況の調査や写真を撮りにきます。 | |
8 | 評価・物件明細書作成 | 競売物件を購入したい方たちが、検討できる資料が公開されます。 | |
9 | 売却基準価格の決定 | 売却基準価格を支払わないと、購入希望者は入札することができません。債務者もなんとか競売を阻止したいと思ってもこの売却基準価格が支払えないと自分で落札することもできません。 | |
10 | 売却実施公告 | 新聞・情報誌・ネットに掲載されます。これにより一般の方が見れるようになり、プライバシーが公に公開されることになります。 | |
11 | 入札 | 購入希望の方々がそれぞれ金額を提示し、高額の者に決まる仕組みになっています。 | |
12 | 開札 | 所有権が落札者に移り、債務者である旧所有者は権利を失うことになります。 | |
13 | 引渡し命令・強制執行 | 強制的にドアを開けられ、家財・荷物など外部に出されてしまいます。もちろん鍵も好感され、二度と債務者は不動産へ立ち入ることもできなくなります。 |
強制競売でも、誰にとってもデメリットであるとは限りません。競売が有利であるという場合もあります。
どういった場合が、有利になるかを紹介しておきたいと思います。
競売のメリット
- 手間いらず
- 自己破産すればいい
- 通常の不動産販売や任意売却などより、長くマイホームに住み続けることができる。
手間いらず
競売は、債権者である金融機関から催告状が送られてきて、それでも住宅ローンの滞納が続く場合に、金融機関が裁判所へ申立て、勝手に競売が開始されます。
その後も、裁判所から通知が届いたりしますが、債務者はなにもしなくても自宅の写真を撮りに裁判所員が来て、自宅の写真や自宅の情報を競売のインターネトサイトなどに掲載されます。
そして入札が始まり、債務者の意によらず落札者も決まり、退去日が告げられ、退去することとなります。
期日になっても退去しない場合は、強制的に荷物も出されることにもなりますから、債務者側は何もしなくても、荷物を出してもらえることになります。
通常の不動産売却や、任意売却では、全て債務者自身が動かないとなにも始まらないですし、すすみません。業者とのやり取りなども精神的にも辛い時もあります。
心配をかける家族がいない場合や、家族共に競売を望む場合、また、住宅ローン以外にも多額の債務があり、生活の再建を図るよりもまず、自己破産を行い、債務を清算してしまいたいと考える人にとても向いている手法だと考えます。
自己破産すればいい
競売は、一般的な相場よりもはるかに安い相場での売却ということになります。
なので、競売が成立し、住宅ローンの残債務に充てられたとしても、まだ多額に残債務が残るのが一般的です。そうなった場合、残債務は一括で返済しなければなりません。
任意売却とは異なり、一切の交渉ができませんので、分割の返済の請求などもすることができません。
多額の残債務はどうにかして工面するか、最終的には自己破産するという流れになります。
しかし、自己破産を望まれる方もいます。住宅ローン以外にも多額の債務がある場合や、連帯保証人などもおらず、迷惑をかける相手がいない場合、また弁護士などとも協議を行い、自己破産によるデメリットなども理解した上で計画的に行う場合など、任意売却を行うよりも競売で手間いらずで売却してしまい、後の残債務に関しては自己破産するという流れになります。
自己破産によるデメリットを踏まえたうえでの判断であれば、特段競売が不利であるとは言い切れないのです。
通常の不動産販売や、任意売却に比べると比較的長くマイホームに住むことができる
意外に感じられるかと思いますが、競売による手続きが、住宅ローンを滞納してから退去まで、より長くマイホームに住み続けることができる傾向にあります。
というのも、通常の不動産販売であれば、買主が決まれば、合意のもと退去日を決めることになりますが、長く滞納を続けると競売が開始されてしまいますので、より早く売却でき、引越しも済ませることができることが望まれます。
早く買主が見つかれば、2,3カ月で引越しをすることとなるでしょう。
任意売却に関しても、競売が落札され、成立してしまうと取り消しはできないので、任意売却は不成立に終わってしまいます。
なので競売が成立する前に、買主が決まり、引渡しが済んでいなければなりません。
そのためには、やはり滞納を開始して、任意売却が開始できるのが滞納から3カ月経過してからですので、滞納1カ月目からすると、販売期間は3カ月ほどと考え、最短で5~6ヵ月で引渡しが済んでいないといけないことになります。
一方、競売は、滞納が3カ月程となると、金融機関より申し立てられ、不動産の査定や調査などが始まります。
