住宅ローンを組み、夢のマイホームに住まわれる方はとてもたくさんいます。
夢のマイホームでなにごともなく、子どもたちも大きくなり、住宅ローンも無事に終了させることができる方もたくさんいます。
住宅ローンが支払えなくなる事態やリスクは誰にでもあり、よほど無責任で無計画でなければ、一概に誰かが悪いとかの問題ではありません。
しかし、住宅ローンが払えなくなるリスクは誰にでもあるということをしっかりと理解し、そういった場合にどのように対処していけばいいのかも把握しておく必要があります。
突然の病気や、リストラ、経営していた会社が倒産など、誰にでもリスクはあります。
しかし、そのような際に、まずは冷静になり、払えなくなった住宅ローンをどうしていくかをまず考えましょう。失敗は成功の基ともいいます。
いかに新生活をしっかりと再建し、よりよい人生を送ることができるかは、失敗した時に、どのように対応するかで決まると思います。
そこに一般的な選択肢は3つあります。
- 不動産屋で通常の不動産売却
- 専門の業者で任意売却
- 裁判所で競売
どのような選択や事態が自分たちにとって一番いいか考えてみて下さい。
不本意ではあるけれど、これからの再スタートが一番し易く、家族にもなるべく負担をかけずに済む方法があるかもしれません。
それでは一緒に検討していきましょう。
任意売却と強制競売の違い
住宅ローンが突然支払えなくなった場合、また今後支払えなくなりそうだという時に、一般的に選択できる手段は3点あります。
- 不動産屋で売却してもらう
- 専門業者に相談して任意売却する
- 裁判所での強制競売を待つ
どの選択肢も、不動産を売却し、その売却代金で債務である住宅ローンの支払いを行うという点でどれも同じではあります。
しかし、住宅ローンが不動産を売却することで完済できるなら通常の不動産売却で問題ありませんが、不動産を売却しても、まだ残債務が残ってしまう場合に、大きな選択が必要になります。
まずは、不動産屋でいくらで自宅の売却ができるか査定してもらいましょう。
もし、住宅ローンの残債務を査定価額が大きく上回る場合は、住宅を売却することでローンを完済することができるので、一気に問題は解決です。
近所の方や会社の同僚や、子どもの学校の方々に、住宅ローンが支払えなくなったという事情も知られず、ただ売却したということで、近くにまた賃貸住宅でも借り、慣れた環境で再スタートすることができます。
問題は、査定価額が、住宅ローンの残債務を下回り、住宅を売却しても、多額の残債務が借金として残り、一括での支払いの請求をされた場合に、支払うことができないなどの事情がある場合です。
特に、住宅ローンを組んでまだ数年しか経過していない場合は、月々の返済の割合は、利息分が大きく、元本はそれほど減っていません。
なので、まだ数年しか返済していなければ、ほぼ元本が残った状態なので、大きく残債務が残ってしまいます。
そういった場合に、任意売却という手段を選択することができます。
住宅ローンの滞納を半年ほど続けますと、金融機関は、債務者へ催告状などを送付した上で、なお返済がない場合は、裁判所にて競売を開始します。
その入札が開始される前に、任意売却の手続きをとることができれば、任意売却という手段を利用することができます。
マイホームは手放さないといけなくなっても、残債務の一括返済を免れることでき、分割での支払いを許されるなら、安い賃貸に引っ越して、残債務を月々支払いながら再生活をスタートすることができます。
また、任意売却の良い点は、見た目は一般的な不動産売却と変わらない様で売却を進めることができ、一般の不動産売却同様、慣れた環境での再生活を無理なく迎えることができる点です。
住宅ローンを多額に抱える世代の多くは、まだ子どもが幼く、できるなら環境を変えずに済ませてあげたいと思われます。
しかし、競売となるとそうはいきません。
そうなると、子どもが学校でいじめられたり、主婦の方々の噂が広まり、とてもその場所での再スタートを送れるような状態でなくなることがよくあります。
このような理由で、近年任意売却はとても注目されることとなり、取り扱う業者も増えています。
また最後の選択肢の強制競売は、売却される価額は、一般的な相場の価格よりはるかに下回り、多くの場合が、多額の残債務が残ってしまうのが実情です。
残債務の分割請求の交渉はほぼ認められませんので、多額の残債務を一括での返済を強いられ自己破産という流れになるのが通常です。
強制競売を避けたいと誰もが思いますが、強制競売にもメリットデメリットがあります。
メリットがたくさんあると考えられる任意売却、再生活の期待がなにももてなくなりそうな強制競売のメリットデメリットを詳しく紹介していきます。
任意売却とは?
