貯蓄もなく、親族に頼ることもできないなら、夢のマイホームでも住宅を売却し、ローンの支払いに充てるしかありません。
せっかくのマイホームを購入したのに手放すことになり、生きる希望もなくしてしまうかもしれません。
しかし住宅の売却の仕方によっては、また新たに希望を持てるかもしれません。
住宅を手放すことにはなるけど、支払えなくなった債務から解放され、家族と一緒に、新生活を改めて再建していくのはどうでしょうか。
また、家族と離れて暮らし、手稼ぎのように働かなければいけないわけではありません。売却を上手く行えば、マイホームを失うだけで、家族とともに、新しい生活をおくることができます。
しかし、住宅を手放す方法が3つあります。
- 一般的な方法で不動産を売却する
- 任意売却の制度を利用し、売却する
- 競売にかかり、退去となるのを待つ
以上の3つの選択肢から選択することができます。
例えば、住宅が2000万円で売却できても、住宅ローンの残債務が2500万円だと、500万円の債務が残ることがあります。
住宅を売却すれば、住宅ローンも利用できなくなるので、残った500万円の債務は一括現金で支払わなければなりません。
親族に借りるなど、なんとか工面できる場合いはいいですが、住宅ローンを支払えなくなった方は、そのような多額の現金が用意できないのが普通です。
自己破産すると、資格の制限などがついたり、職場に知れたりして職を失う場合もあり、なるべく避けたいと考えます。
そこで、画期的な制度が任意売却という売却方法になります。
一般的な売却や、競売だと、自宅を売却しても、なお残ってしまう残債務は、一括で支払わなければなりません。
しかし、任意売却では、住宅を売却した後の、残債務を分割で支払えるよう交渉することができます。
新しい賃貸などでの生活をおくりながら、月々少額で返済をし続けていくことができます。
債権者との交渉次第ではありますが、債権者の承諾さえもらえれば、自己破産を免れることができ、大切な家族と新生活を再建していくことができます。
それでは、このような任意売却がなんなのか、また、任意売却後の残債務はどのように、誰に返済していくのかなど詳しくお伝えしていきたいと思います。
目次
住宅ローンが支払えなくなったら
冒頭にも記述しましたが、住宅ローンが支払えなくなったら、誰でも選択することができる手段が3つあります。
- 通常の不動産販売で住宅を売却する
- 任意売却で売却をする
- 競売で売却する
それぞれにメリットがありデメリットがありますので、人によって、どれが有利な手段であるかは異なるかと思います。
しかし、住宅ローンが支払えなくなったということは、おおむね預貯金など現金での支払いに余裕のない方であることが一般的です。
そこで問題が一つあります。
住宅ローンの残債が、通常の不動産販売にて売却して、完済することができるならなにも問題はありません。
問題は、住宅を売却してもなお、住宅ローンの残債務が残ってしまう場合です。
もし、不動産売却を販売して、債務が残らないのであれば、すなわち住宅ローンを完済することができるのであれば、通常の不動産販売を行うのが一番いいです。
というのも、通常の不動産販売が、市場の相場に沿った価格で売却することができるので、最も高く住宅を売却することができるのが一般的です。
任意売却では、販売期間がおよそ3カ月ほどで売却してしまわないといけないので、どうしても価格が相場より安くなってしまいます。
競売においても、相場の価格より高くても70%ほどで落札されることが多いので、同じ不動産でも販売手法で売却価格に差がつくなら、高く売れる通常の不動産販売が有利になります。
なので、住宅ローンを不動産を売却することで完済できるならなにも問題はありません。
通常の不動産販売でも、不動産を売却すれば住宅ローンももちろん消滅することになりますし、残っている債務は一括で返済しなければなりません。
通常の不動産販売で住宅を売却する
上記にも記した通り、通常の不動産売却で販売すると、最も市場の相場に沿った価格で売却でき、任意売却や、競売の手続きによる売却方法よりも高く売れる場合が多いです。
不動産の売却価額が、住宅ローンの残債務を超える場合は、通常の不動産売却が最も良い売却方法だと考えられます。
というのも、住宅ローンを組んでいる金融機関は、住宅を担保に数百万円や数千万円という高額なお金を貸し出しています。
住宅に抵当権という権利をもつことで、もし債務者が約束通りに支払いを行わなかった場合に、抵当権の権利を行使し、住宅を売却したりするなどして、貸出金を回収できるようにすることで、数千万円という多額の貸し出しを行っています。