競売が開始され、すぐに決まった場合は、およそ滞納から6~8カ月での退去となります。しかし、落札者がいない場合は、特別売却という手続きが開始され、先着順で買受可能価額で購入することができるようになります。
それでも買受人が現れない場合は、か買うが下げられて繰り返し特別売却が続けられます。理論的には、これによって買受人が現れない場合、延々と住み続けることができるということになります。
1年、2年と住めることがあるかもしれません。マイホームに少しでも長く住みたい、それが何よりの望みがだと考える方にとっては、一つの手もかもしれません。
しかし、買受人が現れないということは、マイホームの価格はどんどん引き下げられていって、住宅ローンの残債務は逆に増えていってしまします。
またローンだけではなく、未だ所有権は債務者にありますから、債務者名義のマンションの管理費や税金などもどんどん溜まっていくことになります。
ただ長く住み続けることができるという点にだけスポット置くと、大変なことになるかもしれないので、注意が必要です。
以上が競売がメリットに働く場合です。
マイホームに住むことができる期間も、おおよそ、任意売却では、競売よりかは短く、通常の不動産販売よりは少しは長くといった具合で、ちょうど間の期間でマイホームに住み続けることができます。
また、任意売却では分割の支払いを交渉することができ、自己破産を免れる可能性があります。
さらには任意売却の費用もかかりませんし、仲介手数料、登記費用、引越し費用なども不動産の売却価額から差し引いてもらうことができ、残債務に組み込む形で、分割で支払っていくことができます。
とはいえ、任意売却にもデメリットがあります。
物事には、両局面があります。かならずいいと思われるものにも、デメリットはありますので、良いことづくめにに思える任意売却のメリットデメリットもしっかりと把握しておきましょう。
任意売却のメリットデメリット
任意売却のメリット
- 市場価格に近い価格で売却できる
- 売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
- 引越し費用、売却費用などが売却費用から引いてもらえる
- プライバシーを守れる
- 引越し時期や条件も考慮してもらえる
- 任意売却の費用はかからない
- 専門の業者に依頼することができる
①市場価格に近い価格で売却できる
上記でも記しましたが、任意売却の販売手法は、通常の不動産売却とほぼ同じです。
不動産の価格も市場の相場を基準に決めることになります。
ただ任意売却を確実に成立させるために少し相場よりも安く販売を開始したり、また任意売却は、金融機関などの承認がなければ、販売価格を決めることができないので、販売価格をより低くしじされることもあります。
しかし、基本的には、市場の相場に沿って決められることになるので、通常通り販売した場合と同等のメリットがあると考えられます。
②売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
住宅ローンの返済を6ヵ月ほど滞ると、期限の利益を失い、金融機関へ残債務を一括で返済しなければ行けなくなります。
強制競売となった際も、競売での売却代金を差し引いた残債務を一括で返済しなければなりません。
そしてその交渉が認められたなら、新生活に無理の無い範囲を考慮して、月々の分割の返済が決められます。
おおよそ、月々10,000円から50,000円程度となることが一般的で、就業状況や、債務の状況、また健康状況なども考慮して決められることになります。
③引越し費用、不動産の売却費用などが、不動産の売却価格から差し引いてもらえる
任意売却では、通常の不動産売買取引と同様の諸経費がかかります。
例えば、仲介手数料、抵当権設定登記の解除費用、全治物の撤去費用など債務者にかかる費用は、通常の売却と同様にかかってきます。さらに売却が決定したら、引越しをしなければなりません。
引越し業者に支払う費用だけでなく、賃貸住宅を借りる場合には、敷金礼金などのまとまった初期費用が必要になります。
④プライバシーを守れる
任意売却での不動産の販売活動は、通常の不動産の販売活動と同様に行われるため、住宅ローンが支払えなくなった状況などが近隣の方や、知人、世間に知られずに済むことが多いです。
また競売が開始されると、新聞や情報誌、また競売のインターネットサイトなどに住宅の情報や個人情報が公開されてしまい、競売が行われていると近隣の方や知り合いの方に知られてしまします。
そういった事情が知られずに済むことで、近隣での再生活がよりしやすくなります。
小さなお子様がいるご家庭では、慣れた環境での新生活の再建を望ましいと思われる方が多いはずです。こういった面での任意売却はとてもメリットが高いと考えられます。
⑤引越し時期や条件も考慮してもらえる