任意売却とは、住宅ローンが返済できなくなったときに、不動産を売却して、なおも残った残債務も金融機関に交渉して分割払いにしてもらえる可能性のある手段で、専門の業者に依頼し交渉や売却全般を行ってもらうことを言います。
競売でも、残債が残る売却ですが、競売は、住宅ローンを借りている金融機関が主体となり、裁判所で競売手続きを行い売却を行います。
なので債務者がなにか積極的に行動を起こさなくても勝手に入札が開始され、落札者がきまり、退去を命じられます。
金融機関は、住宅ローンを貸し出すときに、住宅である不動産へ抵当権を設定します。
これにより、住宅ローンの返済がない場合に、権利を行使して不動産を競売にて売却し、その売却代金を住宅ローンの貸付金に充当しようとします。
任意売却の手続きは、このような権利のある金融機関に交渉して許可をもらい進めることになりますので、金融機関の合意なしには成しえません。
任意売却の許可が得られれば、通常の不動産売却のように、不動産を売却する手続きを進めます。
一般的には、相場に近い価格での売却となり、競売にかけられるよりかははるかに高額での売却が可能ですので、残債務を大幅に減らすことができます。
そして、無事に売却が出来たら、金融機関へ返済し、残りの残債務を分割で返済をできるよう交渉します。
そもそも、任意売却を進めるには、住宅ローンの返済を3か月程滞納していることが条件となります。
そして6か月程滞納を続けることで、債務者がローンを分割で返済していくという権利を放棄することになります(期限の利益の喪失)。
なので、住宅を売却して、返済に充てても足りない場合は、何らかの形で一括で返済することになります。
しかし、任意売却は、住宅を売却して、ローンの返済に売却代金を充てても残ってしまった残債務を分割で返済することを交渉することができます。
ローンの状況と、任意売却の期限の目安
ローンの返済状況 | 競売の進行状況 | 任意売却による 解決が可能な時期 | |
---|---|---|---|
1 | ローンの返済が苦しい | – | 任意売却の検討や、相談を開始するのがいい時期といえます。 |
2 | 支払いが遅れがちになる | – | |
3 | 滞納:1~2か月目 | 金融機関から督促状や催告書が届く | |
4 | 滞納:3~4か月目 | 競売申立 「競売開始決定通知」が届く | |
5 | 滞納:5か月~ | 現況調査 裁判所から執行官が調査に来る | |
6 | – | 入札の開始 期間入札の通知が届く | この時期までに任意売却の相談は済ませないと間に合わなくなります。 |
7 | – | 開札 | この段階に入ると、任意売却はできなくなります。 |
8 | – | 売却許可 | |
9 | – | 物件の引き渡し |
任意売却の流れ
任意売却の流れ | |||
---|---|---|---|
1 | 任意売却の業者へ相談 | 任意売却についての疑問やメリットデメリットなど詳しく伺う必要があります。 | 約1週間 |
2 | 現状の把握 | 住宅ローンの滞納の有無、管理費、修繕積立の滞納の有無、債権者名、税金の滞納の有無、差し押さえの有無などなど、債務者の現況を伝える。 | |
3 | 不動産価格調査、査定など | 住宅の査定を行い、自宅の写真なども撮ります。査定価額と、写真をを債権者(金融機関)へ提示し、任意売却としての販売の許可をもらいます。債権者が販売価格を決定することも良くあります。 | |
4 | 不動産媒介契約の締結 | 債権者の承認を得られれば、任意売却がいよいよスタートです! | |
任意売却を代行してもらう不動産業者と媒介契約を結びます。 | |||
5 | 債権者(金融機関)との交渉 | 担保権(抵当権)者である金融機関などの債権者と販売価格などを詳細に決定し、確定します。 | 約3か月間 |
6 | 不動産の販売活動開始 | 一般的な不動産サイトなどに掲載され任意売却を開始します。また指定流通機構であるレインズにも登録するので、ほぼすべての不動産業者へ情報を開示することになり、販売活動が促進されます。 | |
7 | 購入者の選定 | 実際に内覧などもしてもらい、実際に住宅ローンが組める購入者様を選定していきます。 | |
8 | 債権者の同意 | 購入申込書と売買代金配分票を債権者に提出し、同意を得ます。この売買代金には、売却に関わる諸費用(仲介手数料、抵当権抹消費用など)、管理費などの滞納金、また引越し費用なども含まれています。 | |