買主は、当然のことながら、担保権付きの住宅を購入したわけではないので、これでは引渡しを行うことができません。
なので、債務者は、引き渡すと同時に、不動産の売却代金に加えて、残債務を現金で用意し、債務を全て完済することで、抵当権も抹消された不動産を買主に引き渡さなければならないのです。
残債務も完済しないといけない以上、住宅を手放してもなお残る債務を完済できないのならば、通常での不動産販売での売却を行うことはできません。
不動産の売却価額が、住宅ローンの債務を下回る場合には、通常の不動産販売の売却という選択肢は自然と消滅し、残り二つの任意売却か、競売を選択するしかなくなります。
もちろん任意売却や、競売でも住宅を手放しても残債務が消滅するわけではないので、残債務は支払わないといけません。
しかし、通常の不動産販売と異なり、任意売却は、分割での支払いが許されるよう交渉することができます。
通常の不動産販売では、残債務は一括返済しなければなりませんし、競売においても同様に分割払いの交渉などは一切できません。
しかし、任意売却のみ、分割の返済の交渉の余地があり、さらに無理なく支払っていけるよう考量してもらえることもあります。
家族がいらっしゃる家庭では、残債務が残り自己破産を避けたいと思われる方は多いはずです。
自己破産となれば、近隣での新生活は、近所の方のうわさなどが苦痛で遠くへ引っ越されることが多いです。また職場などにも知られてしまうことがあります。
とても慣れた環境で、安定した生活での新生活の再建というのが、困難になることがあります。
そうなると、幼いお子さんがいたり、長年住んだ環境を離れないといけないお年寄りがいる家庭では、新生活がとても苦痛を強いるものとなりかねません。
なんとしても自己破産は避けたいと思われる方の最後の砦は、任意売却を成功させることしかありません。
任意売却が成立させることができれば、見た目は通常の不動産売却同然ですし、残債務も新生活を送りながら分割で支払っていくことができます。
それでは任意売却では、通常の不動産販売の場合とは、また競売などともどのように異なるのかをみていきたいと思います。
任意売却で売却する
通常の不動産販売や競売と異なり、住宅を売却してもなお残る債務が多額であっても、自己破産をすることなく支払っていけるよう分割での支払いを認めてもらうことができる手段となります。
競売に関しても、競売が成立し、売却が済んだとしても、残債務を一括で支払うよう請求されることなり、支払うことができなければ自己破産するしかなくなります。
そういった場合に、有効に利用することができる制度が任意売却というものです。
任意売却では、全ての手続きにおいて、債権者である金融機関の承認が必要です。
通常の不動産売却とは異なり、
- 任意売却を行う承認
- 販売を開始する販売価格
- 売却を行う買主
- 売却価格
- 引渡し日
など全てにおいて、債権者の承認を得なければすることができません。
しかし、承認さえ得られて買主が決まれば、住宅を売却してもなお残る残債務の支払い方法を、通常では一括で支払わないといけないところ、分割での支払いが認めらるのです。
ではなぜ、一括で支払わないといけなくなるのかというと、通常の不動産販売では、買主に売却するために完済することで、抵当権を抹消しなければなりませんでした。
任意売却では、住宅ローンを3カ月ほど滞納することで手続きをすすめることができるようになるのですが、3カ月ほど滞納することで、住宅ローンを貸し出していた金融機関は抵当権を行使し、すぐに住宅を売却し、債権を回収することことができるようになります。
これは、借主である債務者が、法律的に「期限の利益を喪失した」ということになります。
債務者は、住宅ローンを組むことで数千万円などの多額の借金をすることになりましたが、約束を守って毎月支払いを行うということを約定することで、一括ではなく、分割で毎月返済して行けばよいという権利がありました。
しかし、3カ月ほど滞納することで、その権利を失い、債権者は一括で支払いを請求し、支払いを行ってもらえない場合は、抵当権を行使し、不動産を差し押さえ、競売にかけ売却し、債権の回収を行うことができます。
競売では、相場の30%から70%ほどでの売却が一般的であるため、多くの場合、多額の債務が残ってしまいます。
不動産を売却してもなお残る債務は、当然一括で支払うよう請求ることができるので債務者は、一括での支払いに応じなければなりません。
しかし、任意売却の手続きをとることで、3カ月滞納はするけれども、不動産は一般的な売却と同様に売却し、残った債務は分割で返済するよう債権者に交渉することができるのです。