債権者である金融機関に交渉次第で、引越しの費用を住宅を売却した代金から差し引いてもらうことができます。
全ての案件でできるわけではありませんが、交渉が上手くいけば数十万円とかかる引越し代金を自分で捻出することなく、引越しができるので住宅ローンが支払えなくなった差し迫った状況ではとても助かるはずです。
一般の売却や、強制競売ではこういった交渉ができないので、他にはない大きなメリットだとも考えられます。
退去日に関しても、買主が決まり、合意の上で引渡し日を決めることになります。
金融機関の承認も必要ですが、合意の上で決めることができるので、自分たちの計画を立てて引越しができることは、新生活の準備などを考えるととてもメリットが高いと考えられます。
⑥任意売却の費用がかからない
任意売却の費用を、請求されることは一般的にはありません。
もちろん不動産売却にかかる一般的に必要な不動産売買の仲介手数料は不動産屋へ支払わなければいけませんが、任意売却で売却した売却価額から差し引いてもらうことができます。
よって、手続きのさなか、まとまった現金を用意する必要のない事も大きなメリットだと考えられます。
⓻専門の業者に依頼することができる
任意売却は、素人では判断が難しい法律の知識や不動産の知識が必要となり、かつ金融機関との交渉も必要です。
そして上記にも記載した通り信頼できる業者でしたら、手続きをお任せして、かつ任意売却の費用も自腹で捻出する必要もないので、差し迫った状況ではとても有難いシステムになっています。
しかし、そういった差し迫った状況では、債務者の判断能力も低下しているので、悪徳の業者に引っかかり、多額の成功報酬等を請求されることがあります。
支払いができそうになくなったら、まずは冷静に今後のことを考え、任意売却を進めたいと考えるなら、まず安心、信頼できる業者を探し、依頼することが先決となります。
任意売却のデメリット
- 任意売却の手続きの要件として実際に住宅ローンを滞納することが必要
- 債権者の同意が必須
- 連帯保証人の協力が必要
- 競売になる可能性がある
- 信用情報にのる
- 任意売却を行う業者には悪徳業者も多い
- 内覧の立ち合い
①任意売却の手続きの要件として実際に住宅ローンを滞納することが必要
任意売却の手続きを開始するには、まず住宅ローンを実際に2~3カ月滞納し、銀行などから支払いの督促状等が来てから、金融機関との交渉が可能となります。
債権者である銀行からの督促状や、支払通知書などが届いたら、どちらかの任意売却を扱う業者へ相談にいくといいです。
もちろん相談だけでしたら、滞納する前から始めても問題はありません。そのほうが綿密な計画も立てられるので、相談や、任意売却を進める準備は早いに越したことはないでしょう。
②債権者の同意が必須
債権者である金融機関は、半年ほど支払いの滞納が続けば競売を行い、競売による売却代金を貸出金に充当することができます。
住宅ローンの残高よりも低い価額での販売ということにもなりますので、債権者である金融機関の承諾を得てから任意売却の手続きをすすめることになります。
また、大手の業者であるから安心というわけではありません。多くの大手の業者が任意売却を行い、競売となってしまったケースがたくさんあります。
③連帯保証人の協力が必要
住宅ローンを滞納すると連帯保証人にも請求が行きます。その際に連帯保証人自身が支払いをしてしまうと、任意売却をすすめることができなくなります。
任意売却は、競売のように公開されることはありませんが、連帯保証人の方には、支払えなくなる旨を伝え、任意売却の手続きを進めたいと事前に伝えておく必要があります。
連帯債務者も同様に、住宅ローンを滞納していると通知がされるので、連帯債務者がそれにより支払ってしまわないように事前に伝えておく必要があります。
④競売になる可能性がある
任意売却では、競売が成立する前に売却が完了し、債権者へ返済が完了しておかなければなりません。競売が成立する前に、買い手がつかないとそのまま競売が成立してしまい、強制退去となってしまいます。
さらには、多額に残った残債務の一括支払いを命じられることとなり、一括での支払いができないなら、自己破産という事態に追い込まれてしまいます。
できることなら、なんとか住宅ローンを支払い続けるか、売却しなくても済むような手段がとれるなら検討しておくべきです。
任意売却の手続きを始めることができるというだけで、決して安心してはいけません。
⑤信用情報に登録される
信用情報に登録されるということは、一般に公開されるということではありません。
信用情報とは、金融機関等しか見れないものですし、決して滞納などがあったということが世間に知れ渡るわけではありませんので注意して下さい。