9 | 不動産売買契約 | 債権者の同意が得られれば、買主さんと、売買契約を結びます。引越し時期などは協議の上決定できます。 | 約1か月間 |
10 | お引越し | 不動産を引き渡す前に、引越しを済ませます。 | |
11 | 売買代金の決済、分割支払いなどの約定の締結 | 表面的には、通常の不動産売買と同じです。抵当権や、差し押さえがあるものを抹消し、不動産を引き渡します。債権者へ、住宅ローンを支払いを行い、引越し費用などの費用債権者から割り当ててもらいます。 | |
12 | 新生活のスタート | – |
任意売却のメリット
- 市場価格に近い価格で売却できる
- 売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
- 引越し費用、売却費用などが売却費用から引いてもらえる
- プライバシーを守れる
- 引越し時期や条件も考慮してもらえる
- 任意売却の費用はかからない
- 専門の業者に依頼することができる
市場価格に近い価格で売却できる
通常の不動産売却と同様に売り出されます。
通常の売却の場合と同様に、住宅を査定して、一般的な相場を基準に価格を決定し、債権者である金融機関の承認をもらえれば、不動産情報誌、不動産情報サイト、また不動産業社が共有する指定流通機構のレインズにも登録されます。
不動産業者だけでなく、一般の方も自由に検索でき通常の不動産売却同様のスタイルとなります。
売却後の残債務を分割返済にしてもらえるよう交渉できる
住宅ローンの返済を6か月ほど滞ると、期限の利益を失い、金融機関へ残債務を一括で返済しなければなりません。
強制競売になった際も、競売での売却代金を差し引いた残債務を一括返済しなければなりません。
しかし、任意売却を利用すると、不動産が無事に売却された後、残債務の返済方法を金融機関へ相談することができます。
そして、再生活への負担がなるべくかからないよう月々の返済額を交渉してもらうことができます。
おおよそ、月々10000円から50000円程となるのが一般的です。
それでも支払いが困難な場合は、自己破産という選択肢もあります。
競売になった場合は、残債務が一括返済となるため、競売=自己破産となるケースが多いですが、任意売却だと、生活の再建が望め、住宅ローンが返済不能となった場合でも前向きに手続きを進めていくことができます。
引越し費用、売却費用などが売却費用から引いてもらえる
任意売却では、通常の不動産売買取引と同様の諸経費がかかります。
例えば、仲介手数料、抵当権設定登記の解除費用、残置物の撤去費用など債務者がかかる費用は通常の売却と同様に支払わなければなりません。
さらに、売却が決定したら、引越しをしなければなりません。引越し業者に支払う費用だけでなく、新居を賃貸する場合には、敷金礼金などのまとまった費用が必要になります。
プライバシーを守れる
任意売却での不動産の販売活動は、通常の不動産の販売活動と同様に行われるため、住宅ローンが支払えなくなった状況などが知られずに済みます。
また競売が開始されると、新聞や情報誌、また競売のインターネットサイトなどに住宅の情報や個人情報が公開されてしまい、競売が行われていると近隣の方やお知り合いの方に知られてしまいます。
そういった事情が知られずに済むことで、近隣での再生活がし易くなります。
引越し時期や条件も考慮してもらえる
債権者である金融機関に交渉次第で、引越しの費用を、住宅を売却した代金から引いてもらうことができます。
全ての案件でできるわけではありませんが、交渉が上手くいけば数十万円とかかる引越し代金を自分で捻出することなく、引越しができるので住宅ローンが支払えなくなった差し迫った状況ではとても助かります。
一般の売却や、強制競売ではこういった交渉ができないので、それだけでもメリットはあると考えられます。
また、強制退去ではなく、売却が決まって1~2か月で日程を決め退去できることが大半なので、自分たちの計画を立てて引越しができることも魅力の一つと言えます。
任意売却の費用はかからない
任意売却の費用を請求されることは一般的にはありません。
もちろん不動産売却にかかる、一般的に必要は不動産売買の仲介手数料は不動産屋(主に任意売却を行う業者)に支払われますが、任意売却で売却した代金から差し引かれ、金融機関から不動産屋へ割り当てられますので、債務者が自腹で支払わないといけない費用は一般的には請求されることはありません。
専門の業者に依頼することができる