残債務が分割できることで、自己破産を免れることができ、新生活の再建など債務者にとってはメリットとなることがたくさんあります。
不動産を売却してもなお、債務が多額に残る場合は、任意売却の手続きをとらなければ残債務を一括で支払わないといけないので、任意売却の手続きをしないで競売がおこなわれるのをただ待っていることや、任意売却を知らないでは大きな損をしてしまうかもしれません。
詳しくは、「任意売却が有利な理由」のところでお話ししたいと思います。まずは、競売で売却した場合の債務がどうなるかを次に見ていきましょう。
競売で売却する
競売の場合、このように、住宅ローンを滞納し、支払いの請求があっても支払いをしなければ、債権者が勝手に差押え、債務者は何もしなくても、不動産は裁判所にて競売が開始され落札されることになります。
任意売却や、通常の不動産とは異なって、販売のための活動など一切する必要はありません。
しかし、競売は、通常の販売や任意売却よりも売却価額は低くなるのが一般的です。ということは、残ってしまう債務もより多額となってしまいます。
さらには、競売では任意売却のような分割での支払いを交渉する余地はありません。
自己破産をするということは、法的に債務を放棄し、債務が免除されるということになります。債務は免除されるので、任意売却のようにその後も、支払を続ける必要はありません。
債務が無い状態で、新生活をスタートすることができます。しかし、債務が免除される代わりに、自己破産では多くの制約があります。
自己破産のデメリットを簡単に紹介します。
自己破産のデメリット
- 99万円以下の現金は没収される
- 生命保険なども解約する必要がある
- 退職金も財産とみなされる
- 信用情報に載る
- 官報などで公告される
- 資格に制限がかる
- 保証人などに支払いの請求がいく
99万円以下の現金は没収される
自己破産は、支払いの義務を免除うしてもらうため、生活に必要なもの以外の財産は、手放さなければなりません。
例えば、
- 99万円を超える現金
- 価値が20万円以上の自動車やバイク
などは、資産となり債権者への弁済に充てられます。
任意売却では、このような義務はありませんので、高額なものを持っていても処分を請求されることはありません。
しかし、任意売却は、債権者の裁量で承認されるかが決まりますので、債権者への心象が悪いと任意売却の手続きを拒否されることもあります。
他にも、車のローンやクレジットカードなどで分割での支払いにしていて完済していない者に関しては、クレジット会社等に回収されます。
これは、所有権留保というもので、クレジット会社に認められた法的な権利による行為で、分割払いが完済されるまで、所有権はクレジット会社やローン会社にあると考えられるためです。
生命保険なども解約する必要がある
生命保険や、医療保険も原則そのまま加入し続けることができます。
しかし、解約したときに返金される解約返戻金が存在する保険に関しては、資産と見なされ、自動車などと同様、処分をして現金で債権者への弁済に充てられることになります。
ただし、高齢者や持病があり、解約後に改めて新規で保険に加入することが困難な方や、生活に支障をきたす場合は、解約を免除されることがあります。
退職金も財産とみなされる
退職金は、退職していなくても、将来支給されることを前提に、支給見込み額として8分の1相当の額が20万円以上の場合は、配当すべき財産とみなされます。(20万円以下の場合は、財産とはみなされません。)
実務上は、勤続中に退職金が支払われるわけではないので、毎月支給されるお給料から積み立てるなどして、8分の1相当の現金を債権者への弁済として支払うことになります。
ただし、他の財産と合計して99万円以下であれば、支払わなくてもより場合があります。
信用情報に載る
信用情報とは、金融機関が共有している情報であり、
- クレジットカードの利用状況
- 支払い状況
- 延滞
- 債務整理
- 破産申して
などが掲載されていて、銀行などが貸付を行ったり、クレジットカードを発行する際に審査の過程でチェックする情報です。
クレジットカードの利用を停止されることもあるので、生活に不便がある場合も多いので、なるべく自己破産は避けたいと思うものです。
官報などで公告される
官報とは、国が発行している新聞のようなもので、法律が制定、施行、公布されたりする場合に、公告として配布されます。
とはいえ、官報を日常的に読んでいるという方はとても少ないので、知り合いに知られたりする可能性はとても低いと考えられます。
資格に制限がかる