多くの場合、審査で信用情報を金融機関などで確認され、審査には落ちることになります。
しかし、明確にはわかりませんが、長くても10年経てば、多くの方が住宅ローンや自動車ローンなどを組むことができたり、クレジットカードにも加入することができています。
任意売却をすすめるには、住宅ローンを滞納する必要がありますので、必ず信用情報には登録されるということを知っておかなければなりません。
⑥任意売却を行う業者には悪徳業者も多い
任意売却は通常の不動産取引に加え、法律の知識や豊富な経験が必須となります。
というのも、任意売却は債務整理一種だと考えることができるからです。
専門的なお金の問題や、法律の問題に経験や実績のある業者でないと、交渉を上手く運ぶことができず、任意売却を成功させることができないことがあります。
また、任意売却を開始したいと業者を探している債務者は、とても差し迫った状況でもあり、冷静な判断ができないことがよくあります。
そのような差し迫った状況を狙ってますので、債務者も簡単に引っかかってしまうことになります。
任意売却の業者を探す際に注意したい3つのポイントをお教えします。
任意売却を行う業者選びの3つのポイント
- 弁護士が主体となっている業者かどうか
- 税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通して居る者がいるかどうか
- 「任意売却専門」などのうたい文句にだまされないこと
1.弁護士が主体となっている業者かどうか
任意売却は、債務整理の一種と考えられます。
債務整理とは、過剰に増えた債務などを整理し、債務者が支払いを続けられるよう整理してもらうものですが、法律の知識や経験が必須となります。
一般的にも債務整理を依頼する場合は、多くの方が弁護士事務所や、司法書士事務所へ相談へ行きます。
任意売却も債務整理の一種ですので、弁護士などが主体となって問題の解決にあたってもらえることが重要となります。
しっかりと任意売却に関しての実績やノウハウのある弁護士などが主体となって動いてくれる業者であるかを判断しなければなりません。
2.税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通して居る者がいるかどうか
任意売却は、不動産取引です。不動産を売却し、債務を返済するという債務整理ということができます。
債務整理に強い弁護士などの法律家がいたとしても、宅地建物取引業免許を持っていない限り、不動産取引を行うことができません。
しかし、一般的な不動産会社ですと、法律の知識や、経験などがある特殊な専門知識がない不動産会社では、任意売却はできません。
大手の不動産会社に任意売却を依頼したのに、競売となってしまったという事例はたくさんあります。
3.「任意売却専門」などのうたい文句にだまされないこと
任意売却をせいこうさせるには、法律や不動産の知識や経験が豊富であることが重要です。
弁護士や宅地建物取引主任者ではなく、税理士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家の判断が必要な場合もたくさんあります。
いかにそれらの業者が、多くの専門家と連携がとれているかなども把握しておくことが必要です。
任意売却では、基本的に費用はかかりません。必要があれば、任意売却が成立した売買代金から債権者が許可した額が差し引かれるので、債務者が自己負担することはありません。
もし相談にいった際などにこういった話が出た場合や、におわされた場合は、その業者はやめておくか、警戒をしておく必要があります。
⓻内覧の立ち合い
任意売却では、通常の不動産販売と同様に、不動産情報誌や、不動産情報サイトに掲載され、実際に部屋の中を見たいという購入検討者の方に、内覧という形で家の中を見学に来てもらう必要が多々あります。
その内覧に立ち会う必要もありますし、居住中に、他人が部屋の中を見回すことになるので、精神的にも辛いと感じることがあるかもしれません。
それでも、通常の不動産販売や、競売でもどうように部屋の中を見られる機会はありますので、不動産を売却するなら不可欠のものであると認識しておればいいかもしれません。
任意売却の進め方
さて、ここまでくれば任意売却がどのようなもので、どんなふうにメリットがあり、また不利な場合があるかなどお分かり頂けたかと思います。
それでも、任意売却をやはり進めたいと思われたなら、まずは任意売却の業者を探し、相談へいきましょう。
- 任意売却の流れ
- まずは相談に行く
- 現状の把握
- 不動産価格の査定、調査
- 不動産媒介契約を締結
- 債権者との交渉開始
- 不動産の販売活動を開始
- 購入者の選定
- 債権者の同意
- 不動産売買契約
- 引越し
- 売買代金の支払い