任意売却は、素人では判断が難しい法律の知識や不動産の知識が必要となり、かつ金融機関との交渉が必要ですので、金融機関の傾向などを把握しているなど、実績のある業者に依頼することが重要です。
そして上記にも記載した通り信頼できる業者でしたら、手続きをお任せして、かつ任意売却の費用も自腹で捻出する必要もないので差し迫った状況ではとても有難いシステムになっています。
デメリット
マイホームの住宅ローンが支払えなくなりそうだという差し迫った状況だと、任意売却は良い事づくめのように思え、飛びつきたくなります。
しかし、物事にはなんにでも良い面とそうでない面があり、良いことづくめに思える任意売却にももちろんデメリットがあります。
しっかりと理解した上で、決断しないと、あとで驚いたり、想定外の事態に困惑することになるかもしれません。
業者を決める前に、しっかりと自分でも把握し、悪い面も隠すことなくしっかりと教えてくれた業者を探すことができるのでこの機会に、理解しておきましょう。
任意売却のデメリット
- 任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納することが必要
- 債権者の同意が必須
- 連帯保証人の協力が必要
- 競売になる可能性がある
- 信用情報にのる
- 任意売却を行う業者には悪徳業者も多い
- 内覧の立ち合い
任意売却手続きの要件として、実際に住宅ローンを滞納することが必要
任意売却の手続きをするには、住宅ローンの支払いを実際に2~3か月滞納し、銀行などから支払い督促が来てからの金融機関との交渉となります。
債権者である銀行からの督促状や支払通知書などが届きましたら、どちらかの任意売却を行ってもらえる業者へ相談にいくといいです。
もちろん相談だけでしたら、滞納する前から始めても問題はありません。その方が綿密な計画も立てれるので、早いに越したことはないかもしれません。
債権者の同意が必須
債権者である金融機関は、半年ほど支払いの滞納が続けば競売を行い、競売による売却代金を貸出金に充てることができる権利がありますので、勝手に任意売却をすすめることはできません。
任意売却を行うということは、住宅ローンの残高よりも低い価額での販売ということにもなりますので、債権者である金融機関の承諾を得てから任意売却の手続きをすすめることになります。
このような交渉段階で、金融機関への交渉が下手だったり、慣れていないと断られてしまい、競売を待つしかないという状況にもなりかねません。
連帯保証人の協力が必要
住宅ローンを滞納すると連帯保証人にも請求がいきます。その際に連帯保証人自身が支払いをしてしまうと、任意売却をすすめることができなくなります。
任意売却は、競売のように公開されることはありませんが、連帯保証人の方には、支払えなくなる旨を伝え、任意売却の手続きをすすめたいと事前に伝えておく必要があります。
こちらは、連帯債務者も同様に、住宅ローンが滞納している旨が通知されるので、連帯債務者がそれにより支払ってしまわないように、事前に伝えておく必要があります。
競売になる可能性がある
任意売却は、競売が成立する前に売却し、債権者へ返済してしまわなければなりません。
できることならなんとか住宅ローンを支払い続けるか、売却しなくても済むような手段がとれるなら検討しておくべきです。
または、任意売却を選択したとしても、強制競売が成立して退去し、一括返済しないといけなくなったときの事態もしっかりと考えておかなければなりません。
任意売却の手続きができるというだけで安心はできません。
信用情報(ブラックリスト)にのる
信用情報にのるということは、一般に公開されるということではありません。
信用情報とは金融機関等しか見れないものですし、決して滞納などがあったということが世間に知れ渡るわけではありませんので注意してください。
多くの場合審査で信用情報を金融機関などで確認され、審査には落ちることになります。
しかし、明確にはわかりませんが、長くても10年経てば多くの方が住宅ローンや自動車ローンなどを組むことができたり、クレジットカードにも加入することができています。
任意売却をすすめるには、住宅ローンを滞納する必要がありますので、必ず信用情報にはのるということを知っておかなければなりません。
任意売却を行う業者には悪徳業者も多い
任意売却は通常の不動産取引に加え、法律の知識や豊富な経験が必須となります。
というのも、任意売却は住宅ローンを延滞したからと言って必ず認められる方法ではないからです。
任意売却をしたい旨を伝え、債権者が同意してくれる販売価格や条件を検討し、交渉しなければなりません。