破産開始決定が決まると、人の財産に関わる資格については、手続き中は資格を使用した仕事ができなくなります。
自分自身が財産に問題を抱えているので、他人の財産の問題まで当然引き受けるわけに行きません。しかし、資格がはく奪されるわけではありませんので、復権すれば、また資格を利用した仕事を再開することができます。
- 破産手続き開始決定から復権までの間の資格制限一覧
- 弁護士
- 公認会計士
- 社会保険労務士
- 生命保険募集人
- 宅地建物取引主任者
- 後見人
- 証券取引外務員
保証人などに支払いの請求がいく
連帯保証人や、連帯債務者がい設定されている借入れがある場合、自己破産となれば自己破産した本人は債務が免除されることになったとしても、連帯保証人や連帯債務者までが免除されるわけではないので、債務者が免除された分の請求が連帯保証人や連帯債務者に向かうことになります。
自己破産する際は、事前に連帯保証人や連帯債務者に連絡して相談するなどしておかなければなりませんし、もし自己破産をする場合は、連帯債務者のかなども共に自己破産しなければいけない場合が多いのが実情です。
任意売却が有利な理由
任意売却が有利であるかは、厳密には人それぞれメリット・デメリットは異なるので、任意売却が不利な方ももちろんいらっしゃいます。
あくまでも、住宅ローンを組んでいる住宅が、ローンの残債務より少額でしか売却できない場合ですし、ローンの残債務が住宅の売却価額よりも高額であるならば、そのまま通常の不動産販売で売却するほうが有利です。
また、債務が住宅ローン以外にある場合や、ご家族もおらず、任意売却の手続きなどが手間だと考える方には自己破産の方がメリットが高いと考えられます。
不動産を売却してもなお高額の債務が残る場合や、家族がいてなんとか新生活の再建をしたいと願う方にとっては、任意売却が有利であると考えます。
住宅ローンを組む多くの世帯が、ご家族がいて、お子様もまだ幼いという方が多いのです。そして、よほどでない限り、購入して間もない住宅では、ローンの残債の方が住宅の売却価額よりも高額になるケースが多いです。
ご家族のいる世帯では、慣れた環境を離れるのは難しいものです。マイホームを手放すことになったとしても近くで賃貸住宅を購入し、子どもは遊び慣れた公園や、お友達のいる学校に通い続けることを望むでしょう。
またお年寄りがいる場合も、慣れた環境を離れ新しい場所で、慣れるにはとても時間がかかり精神的に苦痛となることがあります。
その他にも、メリットがあります。詳しく見ていきましょう。
残債務を分割で支払っていける
任意売却の大きなメリットの一つでもありますし、他の不動産の売却方法では、かなわないものですのでとても魅力的です。
債権者が承認してくれれば、新生活をおくりながら無理の無い範囲での支払いが許されます。
毎月3,000円から50,000円ほどの支払いにしてもらえる場合が多いので、新居である賃貸などの賃料を支払いながら残ってしまった債務を支払い続けることができるので、新生活の再建を望まれる方にはとても魅力的です。
自己破産せずに済む可能性がある
上記のメリットでも紹介した通り、住宅を売却してもなお残る債務を分割で支払っていけるよう交渉ができます。
他の一般的な売却や競売だと、そういった交渉の余地はありませんので、一括での支払いとなってしまい、支払うあてがなければ自己破産して債務を放棄しなければなりません。
自己破産をした場合の代償は上記にも記した通り、とても新生活を以前のように過ごすというのは難しくなる場合が多いです。
新生活の再建をより安く図りたいと考えられる方には、自己破産を避ける手段として任意売却は大きなメリットの一つだと考えられます。
慣れた環境で新生活を始められる
不動産の販売情報も、不動産業者が共有している指定流通機構レインズにも登録され、多くの不動産屋へと伝わり、一般の方も誰でも閲覧できる不動産情報サイトや不動産情報誌に掲載され多くの方に検討してもらえますが、任意売却であることや、住宅ローンが支払えなくなった事情などは知られることがありません。
そういったことから、子どもが小さいので、慣れた環境を離れたくない場合や、子どもを転校させたくないなど、また高齢者がいるので長年住んだ地を離れさせたくないっといった場合も、近隣で賃貸住宅を借りるなどして、新生活をおくることができます。
これが、競売だと裁判所の執行官などが自宅を訪れたり調査を行ったり、また競売のサイトにも掲載されることとなり、近隣の方にばれてしまうことがあります。
となると子どもが学校でいじめられたり、近隣の方に噂されたりと肩身の狭い思いをしたりと精神的に苦痛を強いられる場合があります。