- 新生活のスタート
以上のように、ローンの返済が厳しくなって、相談に伺い、引越して新生活が開始されるまで12のステップがあることをお分かり頂けます。
おおまかに区切ってますので、他にも細かい作業などたくさんあり、任意売却を進めるには、体力も精神力もしっかりと整えながら進めなければなりません。
期間としては、およそ3~6ヵ月ほどで完了すると考えて頂けます。交渉がスムーズに進み、買主が早く決まることが要となります。
それでは、具体的にみていきましょう。
①業者に相談へいく
信頼できる業者を探し、しっかりと疑問に思うことや不安も述べしっかりと納得した上で開始しましょう。
初めからいいお話しかせず、重要なデメリットに当たるお話を一切しないような業者は絶対にやめましょう。
②現状の把握
信頼できる業者が見つかったら、さっそく手続きをすすめてもらいましょう。
住宅ローンの滞納の状況、管理費、修繕積立金の有無、債権者である銀行名、また税金の滞納の有無、差し押さえの有無、月々の返済額、住宅ローンの残高などを全て申告します。
③不動産価格の査定、調査
マイホームである不動産の価格査定を行います。自宅にもきて、写真を撮ったり、周辺の調査も行います。
写真は、債権者への交渉材料として提示したり、不動産情報サイトなどにも掲載するための重要なものになります。実際の状況と、市場の相場から、査定結果を提示してもらい、債権者へ、交渉へと言ってもらいます。
中には、債権者自身で査定などを行い、価格を決定する場合もあります。
債権者や、業者により進め方に多少の違いはあるかもしれませんが、おおまかにはこのような順序で進んでいきます。
④不動産媒介契約を締結
債権者の承認の取れた価格にて任意売却がスタートされます。
となると、不動産は、業者が売買することになりますので、不動産の媒介契約が必要になります。任意売却業者か、その業者が依頼した不動産屋と債務者が契約を結び、本格的に販売活動に向けて始動します。
⑤債権者との交渉開始
担保権者である金融機関などの債権者と査定額などを基準にして、販売価格を決定します。
⑥不動産の販売活動を開始
業者間で共有している指定流通機構であるレインズへの登録もされ、また一般の不動産情報サイトなどにも掲載され、幅広く不動産を検討してもらうことができます。
早期売却が一番ですので、こういった不動産の販売にも実績のある業者であることが望ましいと考えられます。
⓻購入者の選定
購入希望者が決まったら、購入者の資金計画なども行い、ローンを組まれるなら、ローンの審査なども行わなければなりせん。
それで問題なければ、次の債権者の同意へと進みます。
⑧債権者の同意
購入希望者による購入申込書と任意売却業者が作成した売買代金配分表を債権者に提示し、同意をえます。
この売買代金分配表には、債務者の引越し費用や、新居に必要な初期費用、また不動産売買に必要な仲介手数料、抵当権抹消費用、登記費用、また管理費などの滞納金なども、不動産の売却費用から差し引いてもらえるよう作成されています。
⑨不動産売買契約
債務者と、買主で契約を結ぶことになります。
引渡しの時期など、もちろん債権者の同意が必要ですが、債務者と買主さん合意の下で決めることができるので、お互い計画をもって引越しなどの作業を行うことができます。
⑩引越し
不動産の引き渡し前に、マイホームから引っ越しておかなければなりません。
⑪売買代金の支払い
表面的には、通常の不動産売買と全く変わりはありません。
決済においても、決済と同時に抵当権などを抹消し、所有権も移転し引渡し完了となります。
⑫新生活のスタート
ここまで、早ければ、2・3カ月かかる場合、また長けれ6から8カ月かかります。
しかし、ここまでこれたら任意売却は無事に成功し、分割の支払いを行いながら新生活を始めるのみです。
なので、事前に任意売却という手法を知っているだけで、もし、滞納してしまいそうだと思った時も、冷静になり業者を探し、手続きをすすめることができます。
まとめ
いかがでしたでしょうか。任意売却は、住宅ローンが支払えなくなった場合に、選択することができる手段である通常の不動産販売、競売、そして任意売却のの3つの中の一つです。
どれが適しているかは人それぞれ異なりますが、任意売却はなかでもメリットが多く、通常の不動産販売や競売では受ける事ができない、恩恵を受けることができる場合もあります。
また、連帯保証人の方がいたとしても、自己破産のように支払いを免れるわけでなく、引き続き分割で支払いを続けていくことになりますから、迷惑をかけずにすみます。
残債務がとてもたくさん残ってしまいそうな方、また新生活をなんとか再建し、家族に安心して新しい生活をおくってもらえることを望まれる方には、やはり任意売却が最も適しているのではないかと考えます。