それによって、債権者が許可をするかしないかが決まります。なので、任意売却を行ってもらえる業者が、しっかりと任意売却のノウハウなどがあることが必要です。
しかし、任意売却を行う業者には悪徳業者が多いのが実情です。
なぜなら、住宅ローンを支払えず、マイホームがなくなり、ただ久野残債務の一括請求をされるかもしれないと債務者は困惑している中、任意売却で生活の再建を図れるという夢のような話をきかされると、その業者の実態がどうであるかを深く判断することなく、債務者はその業者に任せてしまうことになります。
債務者が差し迫った状況で、藁にも縋る思いである状況に漬け込む悪徳な手法です。
任意売却を行う業者選ぶ3つのポイント
- 弁護士が主体となっている協会か
- 税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
- 「任意売却専門」などのうたい文句にだまされない
弁護士が主体となっている協会か
任意売却は、債務整理の一種です。
一般的にも債務整理を依頼する場合は、多くの方が弁護士事務所や、司法書士事務所へ相談へ行きます。
任意売却も債務整理の一種ですので、弁護士などが主体となって問題の解決にあたってもらえることが重要となります。
多くの不動産会社では、顧問契約を結んでいる顧問弁護士というものはいますが、その弁護士が必ずしも任意売却に精通しているというわけではありません。
税理士、宅地建物取引主任者など不動産売却に関して精通しているものがいるか
任意売却は、不動産取引です。不動産を売却し、債務を返済するという債務整理です。
債務整理に強い弁護士などの法律家がいたとしても、宅地建物取引業免許を持っていない限り、不動産取引を行うことができません。
しかし、一般的な不動産会社ですと、法律の知識や経験などがある特殊な専門知識がない不動産会社では任意売却はできません。
「任意売却専門」などのうたい文句にだまされない
任意売却を成功させるには、法律や不動産の知識や経験が豊富であることが要です。
弁護士や、宅地建物取引主任者だけでなく、税理士、司法書士、不動産鑑定士などの専門家の判断が必要な場合も多々あります。
いかにその業者が、多くの専門家と連携がとれているかなども把握しておくことが必要です。
任意売却では、基本的に費用はかかりません。必要があれば、任意売却が成立した、売買代金から債権者が許可した額が差し引かれるので、債務者が自己負担することはありません。
しかし、「手数料」、「販売促進費」「任意売却申請費」などの費用を請求される場合があります。
もし相談に行った際などにこういった話が出た場合や、におわされた場合はその業者はやめるか警戒をしておく必要があります。
内覧の立ち合い
任意売却は、通常の不動産売却と同様に、不動産情報誌や不動産情報サイトなどに掲載され、実際に部屋の中をみたいという購入検討者のかたに、内覧という形で家の中を見学に来てもらう必要な場合は多々あります。
その内覧に立ち会う必要もありますし、居住中に、他人が部屋の中を見回すことになるので精神的にも辛いと感じることはあるかもしれません。
もちろん、それ以前に引越し済みであれば問題はありません。
強制競売
競売とは、住宅ローンなどの滞納があった場合に、金融機関などの債権者が裁判所へ申立し、裁判所にて入札が行われ、住宅が売却されます。
債権者が主導で行われ、落札されると、強制退去となり期日までに必ず退去しなければなりませんし、残った残債務は一括返済しないといけません。
一方的でとても怖いように思えますが、物事には、良い面と悪い面があるのが常です。それぞれの事情次第で、強制競売が有利という方もたくさんいます。
自分は競売がいいのか、それとも任意売却が合うのか自分で判断して決めなければいけません。
強制競売の流れ
強制競売の流れ | |||
---|---|---|---|
1 | 住宅ローンの返済がストップ | ローンの滞納が開始されます。2~3か月で金融機関より督促状などが送られてきます。 | 約3~6か月 |
2 | 個人信用情報に登録される | これにより、5~7年は新規でローンを組んだりができなくなります。 | |
3 | 「期限の利益の喪失」 | 分割返済の権利を失い、一括で残債務を返済しなければなりません。銀行などの金融機関は、債務者からの返済がないため、保証会社や債権回収会社に債権を引渡します。 | |
4 | 保証会社等により、ローンの残高が一括返済される | 保証会社等により、ローンの一括返済がされることにより債権社は今後、銀行ではなく保証会社などとなります。 | 約1~2か月 |