任意売却だとこういった心配も半減されるので、任意売却の大きなメリットの一つと考えられます。
こういった精神的な面でも安心で、残債務を分割払いが認められるということで、多くの意味から任意売却が新生活の再建をより望む方にオススメだと考えます。
任意売却なら引越し費用なども用意しなくて済む
任意売却では、様々な費用を不動産売却価額から差し引いて、残債務と共に分割で支払っていくことができる場合があります。
任意売却の費用は、不動産売却のための仲介手数料や登記費用、そして新生活に必要な賃貸を借りるための敷金などの初期費用や引越し費用というものがあります。
仲介手数料も数十万円、敷金などの初期費用も数十万、引越し費用も安くても数万円かかる場合が多いと思うので、合計すると100万円近くかかる場合が多いかと思います。
任意売却をしようとする方は、こういった費用が工面できない方が多いのが通常ですので、こういった費用が支払えないなら、任意売却を行っても結局自己破産するしかなくなってしまいます。
任意売却を行う者が新生活をより再建しやすいよう配慮してくれる制度となっていて、余分な貯えなどが無い方にはとてもメリットの高い制度だと考えます。
さらには、任意売却では、任意売却に関する手数料などはありません。
法律でもこういった費用を請求することは違反だとされているため、任意売却が成功したからといって費用を請求されることはありませんが、悪質な業者では要求してくる場合があります。
任意売却を成立させるには、実績のある任意売却の業者に債権者との交渉を成立させてもらうことと、債務者自身も自覚をもって、誠実な対応を行わなければなりません。
債務者自身が非協力な態度で、不動産販売価格を吊り上げる場合や、また健康保険料、固定資産税、住民税などの滞納も多すぎると、地方公共団体との交渉も上手くいかず、差し押さえを解除してもらうことができず、不動産を売却することができず任意売却が不成立となるかもしれません。
任意売却はとてもメリットが高く、成立させることで新生活を再建できるよう配慮してもらえることが多い制度です。
任意売却後の残債務はどうなるのか
任意売却の最大のメリットと言っても過言ではないのが、債権者への交渉次第で任意売却後の残債務を分割で返済していけることがあるということではないでしょうか。
そもそも、任意売却を行っているということは、住宅ローンを3カ月以上滞納している状況にあります。
住宅ローンを3カ月滞納すると、債務者は期限の利益を喪失し、分割で長期間に渡り返済していくことを許されていたことができなくなり、残債務を一括で返済しなければならない状況にあります。
本来は、期限の利益を喪失してしまっているので、不動産を売却してもなお残る債務も一括で返済しなければなりません。
債権者は、一度債務者が滞納したことにより、債務者に対して信頼を持つこともできません。さらには、新生活に無理の無い範囲の額でも構わないというのが一般的です。
それは、債権者が、住宅ローンを借りていた銀行などの金融機関ではなくなっているということが大きな点です。
詳しく解説していきたいと思います。
誰に返済していくのか
住宅ローンを3カ月程滞納すると、住宅ローンの債権者である銀行などの金融機関は、保証会社や債権回収会社に連絡をし、債権者である銀行などの金融機関へ、債務者の代わりに住宅ローンを一括で返済するよう伝え、保証会社や債権回収会社はそのように住宅ローンの残債務を一括で完済を行います。
これを「代位弁済」といいます。
よって、保証会社や債権回収会社に住宅ローンの債権は、銀行などから譲渡されることになり、債権者は保証会社や債権回収会社になります。
この状況から、競売や任意売却によって不動産を売却し、残債務に充て、新たな債権者へ返済していくことになります。
任意売却の場合、これから任意売却をすすめるため多くの債権者の承認が必要となりますが、ここでの債権者はすでに保証会社や債権回収会社ということになります。
任意売却を行う者の多くの方は、残債務を一括で支払えないのが通常です。債権者も代位弁済をしていますので、なるべく多くの返済を受けたいと考えます。
無理に一括の返済を要求し、自己破産をされてしまうと債権者は十分な返済を受けることができない場合が多くなります。
そのため、時間はかかっても確実に債権を回収できる分割の返済を許可してくれるのです。
さらには、不動産を売却していることで、大半の債権は回収できています。なので残りの債務に関しては、比較的寛容に応じてくれます。
さらには、不動産も売却済みですし、残りの債務に関しては無担保の債務となり、今後は厳しく取り立てることも債権者としては難しいものです。
残債を削減することができる場合もある
任意売却では、なんと交渉次第で、残債務自体を削減してもらえる場合があります。
債権者は、住宅ローンを借りた銀行などの金融機関から、代位弁済を行った保証会社や債権回収会社へと変わっています。
その新しい債権者は、実際に代位弁済を行う際に支払った額は、実際に債務者が保有していた残債務と同額ではありません。
というのも、債務者は滞納を起こしていたため銀行が所有していた債権は、いわゆる不良債権というものになっています。
不良債権というのは、名前を見てわかるように、正常ではなく不良品と考えられます。
例えば、債務者の住宅ローンの残債務は1500万円だったとします。
債権は1500万円ではありますが、不良品の売却ということになりますので、保証会社や債権回収会社は、1000万円を支払い、代位弁済を行うことで、銀行などが債務者に対して所有していた債権は新しい債権者となる保証会社や債権回収会社に譲渡されることになります。
よって、銀行などの金融機関は、貸し出した額よりも低く、債務を完済されたことになりますが、多くの場合、住宅ローンは長期にわたって貸し出すものを、期間を短縮して回収することができ、また貸し出した額を全額回収できたわけではありません。
しかし月々の住宅ローンの返済額には、利子が含まれていますので、利子分の利益も得ており、銀行なども任意売却による債権回収は、競売などよりもメリットが高いものとなる場合が多いのです。
そして、新しい債権者である保証会社や債権回収会社にもメリットがあります。それは、1,500万円の債権を1,000万円で購入することができたからです。
不良品と言えど、実際に不動産などが不良品であるわけではありません。
代位弁済を行い、任意売却が開始され、不動産の売却が決まれば、不動産の売却価額で、債権の大半を回収することができます。
例えば、1,500万円の債権を1,000万円で購入し、不動産を800万円で売却したとします。
1,500万円の住宅ローンの残債務に対し、たったの800万円でしか不動産は売却できず、700万円もの債務が残ってしまったように思えます。
しかし、債権者は実際には、1,000万円で債権を購入していますので、不動産が800万円で売却できたことで、200万円だけの損失です。
債務者が新生活を送りながら、月々無理ない額で返済してもらっても、多くの場合が十分に完済してもらえます。
また、債務者の義務は、1,000万円ではなく、1,500万円を新債権者に返済しなければなりません。残りの200万円だけでなく、債務者が返済を続けてくれれば、1,500万円まで返済を受けることができ、プラス500万円の利益を得ることができます。
これが、代位弁済を行った保証会社や債権回収会社の利益となります。
さらに、500万円の利益を見込んでますので、交渉次第では、1,500万円の債務を1,300万円の債務へと削減してもらえる場合があります。これを債務を圧縮するといいます。
十分に利益が見込めれれば、いつまでも債務の回収を行うよりかは、債権の額を少なくして完済してもらう方が、債権者にとっても利益となる場合いがあるのです。
また、債権者への交渉次第であらゆることが決まるのが任意売却ですが、債務の圧縮も交渉次第で認められるか否かが決まります。
また、債務者が病気になった場合、会社を解雇されてしまった場合なども考慮してもらうことができます。
しっかりと粘り強く、返済をしていきたいが、なんとか減らして欲しいという誠意や熱意を債権者に見せることができたら任意売却のメリットはより大きなものになる場合があります。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
- 任意売却がどうしてメリットが高いのか?
- どういう仕組みなのか?
また仕組みがわかることで、債務の返済先や返済方法などを理解頂けたのではないでしょうか。
誰にでも任意売却が有利に働き、メリットを感じられるものであるとは考えません。
一般的な通常の不動産売却ができるなら、普通に売却するほうがいいでしょうし、また競売のように、裁判所が勝手に売却まで行ってもらえるものの方が、有利である方もたくさんいるはずです。
しかし、任意売却は誰でもできるわけでもありません。
交渉が上手くいかず成立させることができなかったり、不動産の買い手がつかない場合など、任意売却を望んでも成立させることができないこともたくさんあります。
任意売却を成功させたいと思うなら、しっかりとした知識と、信頼できる実績のある業者に依頼すること、そして債権者に対して債務者自身も冷静に落ち着いて、誠意ある行動で接することが成功の秘訣と考えます。