5 | 保証会社等により競売の申し立て | 競売のスタートです。 | |
6 | 競売開始決定・差押え | 競売開始決定通知書が債務者に送付されます。 | 約3~6か月 |
7 | 執行官により現状調査 | 執行官が自宅に来て、現況の調査や写真を撮りにきます。 | |
8 | 評価・物件明細書作成 | 競売物件を購入したい方たちが、検討できる資料が公開されます。 | |
9 | 売却基準価格の決定 | 売却基準価格を支払わないと、購入希望者は入札することができません。債務者もなんとか競売を阻止したいと思ってもこの売却基準価格が支払えないと自分で落札することもできません。 | |
10 | 売却実施公告 | 新聞・情報誌・ネットに掲載されます。これにより、誰でも事情を知られることになり、プライバシーを公開されてしまいます。 | |
11 | 入札 | ||
12 | 開札 | 所有権が落札者に移り、旧所有者は不動産を使用できなくなります。 | |
13 | 引渡し命令・強制執行 | 強制的にドアを開けられ、家財・荷物なども外部に出されてしまいます。もちろん鍵も交換され二度と入ることはできません。 |
競売物件の価格は裁判所に委嘱された不動産鑑定士がその価格を決めます。一般的な売却と比べると
強制競売のメリット
- 手間いらず
- 自己破産すればいい
- 任意売却などに比べると比較的長く住んでいられる
手間いらず
その後も、裁判所から通知が届いたりしますが、債務者はなにもしなくても、自宅の写真を撮りに裁判所員が来て、自宅の写真と自宅の情報を競売のインターネットサイトなどに公開されます。
そして、入札が始まり、勝手に落札者も決まり、退去しなければならない期日も決められ、期日になれば否応なく強制退去ということになります。
金融機関や、任意売却を行ってもらう業者とのやり取りも色々とあり心身共に疲れるものではあります。
家族もいて、連帯保証人もいて、そして生活再建をなんとしてもやりたいと考えられる方には不向きかとも考えられます。
自己破産すればいい
競売は、一般的な相場よりもはるかに安い相場での売却ということになります。なので競売が成立し、住宅ローンの残債務に充てられたとしても、まだ多額に残債務が残るのが一般的です。
そうなった場合、残債務は一括で返済しなければなりません。任意売却とは異なり、一切の交渉などができませんので、分割払いの請求などももちろんできません。
しかし、自己破産が有利となる方も多くいます。その方が、任意売却などの手続きも不要ですし、裁判所が勝手に自宅を公開し、入札が始まり、落札が行われるので、債務者は、強制退去となる日まで、自宅に住めますし、次の入居先を決め、引越しさえ済ませれば、特別何かをする必要はありません。
あとは自己破産を申請し、新生活をスタートするのみです。
任意売却などに比べると比較的長く住んでいられる
一般的に任意売却は、競売で落札される前に完結しておかなければなりません。
なので、落札者がいなければ、次は特別売却という手続きが開始され、先着順で買受可能価額で購入することができるようになります。
それでも買受人が現れない場合は、価格が下げられて繰り返し特別売却が続けられるということになります。買受人が決まるまで繰り返し特別売却が繰り返されます。
買受人が決まらないと、強制退去の日も決めることができないということになりますので、理論的には延々と住み続けることができます。
任意売却では、少なくとも一般的な売却と同様なので数か月で売却が決まることが多いので、マイホームに住むことができる期間の長さだけを問題とすると、競売の方が少なくとも数か月は長く住むことができ、上手くいけば、買受人が現れず延々と住めることもあるかもしれません。
しかし、この場合大きくデメリットも発生しているので忘れないで下さい。
というのも、買受人が見つからず、特別売却が繰り返されるということは、どんどんマイホームが安く売りだされることになっていて、滞納している住宅ローンの債務は逆に増えていっています。
その他、買受人が現れないので、未だ所有権も債務者にあるため、あらゆる税金や、マンションなら管理費などもどんどん増えていっています。そういった負の面も必ず頭に入れておきましょう。
強制競売のデメリット
- 任意売却に比べ返済額が多くなるか
- 近隣にばれる
- 自己破産しても連帯保証人に残債務の一括返済が請求される
- 裁判所VS自分という全て自分で負担しなければならない
任意売却に比べ返済額が多くなるか
任意売却や一般的な不動産売却の場合とほぼ同様の、一般的な相場で売却価格は決められるますが、競売の場合、裁判所に委嘱された不動産鑑定士により価格が設定されます。
その価格は、一般的な相場よりもかなり低く、3~7割ほどと言われています。最終的には入札がすすむと8割ほどの価格で落札されることが多いようです。
競売の場合は、落札価格がローンの返済に充てられ、さらに残った債務は一括返済しなければなりません。
任意売却と違い、分割で返済していくという交渉の余地がないので、自腹で支払うか、合法的に支払えないということで自己破産しなければなりません。
市場の相場よりも安く売却されるので、残債務も任意売却などと比べると返済額が多くなるので、
という事情がある方は、なるべく任意売却が成功できるよう努めることが必要かと思います。
近隣にばれる
裁判所で行われる競売は、不動産の情報や個人情報をインターネットサイトや、裁判所で公開され、誰でも見ることができます。
また競売後に、残債務が一括で返済できなくても、分割での支払いの交渉ができないため、返済できなければ自己破産しなければなりません。
今の生活は失敗してしまったが、借金を清算し再スタートをと思っても、誰も知り合いのいないところに引っ越したり、転職を余儀なくされる可能性があります。
小さなお子さんがいらっしゃるご家族だと、子どもが慣れた環境を離れないといけないという困難な状況にもなるのでそういったことも考えたうえで、競売を選択するか、または回避できるよう何かしらの対策をとるかを考えなければなりません。
自己破産しても連帯保証人に残債務の一括返済が請求される
競売が成立し、競売による売買代金が住宅ローンの残債務に充てられたとしても、多額の残債務が残ることが多いのが実情です。
そうなると、なんらかの方法で、一括返済するための資金を用意するか、自己破産するしかありません。
自己破産をすれば、債務から解放されることになりますが、もし連帯保証人がついていれば、支払いの請求は連帯保証人へ向かいます。
連帯保証人になってもらった方は、信頼して連帯保証を負ってくれたわけですから、このような形で突然債務の請求が届くと大変驚かれることとなります。
事前にしっかりと相談したうえで、競売になる旨、またその後の支払う術がないことも伝え自己破産をするということをしっかりと伝えておかなければなりません。
債務をしっかりと清算し、再スタートを図りたいと思っても色んな方に迷惑をかけることになりかねません。
裁判所VS自分という全て自分で負担しなければならない
競売の場合は、自分で積極的になにか行動を起こさなくても勝手に競売が開始され、自宅などの情報も公開され、入札が行われ、落札され、退去命令が出ます。
裁判所ですので、公正な入札での取引なので、悪徳業者相手ではないですし、安心ではありますが、特別な代理人などなしに、裁判所からの命令を自分で受けて引越しの手配や、新居を用意して出ていかなければなりません。
法律知識もない素人ですから、なにか伺いたいことがあっても裁判所に聞くしかありません。
勝手に進められるのはメリットでもありますが、裁判所相手であるということで「待った」は効きませんし、あらゆる交渉もできません。
引越しの費用ももちろん自分で工面しなければなりませんし、期日になりましたら強制的に立ち退かなければなりません。
まとめ
いかがでしたでしょうか。任意売却、競売ともに良い面もそうでない面もあります。
その人にとって、どちらがベストな手段であるか判断することが重要だと思います。
任意売却は良いことずくめのようで、切羽詰まったときは飛びついてしまうことも多いかもしれませんが、必ずしも任意売却は成功するとも限りませんし、任意売却をすすめてくれる業者に悪徳業者もたくさんいるのが実情です。
しっかりと清算し、新生活の再建をと思っても足元をすくわれてより災難が舞い込むこともあります。
また一見恐ろしいように見える競売も、メリットがある方もたくさんいます。自分で手続きを行うことが必要ないので、次の新生活へ向けてなにかしらの行動をとることができるかもしれません。
任意売却に比べ、時間的にも融通が利き、金融機関とのやり取りの煩わしさもないなのでそちらが向いている方もたくさんいるでしょう。
任意売却も競売も、どちらが良いシステムかではなく、自分たちにはどちらが向いている手段で、自分たちがしっかりと債務を清算し、新生活をしっかりと再建できるのはどちらであるかを、冷静に判断し決断することが何より重要のように思えます。